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オーストラリアから日本を思って(32)真実と正しさを求め闘い、拘禁されたジュリアン・アサンジ。何が彼を救ったのか?変わり始めた世界…~今滝美紀

このコラムでも度々取り上げてきたジュリアン・アサンジさんが、ついに6月26日釈放されました。

不都合な事実を公開したために約14年にも及ぶ監禁後、母国であるオーストラリアに自由人として帰えって来ました。今まで消極的にアサンジさんを報道していた各大手メディアも特集を組み生放送で大々的に伝えました。(第8回にアサンジさん特集を書きました。よろしければご参照ください)

長年、たたみ一畳ほどの牢獄に閉じ込められ、精神的肉体的苦痛を強いられた後のアサンジさんの様子は、耐えてきた憂いより、穏やかですが、喜びがあふれるものでした。

オーストラリア首都キャンベラに到着した直後のアサンジさんの様子です。

妻のステラさんを抱きしめるアサンジさん。後に写るのは、アサンジさんをずっと擁護してきた弁護士たちの笑顔です。

アサンジさんの弁護団は繰り返し、ジャーナリストたちは、日常茶飯事に政府内部関係者から得た情報を公開していること、彼は同様のことをしただけだということ、彼は誰にも被害を与えていない、という理由で、無罪だと訴え続け、アサンジさんに対する不公平な逮捕を指摘していました。それだけ、アサンジさんが及ぼす世界への影響を恐れていたのでしょう。

また、豪州、イギリス、米国だけでなく南米、アフリカ、ロシア、中国など世界中の多くの一般市民や政府が、抗議を続けました。政治家が知らせない、主要メディア・マスコミも報道しない、しかし自分たちの「命・生活・人権・自由を守る」ために全ての人々が「知っておくべき事実」を知る権利のために、たゆまないアサンジさん釈放への抗議が14年間続きました。

何がアサンジさんを救ったのか?

著名なジャーナリストのヘッジ氏の見解と私たちへのメッセージは次のようなものでした。

ジュリアン・アサンジが釈放されたのは、裁判所が法の支配を擁護し、犯罪を犯していない男を無罪としたからではない。バイデン政権と諜報機関に良心があったからでもない。ジュリアンの暴露を公表し、悪意ある中傷キャンペーンを展開し、彼を犠牲にした同業の主要メディア・マスコミが米国政府に圧力をかけたからでもない。

彼が釈放されたのは、毎日、毎週、毎年、世界中の何十万人もの人々が、私たちの世代で最も重要なジャーナリストの投獄を非難するために声を上げ、活動したからだ。この『一般の市民の力』が無ければ、ジュリアンは自由になれなかっただろう。

これらの名も知られていない人々。彼らは英雄だ。彼らが山を動かす。彼らはオーストラリアの政治家に恥をかかせた。そして、オーストラリア政府にオーストラリア国民であるジュリアンのために立ち上がらせ、最終的に英国と米国に諦めさせた。彼らの降伏だった。私たちはそれを誇りに思うべきだ。

ジュリアンの弁護士ラトナー氏は、『国民の抗議』は国家に対しての闘いで、重要であると強調した。『国民の抗議』がなければ、国家は反体制派の迫害、法律の無視、犯罪を闇の中で実行を可能にするだろう。

ジュリアンが警告したように、市民の自由の破壊は、世界中に広がる相互接続されたセキュリティと監視装置に私たちを縛り付けている。

ハンナ・アーレントが『全体主義の起源』で書いているように、大規模な監視の目的は、結局のところ、犯罪を発見することではなく、『政府が特定のカテゴリーの人々を逮捕することを決定した時』のためだ。この絶え間ない監視と個人データは、政府の金庫室の中で、私たちに向けられるのを恐ろしいウイルスのように待機している。その情報がいかに取るに足らない、または無害であるかは関係ありません。全体主義国家では、真実と正義は無関係。投獄、拷問、殺人は、ジュリアンのような手に負えない反逆者のための格好の手段だ。

すべての全体主義システムの目的は、『人々を麻痺させるために恐怖の雰囲気を植え付ける』ことだ。人々は、『自分たちを抑圧する構造』に安全を求める。

アーレントは、全体主義国家は『人間の自発性、人間の自由を抑圧すること』によってこの支配を達成すると書いている。国民はトラウマによって動けなくなる。裁判所は立法機関とともに国家犯罪を合法化する。私たちはジュリアンの迫害でこれらすべてを見た。それは未来の不吉な前兆である。

私たちが開かれた社会をつくり、地球を救うためには、『企業国家』を破壊しなければならない。安全保障機構(例えばNATO・AUKUS・QUAD等)は解体されなければならない。

二大政党の指導者・愚かな学者・評論・崩壊したメディア・マスコミを含む・『企業全体主義』を管理する官僚たちは、権力の神殿から追い出されなければならない。

大規模な『街頭抗議・デモ』と長期にわたる『市民的不服従』だけが私たちの唯一の希望である。『企業国家』が期待しているのは、市民が立ち上がらないことだ。立ち上がらなければ、私たちは奴隷にされ、地球の生態系は人間の居住に適さなくなるだろう。ジュリアンを救うために14年間街頭に立った勇敢な人々から教訓を得よう。彼らは、それがどのように行われるかを示してくれた。

このメッセージを読み終えて、日本の様子が浮かんできました。

低所得の国民から約50%もの税金・保険料を徴収し、公金の壮大な無駄遣いをしているにも関わらず、「財政破綻の危機だ」と危険を煽り、その上増税と保険料を続けようとする政治家と財務省。検証されないパンデミック。言論統制をしているような政権と警察。必要以上に隣国を敵視し、戦争反対を呼び掛けない政治家たちの姿。裏金・利権・金権に侵された腐敗した政治でした。

しかし、多くの一般の人々が、団結して、声を上げ続ければ、「生活・人権・自由」を守り、究極にはひとり一人のための政治へ、変えることも可能ではないか…という思いが浮かびます。

オーストラリアでは、以前のコラムで紹介したように、アサンジさん一人のために、継続した市民の活動が続きました。しかし、オーストラリア政府が腰を上げて、英米政府に訴えなければ、アサンジさんは釈放されない、と見られていました。

政界で中心となって、アサンジさんを助けたのは、独立系/無所属議員たちでした。当初から何度もイギリスやアメリカに、アサンジさん釈放のために足を運んでいたのは、独立系議員でした。

2022年の5月の国政選挙では、2大政党に縛られたくない、「地域の有権者の思いにそう政治」をしたい、という草の根運動の独立系議員たちがさらに当選し、勢力を伸ばしたグリーン党が加わり、アサンジさんの釈放を与野党2大政党に、強いプレッシャーをかけました。その結果、今年2月24日、国会で全政党からの議員による賛成で、英米政府にアサンジさんの釈放を訴えることが、議決されました。

独立系議員で、精力的にアサンジさん釈放の活動をしていたライアン議員は、「力強い瞬間だ。今日、党派を超えて、米国と英国に対し、ジュリアン・アサンジの起訴を停止するよう要求する議決がされました。これは、英米との友情の究極の試金石であり、受け入れられることを心から願っています」とコメントし期待の声が集まりました。

東京では、都知事選の真っただ中。東京を立て直すために、都民のための市民による政治運動の様子が、伝わってきます。選挙に行かない人々に、伝わり広がってほしいという思いです。

冒頭の写真は、アサンジさんの釈放を願い、彼の子どもの頃からストーリーを紹介したドキュメンタリー映画「The Trust Fall・信頼の失態」の3月初上映の様子です。向かって右から司会者、映画監督スタトン(Staton)さん、ジャーナリストのジー(Zeee)さん、グリーン党のショーブリッジ(Shoebridge)上院議員、マックブライド(McBride)さんです。

マックブライドさんは、豪州軍弁護士としてアフガニスタン戦争に参加し、戦地での豪州兵の戦争犯罪を告発しました。しかし、機密内容であるとして、裁判で有罪となり現在、刑務所で服役中です。逆に戦争犯罪を犯した兵士は、罪に問われないという理不尽な結果となっています。アサンジさんが釈放された後、公益となる真実を告発する、勇気ある人々を守る法律の設定の声が高まっています。それを進めているのも、独立系とグリーン党の議員たちです。

主要メディア・マスコミの前には姿を現し、語ろうとしないアサンジさんですが、このコラムで何度か取り上げたTucker Carlson(タッカー・カールソン)さんがインタビューを予定しているようです。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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