2023年12月17日(日曜日)午前11時から、アイスランド屈指の観光名所である温泉施設「ブルーラグーン」の営業が再開される。よかったとも言えるし、なぜ?という疑問も大いに残る。
結局、街が全滅する!と報道されたアイスランドのあの火山騒動はどうなったのか?
ツイッターを見ているとそのような声を時々目にする。こんな小さな国のニュースなど、雑多な情報として傍観して終わるだけかと思っていたので意外だ。もう少し見ていくと、ブルーラグーン訪問をアイスランドの旅行のハイライトのひとつに考えている人も少なくないようで、そうであれば気になるに違いない。
2024年12月15日現在、噴火していない。噴火するのであればどの周辺かという目星はついている。その周辺での地震はまだ続き、マグマの流入も確認されているからだ。とはいえ、地震といっても回数は激減した。震度も小さい。
住民が避難を強いられたグリンダビクの街はその後も、新たな土地の陥没や亀裂が見つかった。一時期帰宅で荷物を取りにいくことはできるが、まだ住民の居住は許可されていない。
電気水道などのライフラインは修復したそうだ。けれど、マグマが通った(過去形で書く!)岩脈の近くの家は壊滅的で、私の目には修繕可能には見えない。その他の地域の住宅は、たぶん無傷に近いと思う。ただ、家の中での配線や配管等が群生地震により、どの程度ダメージを受けているのか、それは個別に当たってみないと正確なところはわからない。
グリンダビクの会社の、昼間の営業は再開された。再開され、すでに数週間経っている。たぶんブルーラグーンが営業を再開する法的な根拠は、ここらへんにありそうだ。
でも、再開するとすれば街の復興が最初で、ブルーラグーンは最後ではないか?
そういう声がアイスランド人の間に聞かれる。というのも、グリンダビクの街とブルーラグーンでは場所が異なる。ブルーラグーンはスヴァルツエンギ地熱発電所の目と鼻の先だ。ここは群生地震の直後、土地が隆起が激しかった場所だ。
2024年12月12日にこんな記事が出てきた。地熱発電所近くの土地の隆起が思いの外激しいという内容だ。英語の記事はこちら。日本語の機械翻訳はこちら。元記事はMorgunblaðiðというアイスランドで最も読まれている新聞だ。政治的には保守派で、新聞名を訳せば朝情報なので、朝日新聞というところだ。
地熱発電所の土地の隆起が激しく、「マグマの流出の可能性の兆候はまだあり、スヴァルツェンギではマグマが地表下に蓄積し続けています。」とある。マグマ流出とは、イコール火山噴火という意味だ。
これは数日前の記事だ。隆起の激しい地熱発電所から数分のブルーラグーンで営業再開?隆起もマグマの流入も収まりつつあるとはいえ、専門家とも話し合ったのだろうけれど、英断といは英断だし、本当にそれでいいのか?という疑問が素人には残る。第一、避難している住民にとってはこれがいい兆しなのか?
ブルーラグーンは観光客が楽しみにしている観光目玉でもある。私が接したお客様の中にも、ブルーラグーンの営業がないために旅行を延期した方がいる。一生に一度であろうアイスランド旅行であれば、逃したくない気持ちはよくわかる。
旅行会社やブルーラグーン側にしても、クリスマスはアジアからの客で掻き入れ時となるし、ずっと閉鎖したままでは海外からの旅行客全般の数にも関わる。それは事実だろう。それほどブルーラグーンの存在はアイスランド観光にしっかり組み入れられ、それを一番の目的に来る人も少なくない。
早く営業再開を、という掛け声は理解するところだ。
けれど、グリンダビクの住民が戻らない前に、そしてグリンダビク内の出入りが住人や従業員以外は制限されている時に、観光客を地域内に入れるのか?安全性は?????
ブルーラグーン再開といっても、営業時間は11時から20時で、以前のように早朝から夜中までではない。ブルーラグーンの敷地内にあるホテルは閉鎖したままだ。立ち入り制限区域の中である。出入りはバスのみで、自家用車やレンタカーでの来訪はできない。
営業再開に関しては、ブルーラグーンのサイトのここに詳しい記載がある。
ちなみに、近隣で噴火が始まった場合に備えての要塞は、ほぼ完成したと聞いている。この地域への道路は閉鎖されているため、さすがの私も行っていない。なので写真もなければ、聞きかじりの情報しか持っていない。
要塞は地熱発電所とブルーラグーンを囲むように作られている。ここでもまたブルーラグーンが反感を買う。なぜ公費で私企業の娯楽施設を守らなければならないのだ?と。
ブルーラグーンが地元民にも愛されている施設ならいい。けれど、グルーラグーンが観光客が行くバカ高い料金のプールになって久しい。コロナ期は高額な公金補助がつぎ込まれた。補助がなくともやっていけた企業だ。オーナー達には高額のボーナスが支払われ、市民から総スカンを食ったばかりだ。「要塞など自分たちで建てればいい」「半額負担しろ」との声に不思議はない。
ただ要塞に関しては、地熱発電所だけを囲むことの方が困難で、地続きのようなブルーラグーンも含めた方が理にかなう。位置関係は以下の図を見てほしい。黒い点線が要塞で、「Bláa lönið=ブルーラグーン」「Svartsengi=スヴァルツエンギ地熱発電所」だ。以下の図は元記事へリンクしてある。
私は初めての火山噴火体験を思い出している。噴火体験というより、群生地震から噴火に至った経過のことだ。あの時は地が揺れて酔うほどの地震が一ヶ月以上続いた。それが収まり、ひどく静かになった後で火山噴火が起こった。群生地震から3-4ヶ月後のことだった。
それを考えると、今回も中休みを入れて春ごろに噴火してもおかしくないのかもしれない。来週私は日本に戻る。もしかして、私がアイスランドに戻るのを待って噴火する予定?
専門家も、火山噴火は毎回異なり、予想するのが難しいと言っている。結局、火山の勝手でしょ!ということか。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。