虐げられても抵抗し続け、光を放ち始めた国々があります。そこから新しい日本づくりのヒントがあるように思います。西側+日本ではない側の目から見てゆきたいと思います。どの国にも問題はありますが、将来につながる良い点を取り上げたいと思います。
ハマスがイスラエルの人々を攻撃したOctober7(10月7日)の出来事からアラブ・イスラムの国々が、日々報道で取り上げられています。中東で繰り返される長い戦いと苦悩に気づくと同時に、偏見はもっていても興味はもっていなかった自分に恥ずかしさを感じます。戦争や内紛を乗り越えようとしている国々からは、かつて日本がそうであったように戦後で貧しいけれど国を守り豊かにしようという大きなエネルギーを感じます。
Samejima Times 「政治の真の対立軸は『左右』ではなく『上下』だ」 (動画版はこちら)は、戦争を支援/支持するかどうかにも当てはまります。
国や人々を守り平和な暮らしを実現することは、右も左もない世界共通の理念であるはずなのに「戦争を反対すると極左だ」と言う勢力も現れています。
どこかで戦争が起きれば、今のように物価が上がり、庶民の生活に影響します。裕福層の人々は戦地に赴くことも逃れられます。「右や左」という、曖昧で分かりにくい言葉で語り、一般の人々の政治離れを招いている一つの原因でしょう。選挙に行かない人々に、「右か左」ではなく、「上か下」かの政治で訴えると、心が動くのではないかと思いました。
さて話を「輝きを放つ国々」に移します。
背景
第二次世界大戦後も、中東では、誤った情報で米国に攻められたイラク・アフガニスタン戦争、イスラエルのレバノン侵攻、シリア内戦(欧米が加担)、イエメン内戦(イランとサウジアラビア+UAEの加担)、イスラエルのパレスチナ侵攻(1948年~)と複雑で何十年もの争いが続き、人々の怒りが爆発しているのを日々の報道でも感じます。
これらの戦争は、主に欧米側ではない国々で起こりました。多くの国土が荒廃され、命が失われ、住む場所を失った多くの人々は、難民となり中東や世界にも散らばりました。
中東は、親米・親イスラエルとそうでない国々という争いの構図で、分断されていました。親米・親イスラエルの国々はサウジアラビア、エジプト、ジョーダン、UAE、バーレーン、オーマン、カタールです。欧米やイスラエルから防衛・軍事品や技術を得ています。大きな紛争や戦争は、主にこれら以外の国々で起こっています。
日本ではどのような報道がされているか分からないのですが、豪州SBS(NHK相当)ニュースでは、連日「苦痛を伴う画像が含まれます」というアナウンスで始まります。一瞬だけれど流れるパレスチナでの映像は、凝視はできないけれど、目を逸らしてはいけないと、焦点をぼやかしながら画面に向き合います。
1948年のイスラエルの入植から、国と認められないパレスチナは、イスラエルの法律で統治され、居住地を追いやられ、逮捕され、迫害され時には爆弾や銃撃が飛び、夜には高音の戦闘機が低空飛行し安眠を奪われ、最近では顔認証で管理され、足首に数字が刻まれたタグを付けられている人もいるそうです。
病院では、これを世界に流してほしいと叫ぶ人々。先日はイスラエルで、働いていたパレスチナの人々はそれも禁止され「これまでレストランやスーパーで低い賃金でも侮辱を受け入れて、我慢して働いていた。これ以上蔑むつもりなのか」と言う怒りと悲しみにくれる男性が映り、失業率が約50%、貧困率が約80%というガザで肉体的精神的苦痛に長い年月耐えている人々の姿が連日映ります。
分断から和解へ向かうアラブ・イスラムの国々
ウクライナ・ロシア紛争後、事態は変化し、親米・イスラエルの国々も戦争や紛争で、これ以上ダメージを避けより共に栄える道を選び始めました。戦争を避け国内の発展に集中してきた中国が、経済だけでなく科学技術、世界を巡る交通網を広げ、世界のリーダーシップを発揮し、親米の国々も中国と連携するようになりました。
やはり政治は結果だということを示している例でしょう。
世界を驚かせたのは、2003年3月中国の仲介で、突然長年敵対していたサウジアラビア(親米・スンニ派)とイラン(反米シーア派)が国交回復を果たしたことでした。これから、対立していた中東の国々が、歩み寄り始めました。今までは、「それはパレスチナの問題」と黙認してきた中東の親米・親イスラエルの国々政府も、イスラエルのパレスチナへの戦争を停戦するよう、声をそろえて抗議するようになりました。
信頼される「仲介の名手」カタール
そのような中、SBSでカタールが取り上げられました。
カタールは人口300万人弱で秋田県ほどの面積しかありませんが、小さいながらも “仲介の名手” として和平交渉を実現し、欧米諸国・イスラエルと反米を含むほぼすべての中東の国々からも信頼され、間を取り持つことができる重要な国だと認められているそうです。米国の承認のもとハマスの本拠地を置き支援し、ガザにも援助を送っているそうです。カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長は、ハマスとの戦争でイスラエルに「自由な殺害許可」を与えたと述べ、イスラエル支援者を公然と批判しました。
カタールは石油や天然ガスに恵まれ、世界有数の裕福な国で、その豊かさを生かし、経済・メディア・スポーツ(2022年にはサッカーワールドカップ開催)にも力を注いでいます。
中東で尊敬を集めるメディア、アルジャジーラ ・メディア・ ネットワークは、カタールを拠点とし、政府が資金援助し140 国以上に配信しています。「挑戦的かつ大胆に活動し、世界で最も報道されていない場所で声なき人々の声を届ける」という方針で、同社の見方とは関係なく、欧米の主要メディアとは違う記事や意見を紹介しています。
アラブの心臓 シリア
シリアは、2011年から反政府組織「シリア国民連合」が米国の援助を受けて、軍事的な暴動を起し、そこに過激派組織IS=イスラミックステートが加わり、反政府同士の戦いも始まり三つ巴の戦いとなりました。2015年からロシアがアサド政府を支援し、ようやく収束に向かいました。これを受け欧米の意に反して、アラブの国々は、中東の安定(麻薬密売ネットワーク、難民危機、国境警備問題解決)のため2023年、12年ぶりにシリアをアラブ同盟に受け入れました。
アサド大統領はもともと政治を目指さず、医師として働いていた人です。シリアはまだ米国からの制裁を受けていますが「シリアだけでなくアラブ人全体を標的にした圧力や多様化した『陰謀』に屈するつもりはない。アラブの心臓として鼓動を打ち続ける」とメッセージを送りました。
2022年3月17日には次の演説が注目を集めました。
「西側諸国には友人も敵もいないことが証明された。共産主義・イスラム主義・ナチズム・ロシア・中国またはその他も西側の敵ではない。ただ利益になれば友達だ。利益に反すれば敵だ。言い換えると原則が無いということだ。多くの人は知らないことだが、西側とシオニズム/Zionismはナチズムに反対しているという嘘だ。ウクライナにいるナスチ組織のリーダーたちは、第二次世界大戦でウクライナを分断したヒトラーの軍事・安全保障・イデオロギーを継承し、ヨーロッパやアメリカに散らばった。1950年代CIAはアメリカ政府にナチスの禁止規制を緩めてほしいと要請した。なぜなら米国は彼らを、ソ連の一部であるウクライナに必要としているからだ。この歴史が証明していることは、ゼレンスキー大統領はシオニストのユダヤ人で、彼は過激国家主義組織を支援している。それは、世界大戦でナチスと共にソ連侵略のために戦った集団だ。その中には、ユダヤ人を迫害したものもいる。そして今、西側はこれらアゾフと呼ばれる組織を支援している。イスラエルのシオニストは、ホロコストの被害者ユダヤ人について泣き続けながら、ユダヤ人を迫害したナチス組織を支援しているリーダー(ゼレンスキー大統領)を支援している。これは西側が言っていることすべてに嘘がある、ということを証明している。そして、世界を支配すること以外考えていない。そして資源を略奪し自分たちの金庫を一杯にすることだ」
今もシリアの北部に米軍は駐在し、シリアの石油を奪略していると非難が上がっています。また、ガザの沖合に、豊かな天然ガスが発見され、その資源を奪うために、ガザ侵攻を急いでいるという指摘もあります。
2017年すでにウクライナでの戦争を予測していた、ミヤシャイマー博士が豪州のブリスベンで、ウクライナとロシア、パレスチナとイスラエル紛争についての見解を示し、話題となっていました。
博士は、「ロシアはすでに、ウクライナの23%を支配下に置き、さらにロシア寄りの地域20%も支配するだろう。国力と軍事力で大きく勝るロシアは勝利する。米国はロシアを弱らせることはできなかった。その後もウクライナはロシアとの関係で苦しむだろう」という予想でした。報道ではイタリアのメロニー首相が、ウクライナ戦争での疲弊と出口を探していることを漏らした報道があり、話合いを拒否するゼレンスキー大統領を説得する動きがあるようです。
博士はまた、米国の失敗はロシアを突き放してしまったことだ。そのため最大のライバルである中国はロシアと蜜月となり、米国は浮いてしまった。ウクライナとパレスチナの悲劇は、米国がつくってきた世界の覇権ルール/国際秩序/Rules based orderは崩れていくだろう、とも予想していました。
アサド大統領は、9月の杭州アジア大会では、参加でき涙するシリア代表選手たちを会場で応援していました。
アルジャジーラでは、シリアの子どもたちが、パレスチナの子どもたちに贈り物や募金する様子が紹介されました。
政府と反政府組織が和解し、シリアの意味であるより明るい太陽の光を放つ国へはやく復興することを願います。
中東のスイス レバノン
レバノンはイスラエルの北にある、中東のスイス、首都ベイルートは中東のパリと呼ばれ、金融とビジネスの中心地でした。石器時代からの歴史的芸術的建物や遺跡が多く残り、数千年にわたる世界の歴史を映し出す場所です。また文化観光の長年の歴史があり、東洋学者、学者、詩人たちからも興味がもたれています。しかし、1975年~1990年の内戦と1982年~2020年、2006年のイスラエル侵攻で、経済が打撃を受け今もその影響が残っています。
11月4日レバノンの一番大きな政党+軍事組織のヒズボラ/Hezbollahの指導者ナスララ師が熱狂する国民の前で、演説を行いました。レバノンではヒズボラはイスラエルを2度撤去させたチャンピオンです。中東だけでなく欧米、イスラエルの人々もこの演説を注目し豪州SBSでも報道されました。
演説は次のような内容でした。
October7/10月7日のハマスのイスラエル攻撃には、全く関与していない。10月8日から北部国境沿で、兄弟であるパレスチナの人々のためにイスラエルと闘っている。全ての選択肢はテーブルの上にあるが、米国とイスラエル次第だ。この悲劇は米国の責任だ。イスラエルは“道具”として使われているだけだ。
アメリカ人であるあなた方は、ガザに対する侵略を止めることができるはずだ。なぜなら、それはあなた方の侵略だからです。地域戦争を阻止したい者は誰であれ、ガザへの侵略を直ちに止めなければなりません。米国はヒロシマ、ベトナム、イラク、アフガニスタン、パレスチナこの地域全体における、現在および前世紀のすべての虐殺に対して主な責任を負っている。米国は責任を負わなければならない。イラクとシリアのイスラム抵抗勢力が両国のアメリカ陣地を攻撃しているのはそのためだ。米国にイラク、アフガニスタン、シリア、レバノンでの敗戦を思い出してほしい。米国はパレスチナ攻撃を止めなければならない」と戦争抑止と牽制する内容でした。一週間後に次の演説が行われる予定です。
以下は、この様子を表すアルジャジーラのXです。
ナスララ師やアサド大統領の米国・西側への見方は、中国・ロシア・トルコ・グローバルサウス(新興国)の政府やリーダーたちが大筋、共通していると思われます。イラクでは、米国に誤った戦争を起こしたことを謝ってほしいという声も上がっています。
レバノンが危惧するのは“偉大なイスラエル”構想です。イスラエルは、パレスチナの国交樹立を認めず、国境を定めず国土を拡大してきました。これをさらレバノンとヨルダン、またエジプト、サウジアラビア、シリアまで広めるという構想です。ですから、中東の国々は、パレスチナが占領されれば、次は自国が侵略されるという危険を感じています。
ハマスを倒せば、平和になるのか?
世界のほとんどの国々が即時停戦を訴える中、米国のブリンケン国務長官は、ウクライナでの停戦を否定するのと同様に、パレスチナでの停戦も拒否します。「もし停戦すれば、ハマスにチャンスを与えることになる」という理由です。
しかし中東の専門家たちは、「今までそうであったように、攻撃すればするほど、憎しみは高まりハマスはより強くなり帰って来る」「中東だけでなく、イスラエルの存続の危機になる」と米国の姿勢を批判しています。
また、イスラエルの閉じた世界が問題視されます。それはネタニヤフ首相や政権の幹部の、ナチスを思いださせるような過激な発言の数々に現れています。若者たちは高校卒業に義務化された兵役で、一律の国家観を教育されているでしょう。メディアやSNSも誘導しているでしょう。多くのイスラエルの人々は、ユダヤの人々が生き残るには、確固たる国をつくらなければならない、そのためには、パレスチナの犠牲は仕方ないという認識があるようです。
また、豪州の元国会議員は「元政治家として、私はイスラエル政府がオーストラリアの政治家にあからさまな影響を与えているのを目の当たりにしてきました。イスラエルへの旅行、政治家を “教育 “するための洗練された容赦ないプログラムは、パレスチナ人に対する長年の制度的抑圧への黙認へと導きます」と伝えています。
また、ガザで生活していたユダヤ系豪州人で、「パレスチナという実験室」というドキュメンタリー本の著者Loewenstein氏は、以下のような指摘をしています。
イスラエルの軍産複合体は、占領下のパレスチナ地域を兵器や監視技術の実験場として利用し、世界中の専制君主や民主主義国家に輸出している。50年以上にわたってパレスチナ(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)を占領してきたイスラエルは、パレスチナ人という “敵 “を支配する貴重な経験を積んできた。彼らはここで、支配の構造モデルを完成させた。監視、家屋取り壊し、無期限監禁、残虐行為から、「スタートアップ国家(革新的なアイデアで短期的に成長する企業)」を動かすハイテクツールまで。イスラエルは、世界で最も残忍な紛争を煽るスパイ技術と防衛ハードウェアの世界的リーダーとなり、それらの輸出で裕福な国にもなった。
これらがもたらす危うさがさらされ、これ以上の危機を防ぐためにAIや軍事品の使用規制に関する国際法が急がれます。
どちらも引かない硬直した事態を解決するためには、米国民がそれを解決できる大統領を選ぶことだという意見があります。そのためにも、今のように世界中の多くの人々が連携して、抗議を続けなければならないのだと思います。
新しい日本へ
ウクライナやパレスチナでの出来事は、それまで気づかなかったこと、見えていなかったことが、あまりにも多いと知る機会になりました。
そして日本を思うと、カタールのようにロシアや中国とも良好な関係をもち、欧米とアジアの仲介となり平和を守る国になれないのか。中東の抵抗枢軸のように、米国追従一辺倒ではなく主権や威厳を守ることはできないのか。
イスラエルのように(軍事関連ではなく)、ハイテク事業、得意としてきたユニークなものづくりで、豊かで幸せな生活に役立つもの、芸術や文化、食品など独自の開発を発展させもっと世界に輸出することを可能にする政治はできないのだろうか。
GDP・経済・税収などお金ばかりに縛られず、生きるために必要な農林水産業や再生エネルギーの開発、教育に投資する政治はできないのか。
政治が変われば、日本は今以上に世界が注目し、すごい国になるはず。ダメダメがあふれる今はチャンスかもしれません。
10月27日は、ロシアの「民族統一の日」だそうです。ロシアは200以上の民族グループに代表される多民族の大家族で、この多様性、そして伝統、文化、宗派の融合に、団結があるということです。
日本も地方各地に小さくても、それぞれ特徴のある地域がたくさんあります。その伝統・文化を消さずに大切に守って、まとめてくれる政治もできるはずだと思いました。
所属する党を問わず、政権再編し、政治や社会を変え、新しい日本づくりをしようという多くの議員の方々の出現を願うばかりです。
最後に、ロシア北部の極寒地方で少数民族でも長い間、独自の伝統を守ってきたネネツ族を紹介したいと思います。
今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。