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立憲野党私設応援団(47)秋の夜長の経済本読書のすすめ(その2)「ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう」〜憲法9条変えさせないよ

※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。


<目次>

1.わかりやすい「魔法の浴槽」という例え

2.「MMT」(現代貨幣理論)と「インフレ」(物価上昇)の関係

3.「雇用保証」(JG)か「ベーシックインカム」(BI)か

4.「国民皆保険」は日本人には「あたりまえ」アメリカ人には「夢のシステム」

5.「ベネズエラ化」の懸念を払拭できるか?

6.トピックス①:2023年10月11日藤井聡太「八冠」達成

7.トピックス②:皇紀2683年10月17日「百田新党」発足


1.わかりやすい「魔法の浴槽」という例え

読書の秋におすすめの「経済本」を3冊ご紹介するシリーズの第2回、今回ご紹介する本は、スコット・サンテンス(著)朴勝俊(訳)『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』(発行:那須里山舎、印刷・製本:シナノパブリッシングプレス、2023年)です。

「ベーシックインカム」(BI)と「MMT」(現代貨幣理論)をテーマにした経済本ですが、まず、「MMT」について、この本ではこのように説明されています。

ひとつの浴槽を想像してください。私たちの目標は、お湯をあふれさせずに、できるだけこの浴槽を満タンにすることです。浴槽に注ぎ込むお湯は政府の支出を、排水口から流れ出すお湯は徴税を表しています。この浴槽は経済を表現していて、ここからお湯があふれることはインフレ(物価上昇)を意味します。注ぎ込まれるお湯の量が、流れ出す量よりも多ければ、水位が上がります。財政赤字とはこのようなもので、支出の方が税収よりも多いということです。そして、政府の赤字は民間の黒字です。均衡予算とは、お湯の流入量と流出量を一致させ、水位を一定に保つことです。浴槽が満杯ならば、そうした方がよいでしょう。でも、そうでない場合は、お湯を注ぐ量を増やすか、抜き取る量を減らすかして、浴槽を満杯にする方が合理的です。

(中略)

ただし、この浴槽にはもうひとつ重要な特徴があります。これはただの浴槽ではありません。どんどん大きくなっていく、特別な浴槽なのです。お湯を張ると、浴槽が膨らみます。浴槽は、いわば「適応する複雑系」であり、進化するものなのです。

(中略)

インフレの話をするときは、必ず産出量ギャップの話もするべきです。これは実際のGDPと潜在的なGDPの差(つまり浴槽に入っている湯量と満タンに入りうる湯量との差)と定義されます。インフレは、単純にお湯の量が多すぎることの結果ではありません。浴槽の最大成長率に基づいて、入れる湯量と抜き取る湯量を考慮した上で、なおかつ入れる湯量が多過ぎることが原因なのです。重要なのは、注ぎ込むお湯の量を増やしても、浴槽が成長すれば、必ずしも溢れるとは限らないということです。余分に注がれたお湯は浴槽を成長させるので、注ぐ量を成長速度に合わせれば、満杯の状態を維持しながら浴槽を大きくしてゆけるわけです。これが本当の意味での、理論上の100%の経済能力です。

「適応する複雑系」という用語は難しいですが、この本では国民経済を「お湯を張ると膨らむ魔法の浴槽」として捉えていて、経済成長のイメージを分かりやすく説明していると思います。

成長するアメリカ経済のことを考えるならこの説明だけで十分だと思いますが、衰退する日本経済について検討する場合には「お湯が減ると縮む魔法の浴槽」という逆のイメージで捉えることも必要なのではないかと、個人的には考えています。

2.「MMT」(現代貨幣理論)と「インフレ」(物価上昇)の関係

次に、「MMT」(現代貨幣理論)と「インフレ」(物価上昇)の関係について、この本ではこのように説明されています。

全ての人々に毎月おカネを届けるために、赤字財政によって現金を「印刷」すれば、物価上昇につながると心配されています。それに関して考えるべき最後の重要な点は、物価上昇そのものが本当に損害をもたらすのか、誰にとって損なのか、ということです。物価上昇が恐れられているのは、おカネの価値が下がるからではなく、おカネの価値が下がる結果として、モノを買う力(購買力)が落ちるからです。(中略)

ロン・ポールさんのような自由至上主義者は、インフレは「見えない税金」だと言いふらしています。(中略)住宅ローンを抱えている人の場合を考えてみましょう。ローンを返済する時には、最初に借りた金額よりも、実質的に少ない金額の返済でよいことになります。そう、実は借金を抱えている人にとってインフレは有利なのです。では、インフレが起こると同時に、おカネ持ちを含むすべての人々に、新しく創造されたおカネが同じ金額ずつ配られるならば、損をするのは誰でしょうか。そうです、それは、おカネ持ちの人たちです。

(中略)BIが与えられる場合には、「見えない税金」はおカネ持ちだけにかかります。全ての人々にかかるわけではありません。

基本的な考え方として、「インフレは借金を抱えている人に有利にはたらき、おカネ持ちの人たちにとっては損になる」という捉え方をしています。

3.「雇用保証」(JG)か「ベーシックインカム」(BI)か

さて、この本で取り上げられているもう一つの重要なテーマは「ベーシックインカム」(BI)で、「MMT」で生み出したおカネを何に使うべきなのかという点について語られています。

比較されているのは、政府による「雇用保証」(JG)か、それとも、全員におカネを支給する「ベーシックインカム」(BI)か、という点です。

ステファニー・ケルトンさんは『財政赤字の神話』という著書の中で、MMTにおける課税の役割を理解する上で、とても重要なきっかけとなったエピソードを紹介しています。ウォーレン・モズラーさんの自宅で、彼が、貨幣の創造に関するちょっとした実験について話してくれたというのです。彼は、自分の名刺をたくさん持っていたので、家事をしたごほうびとして、これを子どもたちに与えることにしました。もちろん名刺など、子どもたちには何の価値もありませんし、家事のインセンティブにもなりません。そこで彼は子どもたちに、毎月決められた枚数だけ名刺を返却しなければ、楽しんでいるビデオゲームや携帯電話などを取り上げると言いました。すると突如として、子どもたちは名刺を求めて、一生懸命に家事をするようになったと言います。

これは、おカネに価値を与えるのは課税だということを説明する物語です。しかし、MMT支持者の多くが認識していないと思われるのは、彼らが今お気に入りの雇用保証(雇用されたい人に政府が雇用を保証する政策、Job Guarantee, JG)よりも、むしろBIの重要性を説明するのに、この物語が役立つということです。

モズラーさんの子どもたちは、明らかに、基本的な必要が満たされていました。そして、自分たちが楽しんでいる贅沢品のために働くか、働かずにその贅沢品を失うかという選択肢を与えられたのです。子どもたちは、働かなくても基本的ニーズが満たされ、部屋の中で食べたり寝たりできる選択肢があったにもかかわらず、贅沢品のために働くことを選んだわけです。モズラーさんは、もし子どもたちが家事を拒否したら、食事を与えず、家から追い出すとまでは言っていません。もし、そんなことをしたら、誰だってそれを虐待だとみなすでしょう。しかしBIがない社会で、JGだけが存在する場合には、まさにそのような状況になります。なぜなら誰もが、モズラーさんの子どもたちのように必要が満たされた上で欲しいもののために働くのではなく、生き残るためのニーズを満たすために働くことになるからです。

(中略)BIがなくてJGがある状態は、基本的なモノを取り上げられた人々が、おカネのために働くか、困窮するかという「選択」を迫られる、とんでもない状態です。これは本当の選択ではありません。

(中略)

つまりBIがなければ、JGはいわゆるブルシット・ジョブの問題を抱えることになります。

デヴィッド・グレーバー氏が定義した「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」とは、「完全に無意味で、不必要で、悪質な有給雇用形態で、従業員がその雇用条件の一部として意味があるふりをする義務があると感じていたとしても、その存在がどうしても正当化できないようなもの」です。調査によると、被雇用者の15%から40%が、自分はそのような仕事をしていると考えているようです。

(中略)

もし無意味なJG雇用か貧困か二つに一つを選べと言われたら、ほとんどの人は貧困を避けるために、どんな無意味な仕事であっても雇用の方を選ぶでしょう。しかし、BIと無意味なJG雇用との二者択一ならば、ほとんどの人はBIを選ぶだろうと私は思います。

この本においては、「ベーシックインカム」(BI)があれば、人々は「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」から解放され、給料をもらって働くにせよ、無償のボランティア活動に従事するにせよ、あるいは、全く何もしないで過ごすにせよ、本当の意味で「自由」に選択することができるようになる、と考えているようです。

ちなみに、れいわ新選組の街宣やおしゃべり会での山本太郎さんの受け答え等を見る限りでは、山本太郎さんは全員に現金を給付する「ベーシックインカム」(BI)よりも、「公務員を増やして雇用の受け皿とする」であるとか、「全国一律最低賃金1,500円」であるといったような「雇用保証」(JG)的な政策に重きを置いているように感じられます。

「ベーシックインカム」(BI)に関しては、日本では新自由主義的な立場の竹中平蔵さんがそれを主張しているということがあり、一種の「ねじれ」現象が起きてしまっています。

4.「国民皆保険」は日本人には「あたりまえ」アメリカ人には「夢のシステム」

「ベーシックインカム」(BI)と「MMT」(現代貨幣理論)というメインテーマ以外に、この本では「国民皆保険」についても議論されています。

医療についても考えてみましょう。MMTは、おカネが問題ではないのだから、国民皆保険(Medicare for All)は実現できると明言しています。問題はまさに資源です。医師や看護師は足りているでしょうか。十分な医療機器があるでしょうか。既存のシステムでは、多くの人たちが管理面で時間を費やしていて、非生産的で無駄なことがたくさんあります。現在のやり方では、医師が実際の医療よりも、医療保険関係の業務に多くの時間を割かないといけないので、実のところ診療時間の供給が減っています。医師は、患者と接する時間よりも、事務処理に費やす時間の方が2倍も長いと報告されています。つまり、この手の事務仕事を完全になくすことは、お医者さんの人数をすぐに3倍にするような意味があるのです。

医療保険の職員も、他のもっと生産的なことをする代わりに、事務仕事に時間を費やしています。本当のところ、シングル・ペイヤー制度に移行すべきだという議論に対しては、たくさんの事務仕事がなくなることが心配されているのです。

(中略)

ですから、国民皆保険制度はもちろん実現できますし、これが税金の問題だと考えるのは馬鹿げています。これはこの国にある資源の絶対量の問題なのです。そしてそのリソースが、人々の時間を信じられないほど非効率に使わせることによって、わざわざ無駄にされているということなのです。

本文の中で出てくる「シングル・ペイヤー制度」という用語に関しては、朴勝俊さんによる「訳注」で、次のように説明されています。

日本などの医療制度では単一の支払い基金によって、医療費の審査と保険会社への請求、医療機関への支払いが行われています(参考:社会保険診療報酬支払基金HP、https//www.ssk.or.jp/kikin.html)。これをシングル・ペイヤー制度と言います。これに対して、米国の医療制度は、こうした業務を行う機関が複数並立するマルチ・ペイヤー制度です。これが米国医療制度の不公平性や非効率性、医療費高騰の原因の一つと指摘されており、国民皆保険の実現と合わせて議論の的になっています。

日本人の目から見ると「国民皆保険」は言わば「あたりまえ」の制度ですが、アメリカ人の目には「夢のシステム」として映っているようで、「シングル・ペイヤー制度」が実現している点も含めて、日本の医療制度はアメリカの医療制度と比較すると「効率的な医療制度」だと捉えることができるようです。

ところが、自民党政府はわざわざ「マイナ保険証を導入」して「紙の保険証を廃止」することを決め、「国民皆保険」という良質な制度を毀損するような振る舞いをしています。

アメリカの状況から考えた場合、確かに「国民皆保険」制度をぶっ壊すようなことをすれば、一部の企業にとっては大きなビジネスチャンスが生まれるのだろうということは容易に想像できます。

しかし、それは、多くの国民にとっては「安心して医療サービスを受けることができる」という状況を一部または全部「ドブに捨てる」ようなものであり、決してそれを許すことはできないという思いを強くします。

5.「ベネズエラ化」の懸念を払拭できるか?

「MMT」に基づく「積極財政」政策に関して、私個人としては大いに期待をしている立場なのですが、その一方で、一抹の不安を感じているという立場でもあります。

それは何かと言えば、「積極財政」政策によって「ベネズエラ化」がもたらされるのではないか、という懸念です。

SNS上においては、そうした「ベネズエラ化」の懸念に関して、話題に上ったことがあります。

「MMT」によって生み出されたおカネが「国内の財またはサービスに対する需要」に向かえば「GDPの拡大」に寄与して景気が良くなりますが、「海外の財またはサービスに対する需要」に向かえば「輸入の拡大」を通じて「GDPの減少」をもたらすことになります。

そのことに関連する記述として、『ベーシックインカム×MMTでお金を配ろう』の本では、次のようなことが書かれています。

真の最大キャパシティに達するまでに、政府の蛇口から浴槽にお湯をどれだけ注ぎ込むことができるでしょうか。1番目に考えておくべき重要な点は、浴槽がもうひとつあるということです。それを外国の浴槽と呼びましょう。アメリカの浴槽に入ってくるお湯よりも、外国の浴槽に出て行くお湯の方が多いと、貿易赤字になります。貿易赤字は本質的にみれば、よその浴槽へとお湯が逃げてゆくことなので、物価下落を引き起こすもの(デフレ的なもの)です。外国の浴槽にお湯が流れれば、アメリカの浴槽のお湯が減るというわけです。

ただし、この本では「外国の浴槽に出て行くお湯」のことに関して、これ以上詳しい議論はされていません。

アメリカの場合には、仮に「積極財政」で「財政赤字」と「貿易赤字」という「双子の赤字」を生み出したとしても、基軸通貨国として「ドルを刷る」ことで問題が解決してしまうので、これ以上何か検討を行う必要はないのでしょう。

しかし、日本の場合には、「財政赤字」と「貿易赤字」という「双子の赤字」が生み出された場合には、「経済の悪化」と「悪い円安」というマイナスの影響が出て、最悪の場合には「ベネズエラ化」してしまうのではないか、という懸念もあります。

例えば、アメリカ製の兵器を爆買いするための防衛費増額は、財政収支と貿易収支を共に悪化させる「悪手」であり、このようなことが何年も、あるいは何十年も続くようであれば、日本経済の「ベネズエラ化」をもたらすかもしれません。

ちなみに、ここで「ベネズエラ化」と言っているのは、財政赤字で経済が破綻寸前の状況に陥った数年前のベネズエラの状況のことを指していまして、産油国であるベネズエラの経済状況は、ここ最近では原油高がもたらす好影響によって持ち直してきているそうです。

いずれにしても、「MMT」によって生み出されたおカネが「海外の財またはサービスに対する需要」に向かった場合の「輸入の拡大」と「GDPの減少」に関する問題については、どこかできちんとした検討を行う必要があるのではないかと思います。

私が調べた範囲では、そのことに関して識者によって学術的な検討が行われた論文や書籍などを見つけることができませんでしたので、それに関して詳しいことをご存じの方がおられましたら、コメント欄にでも情報をいただければ幸いです。

6.トピックス①:2023年10月11日藤井聡太「八冠」達成

2023年10月11日(水曜日)にウレスティン都ホテル京都で行われた将棋第71期王座戦第4局で藤井聡太名人が永瀬拓矢王座を下し、通算3勝1敗として王座のタイトルを獲得、八冠を達成しました。

7.トピックス②:皇紀2683年10月17日「百田新党」発足

かつて放送作家あるいは小説家として活躍した百田尚樹さんが政界に進出し、いわゆる「百田新党」(正式名称「日本保守党」)を立ち上げました。

「X」(旧twitter)の「日本保守党(公式)」のアカウントは30万以上のフォロワー数を誇り、SNS上では自民党などの既成政党を凌駕する勢いで、注目を浴びています。

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憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。

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