近所のスーパーの、普段は生肉が売っている場所にクリスマス・ビュッフェ(Jóla – hlaðbord)のコーナーが現れた。
いかにも「私はスペシャルな存在です!」といった肉製品やチーズがそこに並ぶ。きれいにスライスされ、そのまま上品な器にでも盛れば、「来客を素早く対応!」のようなものも多い。ただしお値段は・・・。
なぜこうも物価の高い国に住んでしまったのか、このような時期になると、恨みつらみが出てしまう。高くても種類があるならまだしも、食材の種類は少なく、自国で獲れる魚介も輸出に回すだけで国内には出回らない。も”〜〜、本当に食文化がないんだから!と自分の財力の欠如を文化論へとすり替えたくなる。
この国、輸入品に頼らざるを得ないこともあり、食材の種類が少なすぎる。自国でとれる作物はじゃがいも程度。植民地であり、ヨーロッパの最貧国時代が長いため、食文化どころではなかったのだろう。現在でも野菜を食べず、ラム肉、魚、じゃがいものみ!という人も多い。とてもじゃないけれど私には無理な食生活だ。
良くも悪くも味覚が単純だ。調味料も添加物も少なく、素直な味付けという表現もできる。素材は限られるが、新鮮なものが出回るため、単純な味付けの方が美味しかったりする。それはそれで悪くない。アイスランド人の魚、ラム肉、ジャガイモは、日本人の、ご飯、味噌汁、納豆!のような感じかと思う。
既成のクリスマス食材も小細工をしないせいか味は合格なことが多い。けれど、取り立ててグルメでもない。
個人的には生鮮肉の売り場を狭くされるのはありがたくないが、クリスマスを楽しみにしている人もいるので、それはまぁいい。季節の物事なので、我慢する。クリスマス・ビュッフェに一品でも買いたいものがあればいいが、それが無いんだよなぁーー。問題は価格だけではなく、気分が乗らないこともある。
今年は世の中が暗黒の濃霧に包まれているような気がして、クリスマス気分になれない。
噴火騒動のあったグリンダビク地区の人々は、帰宅できないまま毎日を送っている。日本でもポンコツな政府のせいで、大勢の人々が生活に困っている。そんな時に、信じてもいないキリスト教の祭り事に参加する意思は限りなくゼロだ。とはいえ、家族もいるのでまったく無視することもできない。
グリンダビクといえば、先月に何度かお伝えした「噴火するする」騒動のあの街だ。
アイスランドでは現在も毎日ニュースで取り上げられる。毎日街のどこかで地形の変化があり、昨日の報道でも「昨夜突然、深さ25メートルの穴が現れた」とあった。大地震のインパクトは知っているつもりだが、今回の物事は想像以上に影響が大きく、友人も数名避難していて心が痛む。人ごとなのに、落ち着かない。
アイスランドに住んでつくづく困るのは、この手の大きな肉だ。扱い方が全くわからない。もちろん検索したり、周囲に尋ねれば判明することではある。大きな肉をガッツリ食べる食欲の持ち主ではないさせいか、文字通り食傷気味になり、調理への興味も湧かない。むしろ、見るだけで、縁遠いものを感じる。
ちなみに、今回はクリスマスの物価をお伝えしようかと写真を撮ってきたつもりが、写真では文字が鮮明に見えず、写真を出すだけでお茶を濁すことにした。大まかではあるけれど、この塊肉ひとつが約8千円から1万5千円くらいする。
年に一度の大ご馳走に見えるけれど、塊肉は通年置いてある。誕生日や家族の集まりなどでは便利なので、こういう塊肉を年に何回も調理する家族もいる。日曜の教会のミサの後にこのような肉をいただくことを伝統として守る人もいる。
巨大肉なので支払う金額も比例して大きいものの、やり方によっては経済的にもなる。
我が家で塊肉を一度焼けば(調理担当は彼)食べ盛りの彼の息子がいても、2食は食べられる。彼と私の二人だけなら4食分以上あるので、結果的にはまずまずのお値段に落ち着く。骨の周りに肉の残ったものをスープにして、きっちり使えばコスパは最強になる。
アイスランドの乳製品は基本的に筋がいい。特に生クリームの味は美しく、砂糖も何も入れず、ゆるくホイップしたものを、そのまま1パック分全部食べてしまえるほど好きだ。上の写真はチーズのコーナー。輸入品が中心で、国内のチーズも少し。国内はまだチーズ作りの歴史が浅いようで、ヨーロッパ各地の名チーズに追随しようとがんばっている感じはある。
写真にはないが、アークレイリという都市で作られているブルーチーズが私は好きだ。ブルーなのに牛乳の甘さを兼ね備えたチーズで、特にクリスマス用に売り出されるものは熟成期間が長いのか、旨みがギュっと濃縮されて奥が深い。
そして実際の買い物はといえば、ごーく質素なお値段の割には、ゴージャスになった。ジャ〜〜ン!
このような写真を人様に見せようとは思っていなかったので、分かりにくい並べ方で失礼。66か99かで迷うと思うが、99isk(=110円!)のシールだ。今日は99アイスランド・クローナの売り切り食材コーナーに出会うことができた。ラッキー!
ブタさんマークのボーヌスというスーパーの見切り品は、家畜の餌にもならないような腐敗状態のものが50%オフ。私が行くクローナンというスーパーの見切り品は、「見た目は悪いけど全く大丈夫!」なブツが多く、野菜と果物は一袋99isk均一!これは半額以下どころか70%オフ以上だ。
四角い容器のベビーリーフは正価で600円ほど。コロナ前までは400円弱だったのが500円越えになってしまい、今や600円にリーチ。この99iskで出会わない限り買わなくなった。見切り品にしては鮮度がいい葉物で、当然ゲット。バナナはケーキを焼こうと思っていたので即決。99iskは熟成済みバナナなので願ったり叶ったりだ。
値段が見えていないけれど、マンゴー2個も当然99isk。水分が抜けている程度のコンディションが多いので、見たら絶対に買う一品。丸い容器のは、たぶんヨーグルトか何かだと思う。興味があったし、350円が半額だったのでゲット。これは野菜・果物ではないので、均一価格ではない。
一番大きなパッケージは大奮発した羊肉。普段は生肉で売っているもので、売れ残ったものを冷凍して半額で売っている。消費期限は10月だけど・・・。販売しているからには、法的に問題ないのだろうと信じて買うしかない。この冷凍肉は賭けだった。クリスマス・ビュッフェのせいで買いたい肉が置いてなかったから仕方がない。肉は予算オーバーの2千円越え。
総額2800円。いい買い物だ!最高!我ながらお買い物上手!これを正価で買うと推定7千円くらい。
アイスランドで食費を安くする方法はない。こういったいい見切り品に出会うのはたまたまの超ラッキーで、日常的な節約術としては使えない。
それにしても恋しいかな日本のご飯よ。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。