公明党の連立離脱が迫っていた10月7日夜、私はアベマプライムに出演し、田村淳さんやたかまつななさんら出演者に加え、公明党前衆院議員の伊佐進一氏と自公連立について激論をかわした。
このとき、公明党は高市政権に対して「政治とカネ」「靖国参拝」「外国人政策」の3点について懸念を伝え、連立合意を先送りしていた。それでもマスコミ各社は自公連立崩壊ををまったく予想していなかったし、出席者の多くは連立離脱はありえないという立場だった。
伊佐氏は当事者として「連立離脱は十分にあり得る」と主張した。でも、多くの出席者は「公明党の牽制球」としか考えていない様子だった。
私も伊佐氏と同じ立場だった。ただ、連立離脱の背景分析は真逆だった。
伊佐氏は、自民党が政治とカネの問題で後ろ向きなことに公明党が反発し、連立離脱する可能性は十分にあり得るという主張だった。まさに公明党が連立離脱後に示した公式見解そのものであり、マスコミ各社が現時点で報じている内容そのままだ。
私は正反対だった。公明党が自民党を「切る」のではなく、自民党に「切られる」との分析を示したのである。

総裁選の高市大逆転でキングメーカーに復活した麻生太郎氏の「最後の大仕事」は、公明党切りだ。
高市早苗政権が誕生すれば、あとは突き放す。最終目標は、自公連立解消からの解散総選挙、自民党単独過半数の奪還だ。
公明党が首班指名で高市氏に投票し、高市政権が誕生したら一巻の終わり。高市政権にはいずれ国民民主党が加わり、公明党はどんどん隅に追いやれ、最後は連立解消に追い込まれる。
自民党は「公明切り」を世論にアピールし、「これこそ解党的出直し」と訴え、無党派層の支持を引き寄せる。公明党の組織票は失っても、お釣りがくるほど無党派層の支持を引き戻し、自民単独過半数を目指すーー。
これが麻生戦略だという見立てを披露したのである。
そして伊佐氏に「公明党は高市さんに首班指名で投票しないほうがよい」と助言した。高市政権が誕生し、麻生氏が解散権を事実上握れば、「公明切りの解散総選挙」を食い止めるすべがなくなるからだ。
つまり、首班指名前に先手を打って連立離脱することを勧めたわけである。切られる前に切れ!ということだ。
このアベマプライムは大きな反響があった。
私はさらに詳しい内容を翌日のYouTubeで解説したところ、53万回を超える再生回数となった。この時点では自公連立の崩壊を予想しているマスコミはほぼ皆無だったため、多くの関心を呼んだのであろう。
以下はその解説動画である(10月8日公開)
マスコミ報道が連立離脱に傾いてきたのは、私が動画を公開した翌日、10月9日からである。公明党の動きが急になり、連立離脱の可能性が高まってきたと報じ始めたのだ。
そして10月10日の自公党首会談で、斉藤代表から高市総裁へ、連立離脱は宣告された。急転直下の結末である。私が伊佐氏に助言したとおり、公明党は「切られる前に切った」のだ。
マスコミはそれでも「公明党が自民党を切った」というトーンで報道している。ただ、政局の裏側をずっとウォッチしてきた立場からすれば、それはあり得ない。公明党は、自民党を完全掌握した麻生氏に連立離脱へ追い込まれたのだ。
詳しくは、以下の連立離脱の緊急解説動画をご覧いただきたい。
それでも高市政権誕生後に連立離脱に追い込まれ、即時に解散総選挙を打たれるよりは、高市政権発足前に離脱し、高市政権が誕生しない可能性を残した方が、政局的には正解である。
権力闘争は、つねに先手を打たねばならない。
とはいえ、斉藤代表は記者会見で、首班指名で野党に投票することはないだろうと語った。ここからは、高市政権誕生を絶対阻止するという強い意志はなく、自民党への未練を残していることがうかがえた。
これでは、権力闘争には勝てない。高市政権が誕生すれば、遠からず解散総選挙が断行され、公明党は惨敗を喫する可能性が高いだろう。
せっかく先手を打ったのに、中途半端な宣戦布告にとどまれば、強烈な反撃を浴びるに違いない。
首班指名政局はこれからだ。公明党は今からでも野党と連携し、高市政権阻止に動いたほうがよい。ケンカは中途半端に仕掛けるくらいなら、やらない方がマシなのだ。