具合が悪い、困った事が起きた、誰かを呼びたい! このようなときにボタンを押せば誰かが来てくれる。高齢者を介護しているとき、この環境をつくれるならば、つくっておくと安心だ。
90歳母の家と私の家は、150メートルほど離れている。何かあったときにボタンひとつで駆けつけたいと福祉用具会社の人に相談したところ、「呼出しチャイム」がありますと教えてくれた。
その「呼出しチャイム」は、180メートルは電波が届くというものだった。
1️⃣ 体調不良のとき、電話はかけられない
90歳母のことは以前より記事にしている。内耳に問題を抱えており、時折り、めまいを起こしている。とくにめまいを起こしたときは、電話をかける事はつらくてできない。
具合が悪いと以前は電話をかけてきたが、今年に入り、めまいに限らず電話をかけるという行為もつらくなり、私が見に行く頻度も増えた。その分、母に時間を割かなければならないので、私は自分の生活に費やす時間が減った。時間は減るが、やる事の量は変わらないので、つい苛ついてしまう。
そこで我が家では、ボタンを押せばチャイムが鳴るものが欲しいということになった。
2️⃣ これは便利だ!ところが・・・
呼出しチャイムはネット販売も調べたが、まずはいつもお世話になっている福祉用具会社の方に訊いてみた。介護保険でレンタルできるかもしれないと考えたからだ。介護に関わる物は、まず初めにケア・マネージャーに伝え、福祉用具会社の人に相談するのが良い。
レンタルではありませんが、呼出しチャイムならありますよ。福祉用具会社の人に価格を聞くと、3000円ほどだったので購入を決めた。ただ、購入する前にお試し品を勧められたので福祉用具会社の人の言う通りにした。何事もプロの言う事を訊くに限る。

縦横8センチほど、厚みは3センチ

チャイムの音量、音色が変えられる
福祉用具会社の人が持ってきた呼出しチャイムは、180メートルほど電波が届くものだった。150メートルほど離れた母の家でボタンを押してみると、5秒後くらいに我が家で鳴った。

紐が付けられるようになっている
これは便利だ、これは素晴らしい、この世にこれほどの機能を備えた物があるかと感動しながら何度かボタンを押し、我が家でチャイムが鳴るのを確認した。
この時代にこんな事で感動するなんてと思うだろうが、困っていた事が解決できるとわかった時の喜びは、何にも代え難いものだ。
困ったときにボタンひとつで誰かが来るというのは、90歳の母にとっても良い変化だった。
使い始めてからしばらくは、問題は起きなかったが、秋も深まる頃に母から「ボタンを押したのに来なかった」と言われたのだ。そのとき、私は在宅していた。
緊急ボタンなのに鳴らない!これは一大事だった。
3️⃣ 冬になるとそんなことが起きるのか
母の家で呼出しチャイムのボタンを押してみると、「鳴らない」という夫の声がスマホから聞えた。3回に1度鳴ったり、3回押しても鳴らなかったり、気まぐれとしか思えない作動に振り回され、不安になった。
ボタンを我が家へ持ってきて押してみると鳴るのだ。これは距離が近くなったからに違いない、離れると鳴らないのは電池が弱ってきたのだろうと思い、ボタンとチャイムの両方の機器の電池を換えてみた。
そしてボタンを母の家まで戻し、また押す。「押したよ」、「鳴らない」私と夫のスマホでのやり取りが続く。電池を換えても駄目だったので、気持ちは絶望に傾いた。
そこでネット検索をしてみた。呼出しチャイム、鳴らない、無線、思い当たる検索ワードを入れた。出てきた回答の中で、寒さに因る機能低下と距離が遠い、この2点が当てはまるのではないかと考えた。電池は新品に交換したので当てはまらない。
早く手を打たないと母に何かあったときに困る。緊急時の対応に購入したのだから、緊急時に役に立たないのは絵に描いた餅だ。
早速、インタネットで中継器を調べると、同じメーカーから中継器が販売されていた。安い価格ではない、中継器を設置したからといって上手く行くとは限らない。迷ったが、夫と「命にかかわる事だよね」と意見が一致した。
翌々日に中継器が届いた。届くまでの間は、心なしか不安を抱き、心配が倍増するので困ったものだった。

中継器設置で電波状態良好
中継器を何処に設置すればより電波状態が良くなるのかを考えた末、我が家と母宅の間に叔父の家があるので、叔父の家に置かせてもらうことにした。初めは叔父宅の1階に設置したが、我が家での電波の受け取り状態が良好ではないため、中継器を叔父宅の2階へ移動した。そして受信器も我が家の2階に移動してみた。
2階に置いた方が障害も少ないのか、母宅でボタンを5回押してみると、5回とも我が家でチャイムが鳴った。命綱が繋がったような気持ちになった。
4️⃣ 介護で暮れて介護で明ける新年
2026年最初の記事も身近な介護の風景から始めることにした。
90歳母の在宅介護をしているので、介護で始まり介護で終わる一日となる。介護ばかりやっているわけではないので、本当に忙しい。「介護、やめたい」と思う時もあるが、介護を続けられるのは、介護経験者の夫が母の介護を分担してくれるからだ。介護だけではない、家事も分担してくれる。だから執筆も継続できる。
兄弟姉妹の中では、ひとりに介護を押しつけて、私は仕事があるから、私にも生活があるから、忙しいから、さらには排泄の世話は汚くて臭くて嫌だという理由で親の介護を手伝わない話は、よく耳にする。でも、いざ相続となると飛んでくる。
昨今、そのような生々しい話も多い。それらも介護のある風景なので、冷静に見聞し、記事にしたいと思っている。
2026年もよろしくお願い致します。
追伸
昨夜、午前1時35分、呼び出しチャイムが鳴った!
飛び起きた。
急いで母の家へ行き、ドキドキしながらベッドルームへ入ると、ポータブルトイレを使用しているところだった。
「お母さん、何かあったの?」と言うと、母は驚いた顔をしている。
「ボタン押したでしょ?」「押してない」と言う。押さなければチャイムは鳴らないが、トイレで起きる際に枕元にあるボタンを押してしまったようだった。無意識にやったので母は憶えていない。
「今何時?」「1時半過ぎ」「わからないで押しちゃったみたい、ごめんね、起こしちゃって」
転倒か、それとも・・・。やはり夫もドキドキしながら駆けつけてくれた。
何もなければそれで良し。良かった、良かった。
今夜は、鳴りませんように。
写真:橘 世理

橘 世理(たちばなせり)
神奈川県生まれ。東京農業大学短期大学部醸造科卒。職業ライター。日本動物児童文学賞優秀賞受賞。児童書、児童向け学習書の執筆。女性誌、在日外国人向けの生活雑誌の取材記事、記事広告の執筆。福祉の分野では介護士として高齢者施設に勤務。高齢者向け公共施設にて施設管理、生活相談を行なう。父親の看護・介護は38年間に及んだ。