世の中にいかに重苦しい空気が漂っていようとも、ウチはマイペース。週末の天気がよくドライブ日和でさえあれば、人生オッケー。
アイスランドは夏なのに、天気が悪くてドライブにでられな〜いと嘆いていると、今年の5月は、記録的に晴れた日が少なかったという。どーりで。去年は夏の初め頃は好調で、彼が夏休みに入るとひどく天気が悪い日が続いた。前年から予定していたお楽しみジープ旅行ができず、その悔しさを今年に持ち越しているので、どうにも気持ちが落ち着かない。
早く郊外へドライブに出たい。
日本は電車網が発達しているし、バスのない場所もバスが結構使える。車を運転しなくても旅はできるし、よんどころない時はタクシーもある。足は自分で運転しなくても簡単に探せる。
それがどうだろう、アイスランドでは、電車がない。日本人は電車はどこでも走っていると思っているフシがある。ごめん、日本人を一絡げにしました。告白します。私がそう思っていた単細胞なやつです!
私はゴールド免許を持っているけれど、ペーパードライバーだ。実際に動く大人の自動車は、危なくて運転できない。アイスランドには遊園地もないので、ゴーカートさえ近年は運転していない。
幸いなことに、彼は運転好きだ。ありがたい。その上ふたりとも、地図に掲載されていない道を見つけてはワクワクする子供っぽい冒険心も持ち合わせている。
5月最終週の週末、1週間前の天気予報は悪くなかった。なのに、その週に入ると強風によるイエロー注意報が発令。ぎゃー、でも週末さえ晴れてくれればオッケー。と思っていると、夕方からまたもやイエローになる。
天気悲喜交々の会話が繰り広げられる中、夕方6時開始予定の強風到来前に帰路につく予定で、とにかく出発することにした。目的地は西フィヨルドの入り口付近の、未走行の道!レイクホゥラル(Reykhólar)という街のある半島の道だ。直線距離で片道3時間。許容範囲だ。
途中左側へ行けばスナイフェルスネス半島で、60号線に入れば西フィヨルドの入り口へ行く。
今回は目的が「走ったことがない道を走るだけ」で、宿泊する訳でも、何かイベントに参加する訳でもない。なので時間をゆっくりと使うことができる。
早速、高速から横道に外れてみた。いつも横目に見ながら、「この道を行くとどんな景色が広がるのかな〜?」と思っていた場所だ。
外れて1分としないうちに、目的地へと高速で飛ばす忙しない日常から、別世界へワープしたように時間の流れがガクンと音をたててスピードダウンする。ーーいや、未舗装道だから実際にスピードを出せないだけか(笑)。
ね!気持ちよさそうだし、これが高速を外れて1分とは思えない風景だった。ここには一本の川が流れていて、時々それは高速からも見え隠れする。たくさんの滝があり、歩いてみると、結構大きな滝が二つほどあった。
ここ数日、雪か雨が降ったようで、地面がぬかるんでいる場所も多い。下手するとズブっと足首まで泥沼に浸かりそうなので、用心して滝を見に行く。これ以上はぬかるんでいるので、まぁまた来ようよ、となる。その「また来よう」がなかなか曲者なんですけどね。
60号線、定番のお楽しみといえば、牧場のアイスクリームだ。ここのブルーベリー・アイスクリームはアイスランドでピカイチ美味しい(場所はツイートのスレッド参照)。
ここらへんまではよく来るけれど、スナイフェルスネス半島を離れて西フィヨルドまでは、気合が入らないと行けない。スナイフェルスネス半島を離れると、冬の間見なかった景色が広がってくる。少し懐かしくすら感じる。
到着したレイクホゥラルの街は、思った通りとてもかわいらしいサイズだった。人口約120名と出てきた。50名程度だろうと思ったので、意外にも多いので驚いた。
それはきっと、ここは海藻(ケルプ)を採取している大規模な工場があるためかもしれない。ケルプは乾燥させたものを食用として国内流通させてみたけれど、売れなかったらしい。現在ではサプリが若干売られている程度だ。値段も安くない。
ではなぜ大規模な採取を?そりゃも〜輸出です!全部輸出!ししゃもも輸出!鱈も輸出!サバも輸出!国内にはタラやサバはまだ出回るけど、それでも日本人が喜ぶレベルではまったくない(皮を剥いで売るなぁ!)ごめんなさい、食べ物の恨みになるとつい熱が入ります。
話を戻そう。小さな街にしては、しっかりした感じの商店ががあり、驚いたことにレストランまであった。夏だけの開店らしい。窓からの眺めもいい。夜は地元の人が集まる賑やかなバーに変身するらしい。こんなバーに夜迷い込んだら、地元のおじちゃん等と飲めて楽しいかも!
この店で少し買い物をした際、この半島の道を進むと何があるかを尋ねた。牧場と小さな教会が町外れで、道はそこまでだという。
この教会の手前からもうもう一本道が出ていた。たぶん海岸に出ることができるのだろうと進んでみた。周囲には早々と放牧された羊が、私たちの車の音に驚いたのか、ヒョっという顔つきで一瞬こちらをみていた。
道の先は小さな漁港だった。ボートも停泊していた。車が数台駐車してあったが、周囲に誰もいなかったので、たぶん船出をしていのだろう。
名物(?)のケルプが海岸線を埋め尽くし、波の動きにあわせてゆらりゆらりと気持ちよさそうになびいていた。こここそ、時間の流れはケルプのゆらぎが基準となり、私の時間も同じように、海の流れに任せているような気がした。
そんな風にボケーっと風景を見ていると、「ユーカ、戻ろう!」と彼が催促してきた。「強風が迫ってくる、その前にこの地域を抜け出したい」
ゆったりとした時間を楽しめたのも束の間、出発の催促かよ・・・。でも、強風は怖いよね。わかるよ。
ーーーと催促したばかりなのに、「そこの岩に座って!」と奥様のお写真を撮りたがるご主人でした。確かに色彩がきれいね。岩の色が独特だし。
急かせるので、強風の到来時間が早まっているのかと思うと、そうでもないらしい。または、新しい道を走りたい好奇心に負けているか。帰路についたのかと思うと、「この道、少しだけ進んでみない?」と横の道を指差す。はいはい、いいですよ。
で、あとは興味ある方はぜひyoutubeのドラレコ動画をご覧ください。
レイキャビクを出発し、西フィヨルドの幹線道路を外れレイクホゥラルの半島に入るところから、半島をまわり、帰路について1号線に戻るまでが2時間半のドラレコ動画になってます。インサートも入れたし、解説のところには、どこで何が見られるかの概要も。羊が道路に出てきたりと、それなりに楽しめるかと思います。
強風に巻き込まれるギリギリのところでこの地域を抜け出すことができた。
毎回書くことだけど、人気観光地も素晴らしいし、こうして観光客ゼロの地は、その地の素顔のようなものがすぐに見えてきて、私はとても好きだ。
この日も新たな道を制覇した。単なるドライブ好きにすぎないけれど、アイスランドの風景画大好きだし、あそこも、ここも、自分の目で見たい。ラッキーなことに、それが可能な地にも住んでいる。
6月の声を聞き、待ちに待った夏の山道が徐々にオープンしつつある。このコラムが公開される翌日ないし翌々日には、走行解禁になった道を早速行き、温泉に浸かってくる予定だ。天気次第なので、天気よ、よくなれ!
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。