少しの間絶景からお休みしたので、今回の「こちらアイスランド」はアイスランドの自然に戻ろうかと。9月の半ば、一度だけ週末の天気がよかったので、ここぞとばかり冒険ドライブに繰り出した。
それにしてもここ1-2年のアイスランド、私の印象では天候がとても不安定だ。特に今年の1-3月の冬は注意報や警報の連発で、一年分の注意報量を最初の数ヶ月で使い果たしたというほど悪天候続きだった。
夏の間はそこそこの天気に恵まれたが、9月半ばを過ぎて天候不安定な日が増え、月の三分の一は注意報で埋められた感じだ。統計を見た訳ではないが、私の印象では近年天気の注意報の発令が多い。多すぎる。
アイスランドは物価が高いため、日々の食品を買うので精一杯だ。ショッピングを楽しむなどほど遠く、百均で豪華な爆買いもできない。我が家の唯一の楽しみはドライブだ。この際、リッター350円に迫るガソリン代は考えないことにする(いや、考えるが)。
世界的規模で見ても、絶景中の絶景率が高いアイスランドを、天気を選んでドライブできるのはプライスレスだと思う。
今回のドライブは、フャットラバック(Fjallabak)と呼ばれる自然保護区だ。訳せば「山の裏手」という意味で、色とりどりの山や滝などに恵まれとても美しい。ハイランドと呼ばれる高地でもあり、車であればレイキャビクから日帰りできるのもうれしい。
フャットラバックには主に2本の道路、南フャットラバック(Fjallabaksleið syðri)と北フャットラバック(Fjallabaksleið nyrðri)がある。温泉やカラフルな山々のある人気のランドマンナロイガル(Landmannalaugar)もこのルートを使う。けれど、ランドマンナロイガルに関してはランドマンナレイズ(Landmannnaleið)という名前になっている。ちなみにレイズ(leið)はルートという意味。
ここにはハイカーからの絶大な人気を誇るロイガヴェーグルというハイキング・ルートがあり、3-4日をかけて歩く風光明媚な道のりだ。
今回はこのLandmannnaleiðを横に逸れて、Fjallabaksleið syðriへと山を横切った。道路番号はなく、消えかかった文字でHrafntinnuskerという標識をたどった。いや、Hrafntinnuskerまでは遠いので、その手間で軌道修正して、南側のAlftavatnへと行くことにしたーーと書いても、なんのこっちゃですよね。
例によって私はお気軽に助手席に乗っているだけで、彼が事前にちょぴっと調べたっぽいルートを本日も行く。が、これが曲者で、調べているようでほとんど調べておらず、とりあえず行ってみようというだけ。本当に大丈夫なのか?
我々には鉄則があり、「無理なら早めに引き返す!」
これは本当に重要なポリシーで、引き返すタイミングを逃すと、もちろんラッキーなら何事もなく帰宅できるが、下手すると事故に巻き込まれたり、救助をお願いすることになる。もちろん、天気のいい日を選んだ上、川を渡る際は誰かが渡ってくれるのを待つことも多いし、絶対に無理はしない。特に積雪に関しては、3回のうち2回は引き返している。
我が家の愛車は小型車のジムニーなので、積雪に弱いこと、川の流れによっては命取りになることを考慮してのルールだ。これがランドクルーザーでも侮らない方がいい。
上の写真を見ると、小型の四駆はバッテンで、大型(XL)の四駆のみ通行可となっている。「極度の悪路(EXTREME ROUGH)」とあるこの看板、実は私は通った当日は見落としており(この写真は後日通った時に撮った)、彼は気づいていたそうだ。
なのに、小型車のジムニー?!無理なら引き返せばいいし、親戚のジムニー乗りが先日行って「問題なし!」だったという事前情報にも基づいていた。
ちなみに、この看板に法的効力はない。ご注意をという警告のみ。要は自己責任だ。
正直、確かに水が道路をえぐった跡が多く、悪路ではあったけれど、悪路が得意なジムニーは特に問題なく進めた。そしてすぐに、山々が見えてきた。うむ、やっぱり絶景だ。
絶景はいいけれど、標高が上がれば上がるほど風が強い。いつものこととはいえ、風さえなければと思うことばかりだ。風が強すぎて絶景ポイントで外に出られなかった。
さすがに近年は悪路も慣れたし、この程度だと驚かないけれど、急降下で、道路がえぐれているような場所は少し緊張する。なるほど、だから大型四駆かというのは理解した。
フャットラバック、山の裏というだけあり、表情豊かな山々が次々と姿を表す。絶景は見慣れているけれど、「やっぱりここは凄いね〜」と毎回語彙のない表現で驚きを表すことになる。
山の模様というか、起伏というか、どうしてこのような形状になるかは地学的に説明ができるそうだけど、とにかく、起伏に富んでいて美しい。
そして温熱地帯が目に入ってきた。地からボコボコと音を立てて熱湯が沸き立ち、そこから湯気がもくもくと出てくる。へ〜、こんな場所があったんだ。地名を調べようと詳細な地図も見てみたけれど、地名がない!交通の便がいい場所であれば、瞬く間に人気スポットになりそうなのに!
その後もひたすら風光明媚なドライブが続いた。山の感じが端正で美しく、この周辺は山の形状の統制がとれている感が素晴らしかった。もちろん滝もあった。そしてこの滝も名無しだった。
どこを見ても絶景で、本当に楽しいドライブだった。悪路はご愛嬌だし、小型車で行けないという意味があまり理解できなかった。川の数は多かったので、たまたま秋口で川の水が一番少ない時期になっていたため、小型車でも問題なかったのだろうとは思う。水の量が多かったら、渡らなかったであろう川はいくつかあった。
川といえば、ある場所は川そのものが道路のルートになっていた。あまりにも長い間、川から抜け出せなかった。彼も私も、リーチすべき対岸を見失ったかと思ったことがあった。これがその時の動画だ。
写真を見返して、ため息をつく。アイスランドの夏は超絶美しいし、ドライブ、ハイキングし放題で楽しい・・・。まだまだ未到の道がたくさんあるし、行くたびに山の感じも植物の色も違っていて、自然の移り変わりを見るのが心の糧になっている。
人気のフャットラバックとはいえ、ここはその横道なので、見かけた車の台数はごく少なかった。停車しながら、あちこち写真を撮りながら四時間半ばかりこの横道を楽しんだ。出会った車は2台だったか。
南フャットラバック(Fjallabaksleið syðri)沿いのAlftavatnという湖のところまで行き、そこからレイキャビクへ戻った。この湖畔にはハイキング者用の宿泊施設があり、そこには徒歩で川を渡る時の注意点などが書いてあった(「車の通り道から100メートル離れた場所を横断のこと」等)。このコースを歩くのは、さぞ気持ちがいいだろうと想像に難くない。私も一度は歩いてみたいと思っている。
今回も絶景でお腹いっぱいになりながら、南フャットラバックを通ってレイキャビクへ戻った。
ちなみに、Hrafntinnuskerまで行かなかったせいもあるのか、小型四駆がなぜNGとされているのか、結局理由がよくわからなかった。むしろ、狭い道幅は断然小型車の方が有利に思えた。小型車が川で不利なのはどこでも同じこと。これは理由を探りに、Hrafntinnuskerまで行くしかない!
今回私が進んだこのコースは、道の番号もないし道路状況はアナウンスされないので、日本からわざわざ行く人はいないとは思うけど、とりあえずご紹介しておけば、北側のランドマンナレイズから入ったのはたぶんこの辺(地図リンク)。
そして、ルートはmap.isを使ってざっくりと書いてみた。黄色い文字で「ここから入る」と書いてあるのが、ランドマンナレイズからHrafntinnuskerへと入っていくところ。途中ルートが枝分かれするので、自分がどこへ行きたいのか、間違わないように注意。
車の往来は少ないので、トラブルになると助けてもらえる可能性は低い。電話の電波もなくなるため、こういう場所へ行く時は、日照や天気は事前チェックが必須。私たちも風がなく、天気がいい日しか行かない。
ハイランドは既に積雪の季節に入った。もう小型車では歯が立たない。それでも、天候の道路の具合を吟味して、時々ハイランドへと繰り出したい。去年は天候のラッキーもあり、11月に1-2度、そんな道へと繰り出すことができた。さて、今年の冬はどうだろうか。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。