立憲民主党と公明党が新党を結成した。
マスコミはさっそく「政権交代の可能性」を煽っている。だが、私はまったく逆に見ている。この新党は、失速する。
理由は単純だ。野党に転落した公明党の集票力は、すでに大きく落ち込んでいる。その現実を、マスコミの試算はほとんど織り込んでいない。
新党の得票は、前回の立憲と公明の合計を、かなり下回る可能性が高い。
新党の名前は「中道改革連合」。投開票日と目される2月8日まで、あと3週間しかない。この短期間で、有権者に名前を浸透させるのは至難の業だ。
しかも、この新党は完全な合流ではない。立憲の衆院議員148人、公明の衆院議員24人が新党に参加する一方で、立憲民主党と公明党という政党そのものは存続する。参院議員と地方議員は元の党に残る。
つまり、2つの党が1つになるのではなく、「2つの党が3つになる」という極めてややこしい形だ。
比例用紙に「立憲」や「公明」と書けば無効票になる。「民主党」と書けば国民民主党の得票になる。混乱は避けられない。
なぜ、すっきり一本化しなかったのか。
理由は明白だ。総選挙に惨敗しても、いつでも元の党に戻れるよう「退路」を残したからである。覚悟を決めきれない半身のスタートだ。
立憲にも公明にも、新党結成にはトラウマがある。
立憲は2017年の「希望の党」騒動。合流を決めたものの、リベラル排除で空中分解し、惨敗した。
公明党は1996年の新進党。衆院議員だけが参加し、敗北後に解党、結局元の公明に戻った。
今回も成功する保証はない。だからこそ、元の党を残した。だが、その中途半端さが、有権者に伝わらないはずがない。
新党の主導権を握っているのは、明らかに公明党だ。
党首会談後の会見で、野田代表は寡黙だったが、斉藤代表は饒舌だった。斉藤氏は「公明党が掲げた5つの柱に賛同する人が集まった」と繰り返し強調した。立憲の看板ではない、公明主導の新党だというメッセージである。
さらに斉藤氏は、「自民党と全面対決する党ではない」と明言した。
高市政権の右傾化に対抗する「中道のかたまり」をつくるのであって、自民党を倒し、政権交代を目指すわけではないという。
これは、政権交代を旗印にしてきた立憲の立場と真っ向から矛盾する。それでも野田氏は、この路線を容認した。
立憲は、政権交代の旗を事実上、下ろしたのである。そこまで追い詰められていた、ということだ。
今回の合意の核心は、公明党の小選挙区完全撤退にある。
すべての小選挙区を立憲に譲り、公明は比例に集中する。その代わり、比例名簿の上位を確保する。斉藤代表にとっては、これ以上ない「勝利」だ。
だが、問題は票だ。
マスコミは、公明票が丸ごと立憲に流れ、小選挙区が次々と逆転すると試算している。だが、それは甘い。
公明票の中心は創価学会票だ。学会員には、長年対峙してきた立憲への強いアレルギーがある。比例では新党に入れても、小選挙区で立憲候補に投票するかどうかは別問題だ。
さらに重要なのは、公明党の比例票の中身である。
昨年の参院選で公明が集めた521万票には、自民党とのバーター票、与党として築いてきた業界票が相当数含まれている。代表例が、国交大臣ポストを背景にしたゼネコン票だ。
野党に転落し、立憲と組む公明党に、これらの票はついてこない。
純粋な学会票が、どれだけ残るのか。学会員の高齢化を考えれば、集票力は急速に落ちている。
新党結成は、公明党にとって「本当の実力」を隠すためのステルス戦略だったとも言える。
立憲は、暴落寸前の公明株を、高値でつかまされたのかもしれない(逆に自民は暴落寸前の公明株を、高値で売りさばいたともいえる)。
しかも、立憲が公明と組むことで逃げる票も多い。無党派層は離れ、自民、国民民主、参政へ流れるだろう。比例で「足し算」どころか、「引き算」になる恐れがある。
フタを開けてみたら、比例票は伸びず、立憲の比例復活枠は激減。
総選挙後、新党はあっさり解散し、元の党に戻った時には、立憲の議席は半分以下になっていた――。
そんな悪夢の結末が、現実になる可能性は、決して低くない。