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麻生太郎、消費税減税を拒否 財務省と歩む「ポスト石破」の本命は進次郎か?

自民党で唯一生き残った派閥を率いる麻生太郎元総理(84)が、横浜市で開かれた麻生派の研修会で総裁選前倒しに賛成を表明したのは、石破茂首相が両院議員総会で改めて続投を表明した翌日、9月3日だった。石破政権を終焉に追い込む一撃となったといえる。

しかし、この日の麻生発言の核心はそこではない。むしろ、消費税減税に対する明確な拒否姿勢にこそ、麻生の真意が込められていた。

この発言は、石破退陣後の総裁選をにらみ、誰を担ぐか、誰と手を組むかを示唆する重大なシグナルである。

麻生の視線の先には、石破政権を支えた森山裕幹事長、そして小泉進次郎農水相との挙党体制、さらに維新との連立構想が透けて見える。


石破嫌いと「前倒し賛成」

麻生が石破を嫌うのは政界では周知の事実だ。麻生内閣で閣僚を務めた石破が「麻生降ろし」に動いた因縁を、麻生はいまなお忘れていない。

昨年の総裁選でも石破阻止を至上命題とし、高市早苗を支持した。しかし勝者は石破。結果、麻生は副総裁の座を外され、最高顧問に「棚上げ」される屈辱を味わった。

その石破が衆参両院選で惨敗し、党内では退陣論が噴出した。党史上初めて総裁選前倒しの賛否確認に至ったのも、背後に麻生の暗躍があるとみられている。

派閥研修会での「前倒し賛成」表明は、麻生にとって既定路線だった。

麻生派43人は党内で依然、無視できない勢力である。世論の反発を恐れつつも、派閥を維持し続けてきたのは「数の力」で政局を動かすため。今回の発言は、その数を誇示するデモンストレーションだった。


消費税減税への拒否

メディアが前倒し発言に沸くなか、日経と時事通信が注目したのは別の一節だった。麻生は野党が掲げる消費税減税を真っ向から批判したのである。

2012年、民主党政権末期に自公民3党で増税合意をまとめた経緯を引き合いに出し、立憲の野田佳彦代表、国民の玉木雄一郎代表、維新の前原誠司元代表を名指しして「全員、そのとき民主党政権を担っていた」と牽制。連合の芳野友子会長が減税に否定的である点や、世論調査で減税支持が少数派であることも強調し、減税に反対する姿勢を鮮明にした。

かつて積極財政派だった麻生は、副総理兼財務相時代に増税を推進し、財務省との関係を深めた。その延長線上に、今回の発言も位置づけられる。

石破政権を陰で支える森山幹事長も財務省と太いパイプを持つだけに、減税拒否は「森山との和解」への伏線とも読める。


進次郎を担ぐ布石

麻生が避けたいのは「高市再び」だ。昨年、高市を推して石破を勝たせてしまった苦い経験がある。茂木敏充では党内の求心力が弱すぎる。小林鷹之では若さが売りでも進次郎に勝てない。

となれば、いっそ「進次郎に乗る」しかない。

今回の減税拒否発言は、その意思表示でもあるかもしれない。高市や玉木(国民民主)と距離を置き、森山や菅義偉元総理と和解し、進次郎を中心に挙党体制を組む。維新を連立相手に取り込み、国民民主を切り捨てる。麻生が打ち出した布石は、こうしたシナリオを現実味あるものにした。


高市と玉木の動揺

この展開で最も打撃を受けたのは高市と玉木だろう。

高市は積極財政を旗印に減税を掲げてきたが、党内基盤は脆弱で、麻生の支援なしでは勝負にならない。その麻生が減税を否定したことで、彼女の立場は一気に不利になった。

玉木も同様だ。麻生と茂木に近く、自公国連立を模索してきたが、ここにきて維新連立シナリオが浮上した。

玉木にとって最悪なのは、麻生・森山・菅が進次郎を担ぎ、維新と組んで「自公維連立政権」を構築する展開だ。玉木の国民民主は完全に蚊帳の外に置かれる。


財務省シナリオの影

麻生の減税拒否の背後には、財務省の意向もうかがえる。財務省が描くシナリオはこうだ。

  1. 麻生と森山を和解させ、進次郎を担ぎ出すことで、減税派の高市を封じる。
  2. 維新を取り込み、減税派の国民民主を排除する。
  3. 自公維連立の進次郎政権で、消費税減税を阻止する。

麻生講演の一節は、財務官僚の思惑と軌を一にしている。

麻生太郎が横浜で放った「減税拒否」のメッセージは、単なる一議題への意見ではない。石破後の政局を見据え、進次郎擁立、維新連立という「財務省シナリオ」への合流を示唆する布石である。

麻生がポスト石破の権力地図を塗り替える可能性は大きい。世論は減税を求めても、財務省と結びついた政治力学がそれを封じ込める。今回の麻生発言は、その冷徹な現実を浮かび上がらせたといえる。