2024年11月30日土曜日、アイスランドの総選挙があった。今回はざっくりとその日のことをお伝えしようと思う。
アイスランド国籍のない移民でも、地方選挙は参政権を持てるが、国選は別。ということで、今回私には選挙権がなかった。なので、彼にくっついて投票所に行った程度しかしていない。
地方選は住んでいる地域の物事なので、論点は掴めることもあるが、国選となると正直よくわからない。言語が理解できる日本の政治でさえわからないので、ましてアイスランドの物事はさもありなん。アイスランドの報道機関の受け売りしかできないことをお伝えしておきますね。
今回の選挙の注目すべき点は、まずは天候だった。選挙当日は数日前から悪天候が予想され、天気図には黄色の注意報がアイスランドの海岸沿い3分の2程度を包み込んでいた。
事前投票が呼びかけられ、かなりの人々は事前に投票を済ませたという。
アイスランドには日本のように大雨注意報、波浪警報等、具体的な原因と危険度の高低が文字を見て判明するものではなく、危険度は色分けされているが、「なぜ?」という具体的な気象条件は文章を読まないとわからない。今回は降雪量と風のコンビネーションなので、平くは雪嵐になるという。
党首討論会などもあったが、選挙関係ニュースの半分は道路状況が占めていた。
投票日当日朝6時にならないと、投票を延期するか否かを決められないという。当日の朝決めるとは、のんびりしたものだ。
結局投票は延期されることなく、投票所へ行くのに家から出られないという連絡があれば、レスキュー隊が出動して個別に対応していたという。もちろん幹線道路は除雪車などを総出させて通行を可能にしていた。いやはや、すごいな。
そんな感じなので、選挙関係速報の多くが交通に関してのレポートだった。投票終了は会場によって異なるが、黄色注意報が出ていた地域では、やはりレスキュー隊が投票箱を集計所へ届けていた。
アイスランド人は本当に火事場の馬鹿力が効く民族だとつくづく思う(褒めてます)。四の五の言わず実行あるのみ。成せばなるの典型か。とにかく思い切りがいい。潔い。
どこの国でも地方により強い政党がある。地盤というやつだろう。首都圏を離れた郊外の方が保守が強いことが多い。黄色に染まった地域の人が投票しないと、困る政党がある。
かつて投票はハレの日であり、正装して必ず行くものという社会通念だったという。今でも投票所にキチンとした格好で来る人は見かけるが、この日は足元が雪で悪いこともあってか、正装組は見かけなかった。
気温は零下で寒かったけれど、天気はよかったので散歩ついでに来たであろう子供連れは多く見かけた。投票所である市庁舎前のチョルトニン(湖とされているが実際は池)は厚い氷に覆われ、市民や観光客が楽しそうに遊んでいた。スケートリンク代わりに滑っている人もいた。。
この日の投票率は全国平均80.02%で、辛くも80%代を維持した。地方別に見ていくと北西部の82,3%が最高で、最低は南部の78,8%だった。首都圏での投票の関心は全国平均以下で、首都圏南部は79,3%、北部は79%でどちらも平均以下だった(参照ソース)。
その結果、過半数を超える議席数を獲得する党は今回も出現しなかった。以下が結果の一覧になる。以下はVisirのサイトに掲載された結果だ。
この結果、連立政権を組むことになるのは以下の3政党となる。
・社会民主同盟 (Samfylkingin / Social Democratic Alliance ) 得票20,8%
この政党は物価対策や住居不足の解消、福祉の充実等、生活に密着した問題に重きを置いて戦った。前回より9議多く獲得し、今回の選挙で15席を得た。党首はクリストルン・フロスタドッティル (Kristrún Frostadóttir)。36歳の若き経済学者で、2022年から国会の議長を勤めてきた。二児の母でもある。
・人民党 (Flokkur fólksins / People’s Party) 得票19,4%
貧困撲滅、低所得層の所得税引き下げ、福祉の向上など、人権尊重を推す政策を提示して4議席増の10席を獲得。党首はインガ・スナイランド(Inga Sæland)。
・改革党 (Viðreisn / Liberal Reform Party) 15,8%
経済の安定(EU加入再考を含む)、国際協力、住宅の安定供給、教育や医療への投資等を推進する中道政党。 党首はソルゲルズ・カトリン・グンナルスドッティル (Þorgerður Katrín Gunnarsdóttir)。
ちなみに党首3名は女性である。みんないい笑顔だ。
ちなみに議席をがっつり落としたのは元カトリン首相が属していた左翼環境運動(Vinstrihreyfingin – grænt framboð / Left-Green Movement)で8議席を失った。不人気の原因は成果が見えなかった環境政策への失望、経済対策への批判、また党の顔として活躍してきた元カトリン首相の辞任も痛かったようだ。
その他に特筆すべき点は、例えば大統領選でトップ5に入ったハットラ・フルンドとヨン・ナール(元レイキャビク市長)の両名が選出されたことだろう。元レイキャビク市長といえば、ダーグル・エゲルトソン(元市議会議員、元レイキャビク市長)も国政に参加することになった。
そしてこれが今回選出された63名のアイスランド国会議員の顔ぶれだ。男女比はほぼ半々。それでもまだ女性の方が少々少ない。
次期アイスランド政府の連立政権の党首は全員女性だ。あまり女性だ男性だは言いたくないけれど、それでもやはり、日本が目を覆いたくなるほどのメンツなので、どうしても声高に言いたくなる。
このままいけば、第1党の党首であるクリストルンが首相に就任するだろう。そうなるとアイスランドは大統領と首相のどちらもが女性となる。そしてクリストルンは前述の通りまだ36歳だ。若い!
大切なのは政治手腕であり性別でも年齢でもない。そうは分かっていても、女性が国政の場で、トップの座について活躍する姿を見るのは気持ちがいい。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。