自民党最大派閥の安倍派、第4派閥の岸田派、第5派閥の二階派が一斉に解散を決定し、第2派閥の麻生派と第3派閥の茂木派の動向に注目が集まっている。麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長は、自分たちの派閥は検察の裏金捜査で立件されなかったことを理由に派閥解散を拒む構えだ。
今後の党内政局は、岸田退陣後の総裁選を見据えて「派閥解散組」vs「派閥維持組」の対決構図が強まりそうだ。
岸田文雄首相、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長はこれまで岸田政権中枢としてスクタムを組んできた。しかし麻生氏は、支持率低迷の岸田首相では今年9月の自民党総裁選に勝てないとみて、今春の予算成立と訪米を花道に退陣させ、後継首相に茂木氏を担ぐ方針に転換。岸田首相はこれに反発し、主流3派体制に区切りをつけ、派閥解消を訴えてきた菅義偉前首相ら非主流派との連携に踏み出したのが、今回の派閥解消連鎖の実像だ。
菅氏は、主流3派体制に挑むため、無派閥の石破茂元幹事長を対抗馬として擁立する考え。菅氏自身も無派閥である立場を強調し、「派閥解消」を総裁選の一大争点に掲げ、派閥解散を決めた安倍派や二階派のメンバーを取り込んで多数派を形成する筋書きを描く。麻生氏と岸田氏の関係悪化につけこみ、岸田派も引き込んで「麻生・茂木包囲網」をつくることができれば、地滑り的な勝利もみえてくる。
これに対し、麻生氏は派閥の多数派工作で茂木氏優位の流れをつくる腹づもりだったが、派閥解消の流れのなかで一転して守勢に回った。
麻生派と茂木派の中からも「派閥にとどまれば世論の批判を浴びて次の総選挙で落選してしまう」との危機感が広がり、派閥離脱の動きが広がる可能性もある。自民党の政治刷新本部が1月中にとりまとめる中間報告の内容次第では、派閥解散に追い込まれる展開も否定できない。
そのなかで派閥会長である茂木氏を、派閥会長である麻生氏が担ぐという構図で、本当に総裁選を勝てるのかは疑問だ。主流3派体制から岸田派が抜けたうえ、麻生派と茂木派への風当たりが強まることが予想され、麻生・茂木両氏が前面に出るほど党内の支持拡大は困難となるかもしれない。
茂木氏に代わって、上川陽子外相や鈴木俊一財務相らを担ぐ奇策もささやかれるが、それでも麻生・茂木両氏の傀儡との見方が広がれば苦戦が免れない。
現時点では、派閥批判を正面から受けて立ち、茂木氏擁立で突き進むほかないのではないか。
菅側近の坂井学氏や石破側近の赤沢亮正氏ら無派閥議員19人が立ち上げた「無派閥情報交換会」が「無派閥という名の派閥」と揶揄されていることや、安倍派の福田達夫元総務会長が「新しい集団をつくっていく」と発言して批判を浴びたことを踏まえ、「派閥解散は偽装」であると反撃していくことになろう。