政治を斬る!

政府が新聞社を取り込む狙いはわかるけど、新聞社が東京五輪スポンサーになるメリットはあるの?

新聞社は今からでも東京五輪スポンサーを降りるべきかーー。

無料公開フォーラム「政治倶楽部」で呼びかけた投票に、2日間で約1200人が参加してくれました。この記事への訪問数は2万を超えてきました。「オリンピックとマスコミ」というテーマに大きな関心が集まっていることがうかがえます。

それでは現時点での投票結果をみてみましょう。

 
鮫島

「結果を見る」をクリックしてください。
新聞社は今からでも東京五輪スポンサーを降りるべきだと思いますか?
 
鮫島
まだ投票できます!誰でも参加できますよ!!

ご覧のとおり「今からでもスポンサーを降りるべきだ」が圧倒的でした。「スポンサーにとどまるべきだ」のなかにも「スポンサーの責任として五輪中止を訴えるべきだ」という声がありました。やはり「世論は五輪中止を求めているのに、新聞社はスポンサーだから中止を訴えない」と感じている人が大部分のようです。

コメント欄には多種多様が意見がありました。そのなかで関心が高かったのは「新聞社がスポンサーになるメリットは何か」という疑問でした。政府が「新聞社をスポンサーに引き込んで批判を封じる」ことを狙うのは想像がついても、新聞社がそれに応じる理由がまったくわからないというのです。

たしかに、スポンサーになって新聞が大量に売れるとは思えません。五輪取材に有利になることはあるとしても、これほど世論の反発を受けてまでスポンサーにとどまる理由としてはナンセンスでしょう。外からはうかがい知れない事情が新聞社にはあるのではないかーーという疑問がわくのは当然ですね。

この疑問に対して、政治倶楽部に会員登録してくれた政治学者の中島岳志さんが鋭い視点を披露してくれました。

コメント

中島岳志さん
背景には新聞社の経営危機があり、不動産部門やイベント部門で収益を上げて、新聞を支える構造になっています。この「弱点」を、権力者が見逃すわけはなく、収益の出る国家イベントにメディアを組み込み、批判が出にくいシステムを作られているように思います。

なるほど。たしかに、私が3日前まで在籍した朝日新聞社も、新聞発行部数の激減を受けて、新たな収益の柱として①不動産②デジタル③イベントーーを打ち出していました。

読者から直接いただく「購読料」が収益の柱である限り、最も耳を傾けるのはやはり「読者」です。でも、不動産やイベントで大きな利益を出そうとすると、「都市再開発」や「国家イベント」を主導する政府や大企業と「仲良く」するほうが得です。そうした都市再開発や国家イベントの象徴が「東京五輪」なのでしょう。

このような収益構造の変化が、新聞社を「ふつうの企業」に近づけているーーその結果として政府や大企業は「批判の対象」ではなく「ビジネスパートナー」になっているーーというわけですね。

中島さんは国家権力が新聞の衰退を「見逃すわけがなく、収益の出る国家イベントにメディアを組み込み、批判が出にくいシステムを作られている」と喝破します。新聞が権力批判に及び腰なのは、単に「新聞記者に批判精神がない」という理由にとどまらず、不動産やイベントに依存する新聞社の経営基盤の変化があるという分析です。

 
鮫島

これは鋭い。「読者」より「政府」ということか

そこで、今日の設問です。新聞社はこのような経営基盤を改善し、ジャーナリズムの批判精神を取り戻すことができるのでしょうか。それとも新聞社に未来はなく、新たなジャーナリズムの担い手が必要なのでしょうか。「新聞の未来に希望が持てるのか」という設問でもあります。

では、投票です。

これから「権力監視」のジャーナリズムを担うのは誰でしょう?

これは三択では答えるのが難しいという方は、政治倶楽部に登録して、末尾のコメント欄から投稿してくださいね。

ちなみに、私は昨夜(6月2日)10時すぎに届いた「なみ」さんのコメントにかなり近い意見です。要は「誰に支えられるメディアを目指すのか」という経営理念の問題だと思うのです。東京五輪スポンサー問題は、「新聞は誰に支えられているのか」という本質的な問題を浮き彫りにしたのでした。皆さんはどのように考えますか?

コメント

なみさん

新聞社で経営と編集の分離が叫ばれ、編集の独立を守るため、理念上、それが必要になることも理解できるのですが、とは言え、一般常識的に考えると、一方で、経営方針と商品内容は不可分であるべきだとも思うのです。

通常、商品のコンセプトと、経営方針が一致していないというのは、経営戦略上、最も避けるべきことではないでしょうか。

だとすると、新聞社の経営戦略を考える上でも、一番の看板であるともいうべき社説での方針と、一企業としての行動が矛盾しているのは、マイナスでしかないと考えます。

つまり、会社の経営戦略として、一体何に最も重きを置くべきか、そこが定まっていないからこそ、このような事態が起きるのではないかと思います。

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