政治を斬る!

テレビ時代を抜け出せない電通が仕切る退屈な東京五輪開会式

企画演出した主要メンバーの人権感覚が疑われる事案が直前に相次いで発覚し、国内外で注目を集めた東京五輪開会式。強く批判してきた手前、最初から最後まで観たが、実に安易で退屈なショーだった。

いったいあの開会式にどれほどの税金が投入されたのだろうーーあの出来具合なら、個性豊かな各国選手団の入場行進と天皇の手短な開会宣言だけにして簡素化すれば良かったというのが私の感想である。

さっそく、皆さんの感想を聞いてみよう。東京五輪の開会式はどうでしたか?

東京五輪の開会式はどうでしたか?

最大の難点は、とにかく尺が長かったことだ。

いかにもテレビ業界を牛耳って巨額の富を得てきた電通らしい企画演出だった。NHKアナウンサーの押し付けがましい解説なしには何が起きているのかさえわからないショーが延々と続く。YouTubeやInstagram、TikTokでテンポ良く個性と美を追求するデジタル動画に慣れ親しんだ世界の人々にとってはいかにも前時代的で、メッセージ性に欠け、仕事でもなければ最初から最後まで観ることは困難だったのではないか。

世界が注目する舞台で、いったい何を表現したかったのだろう。コンセプトも演出も極めて稚拙で、作品として成立していなかったとしかいいようがない。文化芸術の専門記者は権力を忖度して「良かった」と持ち上げるのではなく、厳しく論評すべきである。

多様性を掲げながら日本以外のアジアの気配が消されていることも気になった。米中の覇権争いに世界が注目している最中の日本での「平和の祭典」である。米中の架け橋を目指す日本の立場をアピールするような演出はできなかったのか。安倍政権以降の「内向き日本」を映し出す開会式のショーだったといえるかもしれない。

人権感覚だけでなく時代感覚や国際感覚の遅れもさらけ出した東京五輪開会式であると私は思った。

退屈な開会式と比してSNSで紹介されていたのが、スイスの高級時計メーカーOMEGAのCMである。私のツイッターでも紹介したので、ご覧になっていただきたい。デジタル時代の最先端のアートである。とにかくテンポが良くて美しい。

コロナ禍で1年延期になった東京五輪である。世界中でステイホームが叫ばれ、zoomをはじめオンラインの交流が加速した1年だった。まさにパンデミックとデジタル時代の本格到来に直面した歴史的な五輪である。最初から無観客のバーチャル開会式を目指せばインパクトのあるメッセージを世界へ発信できたのではないか。OMEGAのCMのような演出こそ「美しい日本」を「クール」に描くということではなかろうか。

電通主導で選ばれたとみられる開会式を企画演出した人々(日頃から電通に仕事をもらっている人々が多いかもしれない)に、そのような時代感覚があったのだろうか。それとも利権にまみれた東京五輪組織委員会のなかで政府や電通からあれやこれやと内向きの注文が殺到し、オリジナリティーを発揮することもままならなかったのだろうか。開会式の演出チームを途中で離脱した狂言師の野村萬斎氏や歌手の椎名林檎氏にぜひ内実を明かしてもらいたい。

日本に技術力や人材がなかったとは思えない。安倍・菅政権や電通が牛耳る東京五輪組織委員会に「既得権益の保持」や「縁故主義」がはびこり、新しい発想や新しい人材を発掘して起用する土壌がなかったのだろう。

いずれにせよ、お金ばかりがかかって、何を言いたいのかよくわからない開会式になってしまった。世界に日本のメッセージを発信する絶好の機会を逃したのはまことに惜しい限りである。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と、東京五輪組織委員会の橋本聖子会長のあいさつも長かった。そのなかで印象に残ったのが、天皇の極めて端的な開会宣言である。明日は「天皇とコロナ禍の五輪開催」というテーマを深掘りする。

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