次の総理は高市早苗か、それとも玉木雄一郎か。
自公連立がついに崩壊し、永田町は30年ぶりの大乱世に突入した。
自民党のキングメーカー・麻生太郎(85)が仕掛けた「公明切り」は、日本政治の構造を根本から変える一手だった。菅義偉元総理や森山裕前幹事長といった公明寄りの人脈を排除し、裏金問題で批判を浴びた萩生田光一氏をあえて幹事長代行に抜擢。この人事で公明党を連立離脱へと追い込んだ。
麻生の狙いはただ一つ。公明党と手を切り、長年離反していた保守層を取り戻して「自民単独過半数」を奪還すること。自民党を一度リセットして再生させる──まさに麻生流の「解党的出直し」である。
麻生はその一方で、国民民主党の榛葉賀津也幹事長と水面下で緊密な関係を築いてきた。立憲民主党と国民民主党の連携を阻止できれば、自民党が首班指名で敗れることはない──そう読んでいるのだ。
国民が立憲と手を組めば「玉木政権」が誕生する可能性がある。立憲148、国民27、維新35で210票。自民の196を上回る。
しかし、麻生の読みはそこから一歩先にある。自民が高市擁立をあきらめて玉木擁立に乗り換えれば、立憲はさすがに玉木には乗れなくなる。自民196+国民27=223票。立憲・維新・公明(計207票)が組んでも勝てない。
つまり、玉木さえ抱え込んでおけば、どう転んでも野党に総理を取られることはない。それが麻生の読みだ。
それでも麻生の本命はあくまで「高市政権」である。議席数は大幅に減り、国民民主との閣外協力を得ても過半数のは届かず、国会運営は不安定になる。秋の臨時国会で補正予算が否決される展開も十分にあり得る。
しかし、麻生はそれも織り込み済みだ。むしろ野党に補正予算を否決させ、「解散の大義名分」を得て年内に総選挙を断行する──これが本筋のシナリオだ。
公明票を失えば自民は苦戦必至、と見る向きは多い。だが麻生は強気だ。公明切りを前面に掲げれば、国民や参政党に流れた保守層が戻り、ネット世論も自民に傾く。「公明に気兼ねせず保守政治をやる自民党」を演出できれば、無党派層の一部まで引き寄せられるという読みだ。
これが、麻生が描く“公明切り選挙”の勝算である。
ただ、党内には菅・森山ラインを中心に公明シンパの反発が根強い。菅氏は高市総裁から公明対応の相談を受けても突き放し、森山氏は地元鹿児島で「自公協力継続」を明言。大阪や山形でも同様の動きが広がる。地方では今なお「票のバーター」が生きており、麻生戦略の効果を半減させかねない。
このため麻生は、自公協力を続ける候補者を非公認とする可能性がある。「公明と組むなら自民公認は出さない」──そんな強硬策すら辞さないだろう。
実際、「公明なしの国会運営は考えられない」と発言した松山参院議員会長を麻生が叱責する映像がSNSで拡散し、世論は“麻生vs公明”の構図に熱を帯びている。
では、もし高市では勝てないと判断した場合はどうなるのか。
麻生が選ぶ第二のカードが「玉木政権」である。立憲と維新が玉木擁立を目論むのに対抗し、自民が玉木を担いでしまう。立憲は自民が推す玉木には乗れず、野党統一は崩壊。結果、玉木総理が誕生する。
この「ウルトラC」を温存しているからこそ、麻生は公明党を切り捨てる決断ができたのだ。
自民・国民だけでは過半数に届かないが、維新を取り込めば状況は一変する。維新も、立憲や公明と組むよりは、玉木総理のもとで与党入りする方を選ぶ可能性が高い。自民・国民・維新の3党連立となれば、衆参で過半数を確保し、国会運営は一気に安定する。
その場合、解散は当面ない。玉木は減税など国民民主の政策実現を優先し、麻生も“公明抜きの新連立”に満足するだろう。
自民単独の高市政権誕生の場合は、年内に解散総選挙へ。
玉木を総理に担ぐ自民・国民・維新3党の連立政権が誕生する場合は、衆参で過半数を回復するため、解散は当面見送り。
どちらの道に進むのか。鍵を握るのはやはり麻生太郎だ。