デイサービスは行ってみないとその良し悪しがわからない。しかも良し悪し自体は人によるという事が多いので、一刀両断にできないところがある。しかし、今回はあえてそこを考えてみたい。
これから介護保険サービスを使ってデイサービスを利用しようとしている方、すでに利用しているけれどもしっくりこないという方の参考になればと思う。
※デイサービス(通所介護)とは、介護保険サービスのひとつ。要支援・要介護認定受けた人が利用できる。食事や入浴などの介護サービス、機能回復訓練(リハビリテーション)、レクリエーションなどが受けられる。1日または半日コースがある。
1️⃣ デイサービスの今とむかし
介護保険制度が始まったのは2000年。私が知る限りでは、開始から10年間ほどのデイサービスは、朝9時頃から夕方5時頃までその施設で過ごすというものが大半を占めていたと思う。体操、レクリエーション(折り紙、合唱、ゲーム、習字など)、食事、入浴というメニューが並んでいた。
このメニューを知った時には、それまでなかった制度だったので感心したが、見学に行った父は、「あんな幼稚な事ができるか」と憤った。高齢者への身体対応として考えられていたに違いないが、言われてみれば、幼稚園でやる事と大差ないものもある。
脳への刺激を与えるひとつの方法として、指先を使う折り紙などの工作は有効だ。だが、半身不随の障害者とはいえ、認知のしっかりしている父は馬鹿にされているという印象を持ったようだった。
ただ、デイサービスは、利用者だけのものではない。在宅介護をしている家族にとって、ほぼ一日、施設で預かってくれるのは魅力だった。介護から解放される時間を数時間でも手に入れられるのだ。昼寝をしたい、買い物へ行きたい、読書をしたいなど自分のやりたい事ができる。
ちなみに私の母は、デイサービスを見学しただけで通所しなかった父のせいで、その後、数年もの間、父の介護から解放される時間は持てなかった。
これも私が知る限りのことだが、私の生活圏でデイサービスの提供内容が豊富になったのは2015年辺りからだと思う。あったらいいなと思っていたデイサービスの半日コースを実施する介護事業所ができた。さらに身体の機能回復に特化した半日デイサービスが増えたことも嬉しかった。
現在では、それぞれの介護事業所が様々なメニューを用意し、デイサービスの内容充実を図っている。

デイサービスに行く日を書き込んでいる母
2️⃣ デイサービスの「特徴」それ自体が、選ぶ基準になる
日常会話にも「うちのおばあちゃん、デイサービスに行っているの」という話が聞こえてくる。「それ、何のこと?」と問う人は今はほとんどいないだろう。それほどデイサービスは世の中に定着した。
こうして事業所も増えていく中で、他の事業所と似たり寄ったりの事を提供していてはなかなか集客に繋がらない。デイサービスを提供する側は、選ばれることはあっても、利用者を選ぶということはほぼない。
デイサービス見学に行ったときに気にする事柄はいくつかある。衛生面、全体の雰囲気、スタッフの接し方、部屋の広さに対して利用者を何人入れているのか、まずはこれらをチェックする。その次に何に力を入れているのか、これも大事だ。
見学に行くと必ずトイレを借りることにしている。使う人数が多ければそれだけ汚れるのは当たり前であり、便座や床に排泄物が付着することも多い。そこをどれだけ気遣ってまめに清掃をしているかを見る。
衛生面では感染症対策のチェックも欠かせない。換気、マスクの着用、手指の消毒だ。コロナが5類になったとはいえいまだ感染は続いているし、インフルエンザや風邪など他の感染症もある。体力が低下している高齢者が感染すれば容易に悪化しやすいので、どれほど感染症対策にその施設が気を遣っているのかはとても気になる。
今回、母が通うためのデイサービスを決めたときには、高齢者の身体に負担をかけることの少ない油圧式のエクササイズ・マシンを数多く導入していることが決め手のひとつになった。そしてもうひとつ、最新式のミストシャワー・ルームだ。浴槽を跨ぐこともなく、湯疲れもないので、母には最適だった。
デイサービスの見学に同行した夫は、「マッサージ師のレベルが高い」と感心していたので、この点も好印象となった。実際に調べてみると、施設サービスの説明書には、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持つスタッフがマッサージを担当しているとの記載があった。
「スタッフの数が多いですね」と驚いていたのはケア・マネージャーだ。これは目が行き届くということになるので、安心材料の中でも大きなポイントとなった。場の雰囲気も明るく、開放的な感じだった。
デイサービスによっては、空気がどんよりと淀んでいるところもある。私は自分の直感を信じるので少しでも淀みを感じるところは敬遠する。

マッサージ用タオルなどを入れてデイサービスに持っていく
3️⃣ 契約時に利用規約を確認するようになった
契約時は、事業所の担当者が自宅に来て、ケア・マネージャーも同席して契約をする。その際には、契約書を余すところなく読み上げて、丁寧に説明をする。
今回、母のデイサービスの契約をする際に担当者に質問した事がひとつある。それは、以前のデイサービスでの不快な経験があったからだ。
「例えば、具合が悪い、怪我をしたなどでひと月、デイサービスを休んだら、解約になりますか?」私の質問に驚いた担当者は、「そんな事はありません」と強く否定した。
母は肋骨を骨折し、少しの間を置いて反対側の肋骨も折ってしまったことがある。そのときにはひと月近く通所ができなくなった。するとそのデイサービスを実施している事業所の担当者からケア・マネージャーへ「ひと月休んだ方は自動的に解約になる」という連絡があったのだ。
ケア・マネージャーはそんな話は聞いていないと憤り、私も同様に憤った。その出来事を、今回新しく契約をするデイサービスの担当者に問うてみたのだ。
「うちは半年や一年、休む人もいます。高齢者ですからね、体調も不安定です。ひと月休んだだけで契約解除だなんて、そんな話は聞いたことがありません」。
その回答に安心できたので、契約することに決めた。
ひと月休んだら自動解約すると通告してきたデイサービスの事業所は、母の都合が悪く休んだ翌日に、金曜日に空きがありますが来ませんか、という電話をかけてきたこともある。
このとき母は要支援だったので、デイサービスの利用料は定額制だった。休んでもひと月分の料金は支払うのだ。おかしな誘いだと思ったが、人数を常に定員にしておきたいという営業上の理由からの誘いだったのだろうと夫が呟いた。
介護事業所も料金を取って運営しているので商売という性質を持つ。しかし他の業種と異なるのは、そこに福祉の精神が根付いていなければいけないということだ。その精神が失われている介護事業所も残念ながら少なくはないと思う。
デイサービスを決めるとき、勿論、見学はとても大事だ。いくつかのデイサービスを比較することも必要だ。さらに利用規約の確認もした方が良い。こちらが不利になるような事、冷たい対応が当然のように文面に並んでいるかもしれない。介護保険サービスを提供する事業所だから、おかしな事をしないだろうと思わない方が良い。
そして、それらの点をクリアして選んだデイサービスが、その利用者にとって快適で安全な時間を提供することを願ってやまない。

楽しい話をするとき母の手に触れる
母はデイサービスから帰ってくると、その日体験したことを楽しそうに嬉しそうに、こと細かに話してくれる。私と夫はそれを聞いていつもにこにこしている。
写真:橘 世理

橘 世理(たちばなせり)
神奈川県生まれ。東京農業大学短期大学部醸造科卒。職業ライター。日本動物児童文学賞優秀賞受賞。児童書、児童向け学習書の執筆。女性誌、在日外国人向けの生活雑誌の取材記事、記事広告の執筆。福祉の分野では介護士として高齢者施設に勤務。高齢者向け公共施設にて施設管理、生活相談を行なう。父親の看護・介護は38年間に及んだ。