『朝日新聞政治部』(講談社・5月27日発売)の出版をSAMEJIMA TIMESで5月22日に発表したところ、たいへん多くの反響をいただきました。
23日にはヤフーや現代ビジネス、フライデーデジタルで相次いで紹介され、アマゾンの書籍売れ筋ランキングで3位まで浮上。新聞マスメディア、産業研究、日本の政治の3部門で1位に躍り出ました。発売前から予約をしてくださった皆様に感謝申し上げます。
発売前に一部を先行公開する現代ビジネスの連載は二回目です。
今回は第一章「新聞記者とは?」から、私が朝日新聞社に就職する経緯をまとめた「新聞記者は主役になれない」と、地方支局に赴任する新人記者の登竜門である警察取材の実像を紹介する「記者人生を決めるサツ回り」の部分を紹介します。
このうち「新聞記者は主役になれない」は、私が昨年2月に朝日新聞社に退職届を提出してSAMEJIMA TIMESを創刊して開始した連載「新聞記者やめます」の最終回(2021年5月31日)に少しだけ加筆したものです。
この連載は私が独立して最初に執筆したもので「なぜ新聞社を辞めるのか」を退社日まで毎日、93回にわたって書き続けたものでした。しかし、最終回だけは原点に立ち返り「なぜ新聞記者になったのか」を綴ったのです。
私はこの長期連載のなかで、この最終回をいちばん気に入っています。1994年に新聞記者になる前の真っ新な自分がそこにいて、そのあとの波乱万丈の記者生活を思い浮かべると、世間知らずの自分自身が青臭く、おかしいやら、恥ずかしいやら、「これからお前は大波に向かって進んでいくんだよ」と声をかけたくなるような気分になります。
今回の『朝日新聞政治部』の執筆にあたり、新聞記者としての原点に立ち返った「新聞記者は主役になれない」は欠かせない部分と思い、全編で唯一、ほぼ再掲に近いかたちで冒頭に置くことにいたしました。
それでもSAMEJIMA TIMES で一年前に掲載した文章と、今回の『朝日新聞政治部』の文章は、若干異なる部分があります。さて、加筆・修正したのはどこか。マニアックな方はそれを探しながら読み進めてください(笑)。
もうひとつの「記者人生を決めるサツ回り」は、新聞記者が最初にぶちあたる「警察取材の壁」について記述したものです。
新人記者の大半は、地方の県庁所在地に配属され、そこで県警本部の記者クラブに所属し、同世代の自社・他社の若手記者たちと「サツ回り(警察官への取材)」で競わされます。警察官の自宅を朝晩に訪れて捜査情報を聞き出す「夜討ち朝駆け」取材の日々。ここで「権力と仲良くなる」ことばかりを鍛えられ、「権力を監視する」ことを忘れていく。読者の視点を離れて権力と一体化しがちな日本の新聞記者の原型はこの「サツ回り」で作られてしまうのです。
私は幸いなことに(なぜかは不明だが)、県庁所在地の支局ではなく、たった3人しかいない茨城県のつくば支局に配属されました。朝日新聞だけではなく、他社を含めて、新人記者は私一人だったのです。
つくばには県警本部はなく、「サツ回り」よりも「街ダネ」(一般の人々の日常的な活動から話題を探して紹介する記事)を毎日写真付で茨城県版に出稿することを求められ、カメラを片手に一般の人々と毎日触れ合う新人記者生活を過ごしました。同期の新人記者とはまるで違い、「夜討ち朝駆け」取材もほとんどせず、自社や他社の若手記者と競わされることもなく、野放図な駆け出し記者生活を送ったのです。この記者としての原点がそのあとの私の新聞記者人生に多大な影響を与えました。
このような私の駆け出し時代を振り返りつつ、ほとんどの新聞記者が最初にぶちあたる「サツ回り」の実像と問題点について掘り下げる内容になっています。ぜひご覧ください。