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野党4党は1人区より複数区で選挙協力を!参院選最大の焦点は「維新封じ込め」だ〜「憲法9条変えさせないよ」さんの独創的な参院選戦略をみんなで議論してみよう!!

国民民主党出身の泉健太氏が野党第一党である立憲民主党の代表に就任した。泉氏は連合や国民民主党との連携を最優先する一方、共産党との共闘を見直す構えをみせており、夏の参院選に向けて「野党共闘」の姿は大きく変貌しそうだ。

参院選は32ある1人区が与野党対決の主戦場になる一方、衆院選と比べて比例区や複数区の比重が大きく、野党同士の競争が激化する可能性もある。第三極の日本維新の会は立憲民主党から野党第一党の座を奪うことを狙っているし、山本太郎代表が国政復帰したれいわ新選組にはさらに台頭する勢いがある。

野党第一党は「与党過半数割れ」や「野党全体で過半数獲得」を参院選の勝敗ラインに掲げて「衆参ねじれ国会」の実現を目指すのが本来あるべき姿だが、野党第一党の立憲民主党の力不足は否めず、自らの党の議席確保をめざすので精一杯かもしれない。野党共闘のあり方は様変わりするだろう。

だが、野党共闘が崩壊すれば、自公与党がさらに有利となるばかりでなく、維新を含む改憲勢力がさらに議席を伸ばし、憲法改正が現実味を増すことも十分に予想される。

いずれにせよ、立憲民主党にとって来年夏の参院選はイバラの道であることは間違いない。野党第一党としてどのように参院選を戦うべきなのか。

この難しい命題に対し、SAMEJIMA TIMESのコメント欄に「憲法9条変えさせないよ」氏から極めて大胆で独創的な提案が寄せられた。このハンドルネームが示すように「改憲阻止」の立場に加え、野党全体を見渡してどう戦うべきかという内容の濃い提案である。

結論から言うと、私は現時点でこの提案に賛同しているわけではない。むしろ第一感としてはやや慎重な感想を抱いた。しかし、提案自体はとても興味深く、繰り返し拝読した。そのうちに「なるほど」と感じるようになった。

そこで、きょうは「憲法9条変えさせないよ」氏の提案を紹介したうえで、考察していこう。皆さんからのご意見も募りたい。

来年夏の参院選について、「憲法9条変えさせないよ」氏の提案は以下のようにはじまる。

1人区の調整をどうするかということに話題がのぼりがちですが、私はむしろ複数区の調整の方が重要であると考えています。1人区では負けても自公維のうち1人しか当選しませんが、複数区で候補者の調整に失敗して自公維に複数区を独占されると目も当てられないからです。

氏はその具体例として、参院選の大阪選挙区(改選数4)をあげる。2019年参院選では共産党現職がいる大阪選挙区に立憲民主党が新人候補を擁立した結果、両者とも当選ラインに届かず、自公維の「改憲3党」が4議席を独占したのだった。共産党と立憲民主党の候補者の得票数を単純に足せば、トップ当選の維新候補を上回っていただけに、少なくとも共産党と立憲民主党が候補者を一本化していれば1議席は確保できたという指摘だ。

来年夏の参院選に向け、れいわの山本代表はすべての複数区に候補者を擁立する姿勢を示している。氏は「みんなが野放図にそんなことをすれば、『参議院でねじれ』どころか、『参議院でも改憲勢力が3分の2を確保』という事態を許すことになりかねません」と危機感を募らせる。

氏は立憲民主党をはじめとする野党勢力の力不足が否めない以上、「自公与党の過半数割れ」を目標に掲げるのではなく、最初から「改憲勢力の3分の2の確保を阻止すること」を目標に据えて立憲民主党、共産党、れいわ、社民党が複数区で確実に1議席を獲得するために候補者一本化を検討すべきであるという。そもそも苦戦が予想される1人区はむしろ比例票掘り起こしのため候補者乱立をある程度は容認し、逆に確実に1議席を確保できる複数区の選挙協力を優先すべきであるという提案だ。

当事者である野党政治家はおろか、政治学者や政治ジャーナリストからもほとんど聞かれたことがない、実に大胆で独創的な提案である。氏は具体的に以下のように説明している。

1人区→全国で32ある。今のままの情勢だと「与党28勝・野党4勝」という予測もある。そうであれば開き直って、1人区の野党候補一本化は15~16選挙区にとどめ、残りの選挙区は野党4党が自由に候補者を擁立して比例票の掘り起こしに尽力してはどうか。過去の参院選をみると、野党は1人区を10~11取れれば御の字であり、全体の3割~5割で勝てれば十分であると割り切ったほうがよい。

2人区→「自民1議席・立憲1議席」の可能性が高い選挙区は、比例票掘り起こしのために共産党、れいわ、社民も候補者を擁立するのはありだ。逆に「自民2議席独占」の可能性がある選挙区は候補者を一本化して「1議席確保」を目指す必要がある。

3人区以上→「自民1議席・立憲1議席・公明1議席」が予測される3人区は「公明1議席」を奪いにいく戦略が必要。社民、共産、れいわのいずれかの候補者を共闘で擁立し、立憲とあわせて2議席確保を狙うことを検討すべき。ただし、維新が候補者を擁立して「自公維が議席独占」という最悪の結果を招くリスクに要注意。手放しで「自由競争」できるのは、東京、神奈川、埼玉くらいではないか。どの地域にも護憲派・リベラル派は一定割合いるので、複数区で選挙協力すれば死票を減らし議席確保につなげられる確率は高まる。

氏の提案がさらにユニークなのは、参院選の最大のポイントは「維新の封じ込め」であると位置付けている点だ。維新が立憲民主党から野党第一党の座を奪うことを狙っているのに対抗し、立憲民主党が野党第一党としての立場を確立することを願う人も、護憲派が3分の1の議席を確保することを願う人も、まずは「維新を倒す」という共通の目標の下に結集すべきというのである。

その象徴となるのが、維新の本拠地である大阪選挙区だ。氏は大阪で立憲民主党も共産党も候補者擁立を見送り、今回の衆院選に大阪5区から出馬して比例で復活当選したれいわの大石あきこ氏が参院へ鞍替え出馬し、野党4党が「維新の2議席獲得阻止」を掲げて大石氏を担いで全力で共闘するという構想である。大阪を野党共闘のシンボルにしようという提案だ。

さらに比例区では今回の衆院選で「民主党」という投票が大量にあったことを踏まえ、「立憲民主党の人たちも国民民主党の人たちも『民主党』という政党名のブランドにもっと自信を持っても良い」と指摘。立憲民主党、国民民主党、社会民主党の3党が統一名簿で臨むことも検討していいと提案している。

いずれにせよ、「参院選は政権選択の選挙ではありませんので、無理に政権構想などを示す必要はなく、純粋に選挙協力だけを進めていけば良い」という氏の見解は、傾聴に値する。そのうえで、「一つだけ、共通政策として、『国民全員に一律10万円の現金給付を!特別定額給付金をもう一度!」をスローガンに、与党による18歳以下のみを対象にした10万円相当の給付政策を徹底的に批判していけば良い」という提案も興味深い。

このような参院選戦略が立憲民主党の代表選でほとんど議論されなかったのは残念だった。むしろ市井の人から提案されたことに、日本社会の底力を感じる。

そして、SAMEJIMA TIMES にこのようなハイレベルの提案を寄せていただくことは、私がこのサイトの開設に込めた願いそのものである。「憲法9条変えさせないよ」さん、ほんとうにありがとうございます!

氏の提案は、立憲民主党が非力な現状を直視した上で極めて現実的な参院選戦略であり、憲法改正阻止を最優先する立場からは極めて合理的な戦略である。公論にのせて練り上げるべき魅力的な提案として、ここに紹介させていただいた。

一方、私自身の考え方は、冒頭に記したように、必ずしも一致していない。ただし、氏の提案を踏まえ、読者の皆さんのご意見も参考にして、自らの考えを練り直してみようかと考えている。そこで、今日の時点では私の見解を表明するのはしばし保留にさせてほしい。

読者の皆さんから「憲法9条変えさせないよ」氏の提案に対するご意見を募集します。政治倶楽部に無料会員登録して以下のコメント欄からお寄せください。お待ちしています!

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