私が朝日新聞社を辞めて小さなメディア『SAMEJIMA TIMES』を創刊したのは2021年。初年はウェブサイトで連日記事を無料公開することに全力を挙げた。
2年目は初の単著『朝日新聞政治部』を上梓し、政治解説動画の制作に挑戦してYouTubeに進出した。新聞記者として取材・執筆に30年近く明け暮れてきたが、動画には活字をはるかに超える波及力があると痛感した。これからの時代のジャーナリズムには動画制作のセンスが不可欠であろう。
そして3年目。大胆な子ども支援を達成したうえで明石市長を4月30日に退任し、「明石にできたことはどこででもできる」として全国に活動を広げることをめざす泉房穂さんと対談した共著『政治はケンカだ!明石市長の12年』(講談社)を発行するにあたり、政治家・泉房穂の実像に迫るドキュメンタリーの制作に挑戦した。
与野党、議会、役所、業界、マスコミを歯に衣着せぬ物言いで滅多切りにする対談の様子に加え、泉さんが生まれ育った明石市二見町の漁師町を一緒に訪れ、「誰一人見捨てない」という政治理念の原点に迫る内容である。本と合わせてご覧いただければ「面白さ二倍」だ。
新聞記者時代はまさかドキュメンタリーを自力で制作することになろうとは思いもしなかった。
朝日新聞社を退社した直後に、私の高校時代の同級生である立憲民主党の小川淳也衆院議員を追うドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を制作した大島新監督にトークイベントに誘われ、映像の力の大きさを痛感した。小川議員はあの映画で全国的な知名度を獲得し、2021年秋の衆院選香川1区で勝利し、政調会長のポストもつかんだのである。
出版、ネット記事、動画、SNS、イベント…。これからのジャーナリストは、取材・分析の結果をあらゆる手段を駆使して伝える力が問われている。多くの読者や視聴者に届かなければジャーナリズムの意味はない。そこが学者や研究者と違うところだ。
とくに政治ジャーナリズムは現実世界に影響力を持ってこそ存在意義がある。投票率の低迷が自民党政権を延命させて日本の政治を停滞させている大きな要因である以上、政治的無関心層に「わかりやすくて飽きさせない動画」でアプローチすることは絶対に必要だ。政治報道には硬派なジャーナリズムと幅広い層の関心を引き寄せるエンタメの双方が求められると私は思っている。
動画進出はジャーナリズムにとって喫緊の課題であり、そこに出遅れたのが新聞社凋落の致命傷だといえるだろう。
まだまだ未熟ではありますが、初めてにしてはいい具合に完成したと自負しています。鮫島タイムスのドキュメンタリー第一作。20分弱です。ぜひご覧ください。
泉さんもさっそく視聴してくれたようです。明石市長退任の夜にドキュメンタリーを公開できて、よかった。