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日テレ「党員調査」が示す総裁選のリアル―小泉優勢と高市の逆転条件

自民党総裁選に向けて、永田町を揺るがす「爆弾データ」が飛び込んできた。日本テレビが独自に実施した党員調査である。結果は小泉進次郎が1位(32%)、高市早苗が2位(28%)。世論調査よりも投票行動に直結するこのデータは、総裁選の行方を占う上で決定的な意味を持つ。果たして進次郎は逃げ切れるのか、それとも高市が奇跡の逆転を果たすのか。


党員調査の特殊性と影響力

今回の総裁選で投票できる党員は全国で約91万人。人口比では1%に満たない小集団だが、第一回投票での影響力は絶大だ。

日テレは「党員と答えた人に電話調査をした」と説明しているが、無作為抽出で党員を探すのは現実的ではない。おそらく党員名簿を独自に入手しているとみられる。そのため、この調査は「自民支持層」ではなく「実際に票を持つ党員の意識」に迫っている。

実は昨年の総裁選でも同様の調査を実施しており、石破が28%、小泉18%、高市17%という結果を示した。最終的に高市が石破を逆転したが、それは告示後の論戦やテレビ露出を通じての追い上げによるものだった。つまり今回も「告示後の伸びしろ」は残されている。


小泉優勢のカラクリ

今回の調査を票数に換算すると、小泉95票、高市83票、林45票、小林19票、茂木13票。「まだ決めていない」が40票である。

この数字が意味するのは、第一回投票での小泉優位が揺るがないという現実だ。国会議員票では小泉が圧倒的に強いため、「党員の反発を恐れて高市に乗り換える」議員は少ない。

高市が勝つ唯一の道筋は、党員票で小泉を圧倒し、決選投票で議員を引き込むことだ。だが仮に「未定票」40票がすべて高市に流れても得票は4割止まり。過半数の5割には届かない。逆転には「小泉票の切り崩し」が不可欠だ。


石破票の行方がカギ

世代別に見ると、小泉は40代、70代、80代でトップ、高市は50代、60代に強い。支持基盤の厚みでは小泉に分がある。

さらに注目すべきは、前回石破支持層の動向だ。今回は41%が小泉、21%が林、11%が高市を支持。石破票の受け皿は小泉であり、高市にはほとんど流れていない。

小泉失速のシナリオとして林の浮上が考えられるが、石破支持層の多くがすでに小泉に流れた現実を踏まえると、高市にとっては苦しい展開である。


「必要なこと」と「連立相手」が映す趨勢

調査では「今の自民党に最も必要なこと」についても質問があった。
1位は「野党と連携し政権を安定させる姿勢」(25%)、2位は「世代交代」(23%)。いずれも小泉の強みを裏付ける回答である。

さらに「連立相手として望ましい政党」では、維新が28%でトップ。国民27%、立憲11%と続く。維新との連携を想定させる小泉像が、党員心理と合致している。対照的に、高市が掲げる「伝統や習慣を守る姿勢」は10%にとどまり、存在感を示せていない。


高市を追い詰める「時間」と「党員減少」

高市にとって最大の敵は、実は時間だ。今回の総裁選は石破退陣に伴い告示から投票までが3日短縮されている。さらに郵便事情の悪化で、期日前に投票を済ませる党員が増えている。告示後に巻き返す余地は、極めて限られる。

加えて党員数そのものが昨年より14万人減少している。背景には党費納入条件の厳格化に加え、石破政権への反発で党員離れが進んだことがある。高市支持だった層が党員を辞め、国民民主や参政党に流れた可能性も指摘される。

こうした構造的要因が、高市の逆転をさらに難しくしている。


小泉逃げ切りか、それとも…

現時点で見れば、小泉の逃げ切りシナリオが最も現実的だ。守りを固め、失言を避ける限り、優位を崩される要素は少ない。高市が逆転するには、小泉が大きな失点を犯すか、林が急浮上して決選投票の構図が変わるといった「外乱」が不可欠である。

総裁選は最後まで何が起こるかわからない。だが少なくとも日テレ党員調査は、現時点での「党員のリアル」を如実に示している。