いまもっとも輝いている地方自治体のトップは兵庫県明石市の泉房穂市長だろう。
全国画一的な地方行政を進める政府に抗い、子どもを大切にする独自の政策を連発。子どもが増え、人口も増え、税収も増えたというのだから、注目が集まらないはずがない。
Twitterの発信も話題を呼んでいる。昨年末にアカウントを開設するや、あれよあれよとフォロワーは急増し、たった半年で26万人を超えた。私は6年で7万人に達してハイペースと言われているのだから、泉市長の急増ぶりが破竹の勢いであることがわかる。
Twitterで紹介されている経歴がすごい。NHK、政治家秘書(それも疑惑追及で名を馳せた故・石井紘基氏の秘書)、弁護士、衆院議員、社会福祉士、そして市長。政界では医師と弁護士の資格を持ち新潟県知事も務めた米山隆一衆院議員の多才ぶりが知られているが、泉市長の経歴もただものではない。その上、柔道三段、手話検定2級、タコ検定達人までついている。
私の『朝日新聞政治部』刊行記念の特別対談シリーズで、中島岳志さん(政治学者)、大石あきこさん(衆院議員)、望月衣塑子さん(東京新聞記者)に続いて版元の講談社が企画してくれたのが、その泉房穂・明石市長だった。泉さんは講談社からの打診を即決で受諾してくれた。
私は参院選最初の日曜日となる6月26日、大阪・梅田ラテラルで講演&販売サイン会が入ったので関西入りしたのだが、せっかくの機会なので明石市役所まで足を伸ばし、対談するのはどうかと講談社の編集者に提案した。すると、同じ時期に泉市長はちょうど上京するということだった。
そこで6月25日、講談社の由緒ある貴賓室で実現したのがこの対談である。
対談が迫る6月23日、参院選公示の翌日のこと、れいわ新選組の木村英子参院議員が明石市を訪ねて泉市長と意見交換したことを二人のTwitterで知った。
私は山本太郎氏がれいわ新選組を2019年参院選前に旗揚げし、重度の障害を持つ木村さんら様々な困難に直面する「無名の当事者たち」を候補者に擁立。山本氏自らは落選しながらも難病患者の舩後靖彦さんと木村さんを比例区特定枠に入れて優先的に当選させたことに感銘を受け、政治とは何かを見つめ直すきっかけとなった。
昨年に朝日新聞社を退社して迎えた今夏の参院選では、ウソくさい「客観中立」を掲げて政治家の主張を垂れ流すばかりの新聞報道と決別し、政治ジャーナリストとして明確にれいわ新選組支持を表明した上でデータや論理性を備えた説得力のある記事をお届けする新しいスタイルの政治報道を目指すことを決め、れいわにも応援メッセージを送ったところだった。
そのタイミングで泉市長が木村さんを明石市に迎えたことに、私はなんだかうれしくなった。対談ではれいわや木村さんのことについてもじっくり語り合いたいと思った。
さらに私が泉さんにシンパシーを抱いたのは、参院選が始まった直後に「“支持政党”はないが、“応援したい議員”はいる」とツイートし、「こどもファースト」への転換を 共に訴え続けてきた自民党の自見はなこ氏と、国民民主党の矢田わか子氏の名前をあげて、「全国比例区に「自民党」と書く予定の方は、 政党名ではなく、 『自見はなこ』と個人名を書いていただきたい」「全国比例区に「国民民主党」と書こうと思っておられる方は、 政党名ではなく、 『矢田わか子』と個人名を書いていただきたい」と明確に訴えたことだ。
私は「ジャーナリストのくせに特定政党に肩入れしていいのか」という批判が殺到するのを覚悟してれいわ新選組に応援メッセージを送ったのだが、泉市長は「市長のくせに特定政治家に肩入れしていいのか」という批判覚悟で投票を呼びかけたのであろう。それだけ「実現したいこと」があるのだ。自らへの批判を恐れて客観中立のフリをする多くの記者や首長とは一線を画している点において、私は泉市長との対談がますます楽しみになった。
そして迎えた6月25日夕刻。講談社の由緒ある「貴賓室」でそれは実現した。
はじめてお会いした泉市長はエネルギッシュな政治家だった。そして、歯に衣着せぬ物言いの裏側に優しさが溢れている人だと感じた。弟に障害があり、自分は弟のケアを生涯続けていかなければならないと親から教えられ、そう信じて育った少年時代。泉市長の政治の原点はそこにある。木村英子さんとの会談もおおいに通いあったことだろう。「誰一人見捨てない」という政治信条を、れいわ新選組も泉市長も掲げているのは、偶然とは私には思えなかった。
2時間に及ぶ対談はとても興味深い内容だった。マスコミに務めた経験、政治に携わる立場、SNSに力を入れる現在…泉市長と私は重なる部分が多いと思っていたが、お会いして語り合うと、さまざまな価値観を共有できる方であると強く感じた。
詳細は近く現代ビジネスで連載される。サメジマタイムスのYouTubeでもその一部を紹介する予定だ(家内制手工業で編集作業に追われており、いつ公開できるかお約束できなくてごめんなさい)。とってもうれしい出会いの場を用意してくれた講談社さん、ありがとうございました。