政治を斬る!

麻生太郎「岸田首相は政策では間違ったことはしていない」は総裁再選支持ではない!8月中に引導を渡すための環境整備〜菅義偉とのキングメーカー決戦へ、主流3派体制(麻生派、茂木派、岸田派)を崩すわけにはいけない事情

内閣支持率が低迷して自民党内から退陣論が相次いでも、9月の総裁選出馬をなおあきらめていない岸田文雄首相。最後の頼みの綱は、政権の生みの親である麻生太郎副総裁だ。

昨年秋に定額減税を打ち上げた後、麻生氏の意向を振り切って派閥解消や政治資金規正法改正を進め、ふたりの関係はすっかり冷え込んだ。それでも麻生氏の支持なしには総裁再選は不可能とみて、岸田首相は関係修復に躍起だ。

自らが打ち上げた派閥解消を公然と無視し、唯一派閥を大っぴらに存続させている麻生氏を後ろ盾にしない限り、総裁選出馬もままならないところに、岸田政権の最大の矛盾があるといえるだろう。

裏を返せば、岸田政権の命運は麻生氏に握られているともいえる。岸田首相では次の総選挙はとても戦えないと危機感を強めている自民党議員たちは、麻生氏が岸田首相に引導を渡して総裁選出馬を断念させることをみんな願っている。

その麻生氏は8月6日、非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と気脈を通じている森山裕総務会長と会食した。麻生氏はこの席で「岸田首相は政策では間違ったことはしていない」「安倍政権ができなかったこともしっかり結果を出している」と高く評価したことから、政界やマスコミ界には「麻生氏はやはり岸田再選支持なのか」との見方が一気に広がった。

私はそうは見ていない。

麻生氏にとって9月の総裁選は、キングメーカーの座を争う菅氏との最終決戦である。不人気の岸田首相を担いで敗れれば、キングメーカーの座を菅氏に明け渡し、非主流派に転落してしまう。それだけは絶対に避けたい。何がなんでも勝たなければならないのだ。

岸田首相ではとても勝てないーーそれが麻生氏の本音だろう。

けれども、岸田首相に面と向かって「出馬を諦めろ」と迫れば、岸田首相はヘソを曲げて菅氏や森山氏と結託するかもしれない。麻生氏が茂木敏充幹事長を擁立する考えとみられるが、勝利するには主流3派(麻生派、茂木派、岸田派)の結束は絶対に必要なのだ。

つまり、岸田首相に納得して退陣してもらわなければ、主流3派の足並みが乱れ、菅氏が率いる非主流派陣営に敗れてしまう。

では、どうやって岸田首相に納得して辞めてもらうのか。

まずは岸田政権3年の業績を高く評価して、持ち上げることだ。森山氏のと会食での発言は、そうした意味合いがあるのだろう。今後も麻生氏はいろんな場で岸田首相を褒めちぎるに違いない。

次は、茂木政権誕生後の岸田首相の立場を確保することだ。岸田派に幹事長ポストを渡し、麻生氏と岸田氏がキングメーカーとして茂木政権を支えるという構想を示し、岸田首相を安心させる必要がある。

まずは褒めちぎって気持ちを満足させる。次にポストを提示して実利を用意する。これぞ麻生流の「岸田おろし」といえるのではないだろうか。

岸田首相が出馬するかどうかで総裁選の対決構図は大きく変わってくる。まずは岸田首相の進退がはっきりしないと茂木氏ら他の有力候補も出馬表明しにくい。岸田首相はお盆明けから8月下旬にかけて最終決断を迫られるだろう。その前に麻生氏とのサシ会談があるのは間違いない。そこが当面の焦点である。

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