今年は時々ハイキングに出向きたいと思っている。理由はいくつかある。
まずはレイキャビクの周囲で走りたい道路がほぼ尽きたから。ジープ道も随分と探求したし、もう未開拓の道路や面白いところが残っていない。夫婦ともに座っていることが多く(彼は事務職だし私はフリーランス)、夏の間だけでも体力作りをしたい。ハイキングはそれほど費用がかからない(←これ大切!)。
ということを言いながらも、去年は大物のハイキングを一度した程度で、結局は面倒とか疲れるからとかで、ほとんど歩かなかった(と記憶している)。けれど、今年はそんな私たちの怠惰を見越してか、四駆車が倒れた・・・。
愛するSuzukiのJimnyを車検に出したところ、シャフトの何かがよくないそうで、車検に通らなかった。正規ディーラーで修理を頼んだところ、1ヶ月待ち(涙)。
という避けられない理由で、まだ手元に置いておいた二駆のトヨタ車を使わざるを得ない。かなり古い車種だし、見た目ボロいけど、トヨタのヤリスは本当によく走ってくれる。燃費もすこぶるいいし、ありがたいこと限りなく感謝している。
それにしても、ジムニー大丈夫だといいな。整備してみないとわからないと言われて、戦々恐々。確かにゴッツゴツの場所は結構行ったし、安全走行してくれた。何かの拍子にどこかに過負荷がかかり、何かが歪んだりしたとしても不思議はない。7月末に入院させるまではあまり使いたくない。まして山岳道路やジープ道に連れていくことはできない。
という訳で、残された砦(?)がハイキングということになった。
ハイキングは、夏の国民的な活動・趣味といっても過言ではないほど人気がある。ハイキングコースは平坦な道を歩くだけの簡単なものから、数日をかけて地域を横断するような凝ったものまである。ピンキリだ。そういった文献も情報も非常に多い。
飲食を持参すれば済むお手軽かつお財布に優しいものもあれば、荷物の移動は車に任せ、宿泊・食事等がついているツアーもある。そういったツアーはかなりのお値段で、庶民の味方とは言い難い。自分たちで歩いていけばそれで済むようなデイ・ツアーでさえ、ガイドやランチ付きのツアーだと2万円近くかかる。それも海外の観光客用ではなく地元のアイスランド人用のツアーだ。たっか!
もっとも、こういうツアーで行くのは裕福層が多く、我々のようなケチケチ族は自分で調べて歩くだけだ。
さて、ジムニーの車検が正式に通るまで、どこへ行こうか?ということで、7月初旬、ロイズギル(Rauðsgil)というハイキング・コースをたどった。川沿いを歩き、滝が多く、標高差もそれほどではなく、ほどよい距離で我々にはぴったりだった。
ここにハイキング・ルートの地図と各種情報が掲載されている→ Rauðsgil Hiking Trail

このコースは峡谷の川沿いを歩いていく。アイスランドの常で大きな木や森はないので迷うことはない。
ハイキングの道は割合わかりやすい。入り口は道路工事用の土砂を採取する場所のようなところで、あまり見た目がよろしくはない。駐車できるのも2-3台が限度。また、羊の放牧の関係でゲートも閉まっている。
一見すると入ってはいけない風情ではあるけれど、ハイキングルートとして旅行協会が公式サイトに掲載しているくらいなので、柵をまたいで入って問題はない(写真を撮り忘れてごめん)。


とりあえずはメインの川沿いを目指して歩いていく。作業用の車両が入るのか、なんとなく道路っぽい跡があるので、適当にそこを進む。道の周囲には小さな花がそちこちに見られる。その色合いがいかにも夏らしく、歩いていて目に楽しい。

メインの川(渓谷)に近づくためには、小さな川をひとつまたぐ必要がある。渡るというよりも、またぐ程度で済む流れだ。上の写真の、小さな滝のようになっている場所がそこ。
そこからは草の背が高くて道がよくわからないけど、適当に川沿いまで行くとまたなんとなくハイキングコースっぽい道が出現する。アイスランドのハイキングコース、あるあるだ。
ごく緩やかな上り坂が少し続き、徐々に下界から離れるのを感じながら進むと、30分程度で見晴らしいのいい場所にたどり着いた。最初に掲載した写真がその場所だ。


ここらへんから先はもう滝、滝、滝、滝と、滝ばかりが見えてくる。たぶん名前もない滝ばかりかと思う。
アイスランドの滝の命名は至って単純だ。例えば南海岸の有名な滝がある。ひとつは滝裏にまわれるレリャラントスフォスで、もうひとつはスコゥガフォスだ。フォスは滝を意味する。前者はセリャランス川(セリャラントスアゥ)にある滝なのでセリャラントスフォス、後者はスコゥガ川(スコゥガアゥ)にある滝なのでスコゥガフォス。ね、単純でしょ?!
滝の名前はこの方式が90%以上を占める(弊社印象)。なので、この峡谷にある滝は全てが「川名+滝」になってしまうことになる。ならなくてもいいけど。とにかく、滝がやたら多い。
調べてみたところ、このうちの3箇所は名前が付いていた。けれど1箇所は二つの滝をまとめての名前のようで、とりあえず便宜を考えて適宜命名しておきました、のような印象しか受けなかった。
ちなみに、地元の地図だと渓谷名はあっても川の名前が分からなかった。アイスランド、いい加減だ。




いい感じで上の写真が見えていますように。最後の写真で滝の落差がわかると思う。右上に私がいる。身長は160センチあるので、それを考えると落差は20メートルはゆうにありそうだ。
この渓谷で一番背が高いのがこの滝だった。
この後から出てきた滝は、高さ5メートルくらい?という感じのものが多かった。

ゆるやかな上り坂を時々振り返りながら進んで行き、一番大きな滝が落ちる場所と同じ高さの岸をたどっていくと、この滝があった。座りやすい石もあったので、ここでお弁当を平らげる。
そしてまたまた滝が見えてくる。

いやはや、本当に滝ばっかり。飽きないし、疲れているヒマなく景色が変化してうれしい。労少なくして功多しといった感じだ。



この二段構えの滝の前にはブルーベリーの木もたくさんあった。標高が若干高いので、あまり花(実)はなかっがが、それでもゼロではなかったので、今年はブルーベリーの豊作の気配を感じた。
自分の写真ばかり出すのは好きではないんだけど、滝の大きさがわかりやすいということで何度も失礼します。
この周辺の滝は、川底がスパンと刃物で切られたようにきれいに平らで、人工物のように見えなくもない。でも、全部正真正銘の自然の造形。
見どころはここらへんまででなので、この二段構えの滝の前で寝そべってお菓子を食べて来た道を戻ることに。

復路では対岸の絶壁に近い危なっかしい場所に数組の親子をみた。写真は羊をフォーカスしてしまったので高さが分からないけれど、一番大きな滝の倍くらいの高さのところだった。羊は渓谷の両側にいた。
なかなか楽しかった。往路は2時間半ほどかけてゆっくり登り、復路は1時間弱だった。
片道約4.3キロ、標高差約230メートル。ササっと行けば往復2時間もあれば行けそうな気がした。私たちはゆっくり歩いて、景色を楽しむのが目的だし、後日の筋肉痛にならないようにもしたかった。
運動不足の我々にはちょうどよかったようで、翌日疲れも筋肉痛も残らなかった。いや、もしかして私って意外にも健脚?!
アイスランドには有名な滝がいくつもある。そして無名の知られざる滝も超無数!このハイキングコースの入り口は、レイクホルトという街から車で5分程度かと思う。長くて10分だ。
レイクホルトはアイスランド史上の重要人物とされるスノッリ・ストゥルルソン(詩人、政治家、歴史家)が住んでいた街だ。近所(20キロ離れた場所)には、風光明媚なフロインフォッサルという有名な滝もある。観光の拠点としてなかなかいいホテルもあり、じっくりとアイスランドを観光するには悪くない拠点となっている。
レンタカーがあり、少しディープなアイスランドを体験したい人には、最適なのではと思った。
小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。
