アイスランドは11月から徐々にクリスマスへ向かい助走をつけ始めた。まずはメインストリートの電飾。11月初旬に早々とクリスマスベルの電飾を見て驚いた。
あぁ、もうそんな時期なのか、と。
アイスランドはカレンダー上、夏と冬の二季しかない。
夏といっても言葉だけで実際は日本の初春といった感じでしかない。何度も書いているが、アイスランドの季節感は気温ではなく日照時間だと私は思っている。
季節は日照時間で毎日刻々と変わるため、その変化自体は緩やかだ。節目節目にお祭り事はあり、夏の入りは国民の休日だし、冬の入りには商店街で無料でスープが配られていた(観光客増加のため、レイキャビクではそれをやめたらしい)。
夏は日照が長く屋外でのアクティビティが盛んだ。夏季休暇で自宅にいない人も多く、夏は公共の行事が少ない。逆に冬の間はあれやこれやのイベントが多く、近隣で楽しめる物事が増える。たとえば妻の日(女性の日)、夫の日(男性の日)、クリーム菓子の日、ソーラマートゥル(Þorramatur)と呼ばれる冬のご馳走の日等は、どこかへ出向かずとも自宅で行えるイベントだ。もちろん美術展や音楽会など、公共の場で行われる物事も目白押しだ。
そんな冬の祭典が始まるよ〜の掛け声的な最初のビッグ・イベントがクリスマスだ。
クリスマスはご存知の通り12月25日がピークで、その前から徐々に気分を盛り上げる。日本のクリスマスは商業的だし、キリスト教を国教としているアイスランドでも、正直そんな雰囲気は拭いきれない。
その精神はどうあれ、日照時間が最短となる暗い時期に、お祭り事で楽しく過ごすのは悪くない。数十年前から変わらない質素なクリスマス電飾は心をふっと緩めてくれる。
前書きが長くなったが、今回はそんな様子をお伝えしたい。
上記ツイッターの写真ではよく見えないので、少しじっくりとパッケージのデザインをご覧くださ〜い。
まずは生活必需品の乳製品等を。






バターは分かりやすくクリスマス・ツリー。あちこちのパッケージに見られる「Jóla(ヨゥラ)」はクリスマスという意味。
牛乳のパッケージは13人も存在することで有名になりつつあるクリスマス・ピープル(厳密にはサンタではない)が大活躍。どのクリスマス・ピープルが描かれているのかは、パッケージの横に説明がある。パッケージ横に「ツリーを飾ろう」というオーナメントも掲載。切り抜いてツリーに飾るコンセプトらしい。ちょっと微妙(笑)。
コーヒーはクリスマス・ブレンドだという。私は基本的にコーヒーを飲まないので、何を飲んでもあまり違いがわからない・・・。それよりも、コーヒーは一袋500gだった覚えがあるけどこれは400g。実質的な値上げが激しい。
写真を取り忘れたけど、クリスマス用お買い得チーズ・セットや、クリスマス特別熟成チーズなどもある。
次はお菓子等の嗜好品。





上の写真を順に解説していこう。
最初の「オレンジとモルトのミックス」は、オレンジジュースとモルトジュースをミックスしたものだ。本来はオレンジジュース(とは名ばかりで大昔の粉オレンジの味)とモルトジュース(ノン・アルコールの子供用ドリンク)を別々に購入し、好きな感じで混ぜて飲む。2本買う手間を省き、最初からミックスされているのがこのドリンクということになる。私は甘い飲料が苦手なので、お味見程度しかしたことがない。
「オレンジ・モルト飲料のチョコ」は前述の通り、本来は飲料であるものをチョコにしているということになる。実際に食べてないので想像でしかないけれど、たぶんチョコの中に液体を入れているのではなく、そーゆー感じのフレーバーになっているだけの気がする。違ったらごめんね。
「とにかくサンタ!」というのは、サンタのパッケージのお菓子をよく見るようになったということ。
「クリスマス・チョコ」とは書いたけど、内容は普通のミルクチョコレート(Rjómasúkkulaði)の印象。赤いきらきらパッケージがクリスマスっぽいだけ。その横のお子様向けパッケージもミルク・チョコらしい。目先を変えただけ?!
「お菓子のアドベント」アドベントとは普通12月1日から一個ずつ窓を開けていくと、そこにお菓子が入っているというもの。大抵の場合、小さな飴やチョコレートなどが出てくる。安ければ(500円程度)買おうかと思ったけど、一箱千円越え(899isk=1100円)だったので沈没。
買わなくても観ているだけで楽しいので、ありがたくその出現を楽しませてもらっている。


毎年この時期にガソリンスタンドのバーガー屋で売り出されるトナカイ肉のハンバーガー。ポテトフライやコーラ(炭酸飲料)もついて2695isk(3300円)は劇的に安い!!写真の人物は料理コンクールのアイスランド代表のひとりらしい。彼が監修したってことね。
アイスランド在住8年目かつ大学に一年通っただけあり、食べ物のこと程度は理解できるようになった(便利!)。ハンバーガーの中身は鹿肉(トナカイ肉)115グラム、ブリオッシュ・ハンバーガーバン、どこぞのチーズ、サラダ菜、トマト、玉ねぎソース、トマトソース(ケチャップのことか?)焼き玉ねぎ、ベーコンジャム(ベーコンジャムって何?というのはさて置き)。
このハンバーガー、評判では悪くないという。
外食がバカ高い国に住むと、ツルっとそばを頂くとか、コンビニでおにぎりという選択がない。したがって外で食べなくてはならない場合、そしてスーパーの冷たいサンドイッチを夕食にするのはいささか心が寒々しくなるという場合、ハンバーガーあたりしか食べるものがないことが多い。またはピザか。
もう一生分バーガーとピザは食べたので、必要不可欠、生命を繋ぐためにはこれしかないという場合以外、ハンバーガーやピザは食べたくない。なので、一生私はこのバーガーを口にすることはないと思うし、そうあってほしい。

最後になったがこれが街の電飾だ。尿し抜けするほどシンプルだ。もっとも12月に入れば伝統の横に星が増えるとは思うけれど、それでも、大都市に見られる凝った電飾を思うと、至極素朴に抑えられている。過度に華美で煌びやかなものより、この程度ほんわかした感じの方がいいのかと思う。
ちなみに、まだこのクリスマスベルは下の部分しか光っていないけれど、クリスマス本番になるとベル全体が輝くようにはなる。
レイキャビクのクリスマス名物にしようと、クリスマス・キャットがこの時期になると登場する。こちらの電飾は伝統的なものではなく、インスタグラムに宣伝効果が出ることを知ると、観光局とレイキャビク市がやり始めた近年に出現したものだ。
今年はまだ見に行ってないので、去年の写真でご勘弁を。

クリスマス・ピープルの母親グリーラの飼い猫。猫の名前はまんまのクリスマス・キャット(Jólakötturinn)大人の言うことをきかない悪い子を喰ってしまう恐ろしい存在なので、かわいらしくない。
ちなみに13人のクリスマス・ピープルはレイキャビク市内各所のビルの壁に動画として映し出される。
子供の頃はクリスマスに憧れを抱いていたが、大人になり、バブル期のクリスマス狂想曲的な時代を垣間見てきたこともあり、現在はほとんど心を動かされない。
アイスランドでもクリスマスを大切な家庭行事としている人はいるし、全くそれは問題ない。いいことだと思う。私がこちらに拠点を移した当初は、夫のお姉さんが毎年クリスマス・ディナーを担当してくれていた。が、高齢につきそれが大仕事になってしまったためになくなった。
兄弟は多いけれど、誰も引き継がないのでそのまま断ち切れた。プレゼントは子供達だけにはあげて、大人へのプレゼントは廃止した(本当にありがたい!)。なので私はキリスト教国に住っていても、クリスマス鬱にならず済んでいる。
クリプレ、一族郎党ひとりひとりに差し上げるとなると、ひどく金額が嵩む。金額の前に何を贈るかに知恵を絞るし時間も食う。
それを思うにつれ、日本の正月の何と合理的なことか。お年玉は子供だけだし、金額こそ多少は迷っても、物品ではなく現金を渡せば済む。日本人、本当に賢い!!
とはいえ、アイスランドではない別の国でクリスマスを過ごすにも悪くないかなぁとも少し思っている。私は単なるあまのじゃくのようだ。
小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。
