※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。
<目次>
1.「野党共闘の終焉」を言う鮫島さんへの反論
2.「消費税減税は間違いだった」と言う枝野さんへの質問
3.「立憲民主党」と「日本維新の会」による政権交代を目指すのか?
4.「2021年衆院選野党共闘」の「候補者調整」を振り返る
5.「与ゆ党体制」と「野党共闘」の行方について
6.トピックス:プリティ宮城ちえ宜野湾市議その後
1.「野党共闘の終焉」を言う鮫島さんへの反論
SAMEJIMA TIMES主筆の鮫島浩さんは、11月3日(木・祝)配信の動画で「野党共闘の終焉」に言及しました。
この動画の中で、鮫島さんは次のように述べています。
「市民連合というよく分からない市民の団体、そのリーダー格が山口教授でした。(中略)山口さんがリーダー的存在である市民連合が野党4党に声をかけて、みんなで手を結びましょう、これがここ数年の野党共闘だったんです。」
この「市民連合というよく分からない市民の団体」という言い方はかなり失礼ではないかと、私個人としては憤りを感じました。
「市民連合」とは何なのか、市民連合のホームページで市民連合自身が説明している内容を確認してみましょう。
市民連合とは
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(略称:市民連合)は、その名の通り、憲法違反の安保法制の廃止と立憲主義の回復を求め、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法に反対する学者の会」「安保関連法に反対するママの会」「立憲デモクラシーの会」「SEALDs」の5つの団体の有志の呼びかけによって2015年12月に発足した市民のプラットフォームです。
今日までに、全国200を超える各地域の市民連合やさまざまな政策課題に取り組む市民運動との強い連携を築き、さらにより広く、暮らしといのちを守る政治の実現を求めて立憲野党との共闘に取り組んでいます。
その「市民連合」に関して、鮫島さんは11月3日(木・祝)配信の動画の中で次のように述べています。
「(野党共闘の)旗を振った市民連合、これもやはり、最終的には立憲(民主党)を強くするために、いかに他の野党、共産(党)やれいわ(新選組)を引き寄せるか、ここに目的があったとしか見えないんですね。」
この言葉に対しても、私の思いとしては、やはり一言反論させていただきたいと思います。
「市民連合」自体は、「安保法制の廃止と立憲主義の回復」の実現を目的とする市民団体であり、そこに参加している市民の思いを一言で言うなら、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を実現するための政権交代」そして「政権交代を実現するための野党共闘」を願うものにほかなりません。
決して「他の野党を犠牲にした野党第一党の議席拡大(または議席維持)」を図るために作られた「よく分からない市民の団体」ではない、ということだけは申し上げておきたいと思います。
2.「消費税減税は間違いだった」と言う枝野さんへの質問
立憲民主党前代表の枝野幸男さんは、10月28日(金)配信の動画で「消費税減税を言ったのは間違いだった」と述べました。
この動画での枝野さんの発言の該当部分を書き起こしすると、次のようになります。
「去年、総選挙で私が後悔してるのは、時限的とはいえ、消費税減税を言ったというのは、私は間違いだった、政治的に間違いだったと強く反省をしています。」
この枝野さんの発言に対して、コメディアンの「せやろがいおじさん」は、次のように悲憤慷慨しています。
私個人の考えとしては、もし私が枝野さんに質問をする機会を持てるとしたら、是非この2つの質問をしてみたいな、というふうに思っています。
まず、1つめは、「消費税減税法案」への対応です。
実は、立憲民主党の枝野幸男さんは、野党が共同提出した「消費税減税法案」の賛同者に名を連ねているのですが、今後この法案に対してどのような態度を取られるつもりなのでしょうか?
次に、2つめは、昨年の衆院選の際に立憲民主党が掲げた「所得税実質免除」(年収1,000万円未満は所得税1年間ゼロ)の政策についてです。
私個人の感想ですが、昨年の衆院選の野党の敗因の中で、経済政策として一番問題があったのは、この「所得税実質免除」の政策なのではないかと思います。
消費税は逆進性の高い税なので減税すれば低所得者層に優しい政策になりますが、所得税は累進課税になっているので減税や所得税ゼロといった政策は高所得者層に優しい政策になります。
また、消費税は国民全員が大なり小なり負担している税金ですので減税を行えばみんなが何らかの恩恵を受けることができますが、所得税ゼロの政策はもともと所得税非課税の世帯にとっては何一つ恩恵のない減税策になります。
「消費税減税」(付加価値税の減税)は、コロナ禍による不況とロシアのウクライナ侵攻による物価高で苦しむ世界の多くの国で実施または実施が予定されているポピュラーな政策です。
長期的な国の税制を考えた場合に、消費税を廃止するか、税率5%でいくのか、10%がいいのか、15%にするのか、あるいは19%まで上げるのかといった議論は、立場によっていろいろだと思いますが、少なくとも今の状況で即効性があり有効な物価高対策としての「消費税減税」は、幅広い立場の人々から賛成が得られる政策だと思います。
枝野さんが昨年の衆院選に関して悔いるべきであったのは「消費税減税」ではなく「所得税ゼロ」ではなかったのではないでしょうか。
残念ながら私には枝野さんに直接質問できる機会はないので、質問の機会があるジャーナリストの方がいらっしゃれば、「消費税減税法案への今後の対応」と「所得税1年間ゼロの政策的な是非」の2つに関して、ぜひ見解を問い質していただければなぁ、と思っているところです。
3.「立憲民主党」と「日本維新の会」による政権交代を目指すのか?
立憲民主党が今後政権交代を目指す道筋に関して、立憲民主党の支持者の方々の考え方は、私がSNS上の議論を眺めた範囲では、およそ次の3つの方向性に大別できるようです。
A:立憲民主党・日本共産党・れいわ新選組・社会民主党の4党で共闘を進める
B:れいわ新選組を外して立憲民主党・日本共産党・社会民主党の3党で共闘を進める
C:立憲民主党・日本維新の会の2党で連携を進める
立憲民主党の支持者の方々がそれぞれどのくらいの割合でA~Cの方向性を望んでおられるのかははっきりしませんが、立憲民主党の執行部は「立憲民主党・日本維新の会の2党で連携を進める」という「C」の路線に舵を切ろうとしているようです。
9月17日と18日に行われた毎日新聞の世論調査によれば、「次の首相」アンケートに対する有権者の回答は次のような順位でした。
「首相になってほしい人」
1位:河野太郎 87人
2位:岸田文雄 66人
3位:石破茂 33人
3位:高市早苗 33人
5位:橋下徹 30人
6位:菅義偉 22人
7位:山本太郎 21人
8位:小泉進次郎 14人
野党系で名前が挙がっている人物は橋下徹さんと山本太郎さんの2人だけですので、例えば「立憲民主党と日本維新の会が共通の首班候補として橋下徹さんを担いで、地域ごとの住み分けによる連携で総選挙に臨み、政権交代を狙う」といった構想がアイデアとして浮かんできたとしても、決して不思議なことではありません。
しかし、仮にこうした手法で政権交代が実現したとしても「自公政権」から「立維政権」への政権交代は、国民生活の向上にはつながらない「なんちゃって政権交代」にしかならないのではないでしょうか。
例えて言うなら、日本国内で「アメリカ共和党」と「イギリス保守党」による二大政党制ができるようなもので、アメリカにおける「共和党」と「民主党」、あるいは、イギリスにおける「保守党」と「労働党」といった政策の異なる2党による二大政党制の政権交代とは違い、「どっちが政権を担当しても弱肉強食」という恐ろしい世の中になる姿が目に浮かびます。
4.「2021年衆院選野党共闘」の「候補者調整」を振り返る
さて、「2021年衆院選野党共闘」における「候補者調整」がどのようなものであったのか、ここで振り返ってみましょう。
小選挙区における候補者調整の多くは、市民連合が仲介する形で進められました。
市民連合が仲介するといっても、市民連合には候補者を選定する決定権があるわけではなく、市民連合はあくまでも政党どうしが話し合いを進める「触媒」のようなものに過ぎませんでした。
候補者調整がうまくいって一本化できた地域もあれば、調整がうまくいかずに野党候補どうしが競合し激突する選挙区が生まれた地域もありました。
概して言えば、「候補者調整」というのは、「いかに共産党の候補者を降ろさせるか」あるいは「いかにれいわ新選組の候補者を降ろさせるか」という方向性で進められたものがほとんどで、立憲民主党以外の政党にとってメリットがあったのは、共産党の赤嶺政賢さんが当選した沖縄1区と、社会民主党の新垣邦男さんが当選した沖縄2区の全国で2ヵ所だけ、しかもこの2つはいずれも「市民連合」が野党共闘を主導する以前からの「オール沖縄」の流れの共闘による小選挙区での勝利でした。
「2021年衆院選野党共闘」における「候補者調整」の過程で問題が起きた事例を挙げるなら、「東京8区問題」が挙げられます。
この「東京8区問題」に関して、立憲民主党の小川敏夫さんが次のような論考を書かれています。
2022.06.26
21年衆院選「東京8区問題」を反省せよ 毒か薬か立憲の共産党依存
小川敏夫
8区問題は、5区および7区と一体となった選挙協力の話だと前述した。
5区は立憲都連幹事長の手塚仁雄、7区は同会長の長妻昭の選挙区である。つまり、選挙協力の担当者である執行部が自分の選挙区のれいわ新選組の候補者擁立を取り下げさせるために8区の吉田の擁立を取り消す話をまとめたのである。
(中略)
これでは執行部が自分の利益のために選挙協力を利用したとの批判の声が上がるだろう。
(中略)
8区問題は立憲の危機であったが、立憲は山本代表の対応に救われた。
(中略)
山本代表が吉田の気持ちを尊重し、また、選挙前の野党間のごたごたをごたごたにしないで収めてくれたおかげで、8区は完全勝利した。また立憲は、吉田を強権で切り捨てるという恐ろしい蛮行をしないですんだ。
小川敏夫さんは2022年7月まで立憲民主党の参議院議員だった方で、民主党政権時代には野田政権の下で法務大臣を務められた経験もあり、今年の参院選を機に引退された方です。
従って、この分析は故意に立憲民主党を貶めるために書かれた文章ではなく、客観的に見た反省の文章として書かれたものです。
こうしたことをふまえるならば、2021年衆院選における候補者調整は、立憲民主党は野党全体の利益を考えるというよりもむしろ自分の党の利益を優先する形で調整を進め、立憲民主党内部においても党全体の利益を考えるというよりもむしろ執行部が自分自身の利益を優先する形で調整を進めた独善的なものであったと考えざるを得ないものです。
「市民連合」が発足した当初目指していたものから、実際の「候補者調整」の実態はどんどん掛け離れていってしまいました。
鮫島さんが11月3日(木・祝)配信の動画で述べた「(野党共闘の)旗を振った市民連合、これもやはり、最終的には立憲(民主党)を強くするために、いかに他の野党、共産(党)やれいわ(新選組)を引き寄せるか、ここに目的があったとしか見えないんですね。」という見解は、分析としては当たっていると言うほかないと思います。
5.「与ゆ党体制」と「野党共闘」の行方について
今後の「野党共闘」の行方について、SNS上にはこのような予測があります。
私も「野党共闘は深化した」さんが指摘している「2 野党共闘終了は曖昧なままで維新と組む」という方向で推移するのではないかという気がしています。
そして、野党第1党の立憲民主党と野党第2党の日本維新の会が与党の自民党と公明党に急速に接近している現在の状況について、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志さんは次のように述べています。
SAMEJIMA TIMES主筆の鮫島さんも指摘しているように、自民・公明・立憲・維新の4党が「与ゆ党体制」を構築して、政治の意思決定の枠組みをこの4党で進めていく方向で動いていこうとしています。
果たしてこの「与ゆ党体制」の枠組みがどこへ向かっていくのか、まずは「旧統一教会の被害者救済に向けた法案」の行方が注目されます。
立憲と維新が協議に加わることによって「実効的な被害者救済法案」が出来上がるのか、あるいは統一教会に打撃を与えることも被害者を実際に救うこともできない、形だけの「なんちゃって救済法案」を作る方向に進むのか、その内容を注視していくことが大切です。
中島教授はアカデミズムの立場から、鮫島さんはジャーナリズムの立場から「与ゆ党体制」という上品な言葉を使っておられますが、私流の下品な言い方で言えば、自民・公明・立憲・維新は、この4党で「同じ穴の狢」ならぬ「同じ壺の狢」(おなじつぼのむじな)になろうとしているのではないかという気がしてなりません。
ここで、統一教会と各政党の議員の関わりの状況を改めて確認します。
旧統一教会関連団体と関係があった現職国会議員168人の内訳
所属 | 衆議院 | 参議院 | 合計 |
自由民主党 | 103 | 29 | 132 |
日本維新の会 | 9 | 7 | 16 |
立憲民主党 | 13 | 1 | 14 |
国民民主党 | 2 | 0 | 2 |
公明党 | 2 | 0 | 2 |
参政党 | 0 | 1 | 1 |
無所属 | 0 | 1 | 1 |
合計 | 129 | 39 | 168 |
鈴木エイト「自民党の統一教会汚染追跡3000日」(小学館)より作成
自民・維新・立憲・公明の4党の「壺汚染度」(現職国会議員のうち旧統一教会関連団体と関係があった国会議員の割合)を計算してみると、自民党が35%、維新が26%、立憲民主党が10%、公明党が3%という割合になります。
直観的に捉えるなら、自民党には3人に1人以上の割合で「壺議員」がいて、維新には4人に1人以上の割合で「壺議員」がいて、立憲民主党には10人に1人以上の割合で「壺議員」がいるという計算になります。
立憲民主党の支持者の方々は、「自民党や維新の壺汚染度は深刻だが、立憲民主党は微々たるものではないか」と考えられるかもしれませんが、問題は、この「1割」が立憲民主党の上層部にいるということです。
党の方針を上層部が決める以上、結果的に立憲民主党全体が「統一教会が望む政策」を知らず知らずのうちに推進してしまう危険性があるのではないかと危惧するわけです。
また、公明党は、創価学会という支持母体がありますので、統一教会の考えに染まる心配はないと一般的には思われるかもしれませんが、ところがそう安心はできないのではないかという状況も現実にはあります。
ジャーナリストの鈴木エイトさんが出版した「自民党の統一教会汚染追跡3000日」(小学館)に、次のような記述があります。
自民党自体がマインドコントロール下に
一方で、統一教会が採る巧妙な手法は政治家個人のみならず、自民党という集団に対してもある種のマインドコントロール下に置いていたことも想定される。多くの政治家に「反社会的な団体と関係を持っていた」との認識がないのは、マインドコントロールの手法上あり得ることだ。被害者への自己責任論が専門家から否定されるように、政治家の資質ばかりを問うと、巧妙なマインドコントロールの本質が見えなくなる点にも注意が必要だ。
この記述の「自民党」という文字を、「維新」や「立憲民主党」や「公明党」に置き換えて考えるなら、最悪の場合、自民・公明・立憲・維新による「与ゆ党体制」の枠組みが、丸ごと統一教会にマインドコントロールされた「同じ壺の狢」になってしまう危険性もあるというふうに見ておく必要があるのではないでしょうか。
もちろん、「自民・公明・立憲・維新の4党が丸ごと統一教会にマインドコントロールされる」という物の見方に対しては、「それは陰謀論ではないか」と反論される方も多いだろうと思います。
統一教会と接点のあった議員の中にも、特にマインドコントロールを受けていない議員の方はいらっしゃることでしょう。
しかし、統一教会と接点を持つ中で、最初は「統一教会を利用していた」はずが、いつの間にか「統一教会に利用される」ようになり、そのことに本人は全く気づいていない、といったケースがある可能性も、これは否定できないのではないでしょうか。
後から振り返ってみた時に、私が述べた「同じ壺の狢」という概念が「馬鹿げた陰謀論」として一笑に付されるようになるなら、私としては、こんなに嬉しいことはありません。
本当に最悪の状況として、「同じ壺の狢」という概念が現実を読み解くキーワードになってしまうことがないよう、強く願いたいと思います。
特に、立憲民主党の良識派の議員や支持者の方々には、党の上層部がおかしな方向へ向かわないように、しっかり注視したうえで、もし必要があれば、上層部の示す方針に勇気を持って異を唱えていただきたいと思います。
もしそのことが叶わずに、自民・公明・立憲・維新の4党の枠組みが統一教会の望む政策を実現する「同じ壺の狢」というものに堕してしまうとするなら、市民が立憲民主党と共に歩んできた「野党共闘」には終止符を打たなければならない、という実に残念な結論に至ることになります。
6.トピックス:プリティ宮城ちえ宜野湾市議その後
今日のテーマの話はここまでにして、最後に、れいわ新選組を離党した宜野湾市議会議員のプリティ宮城ちえさんに関して、その後の状況を見ておきたいと思います。
プリティ宮城ちえさんは、マルチ商法を教え子に紹介したという疑惑に関して、記者会見を開いて説明を行ったようで、「れいわと共に歩むパトリオット☆山本太郎と共闘!」さんがtwitterで所感を述べています。
また、れいわ新選組代表の山本太郎さんは、今回のプリティ宮城ちえさんの離党騒ぎの件で、宜野湾市の一般の方のお宅に謝罪して回っているそうです。
精一杯の対応をしようとしているれいわ新選組の姿を、今後も見守り続けていきたいと思います。
憲法9条変えさせないよ
プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。