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小泉進次郎1位、石破茂2位で麻生太郎撃沈!菅義偉が戦略転換、決選投票へ加藤勝信や斎藤健も擁立へ!麻生は2位に河野太郎や茂木敏充を押し上げるため、上川陽子を見切ったが…キングメーカー対決で麻生劣勢、強まる10月引退説

麻生太郎氏と菅義偉氏。自民党総裁選でふたりの元首相のキングメーカー争いが熾烈になってきた。
菅氏が担ぐ小泉進次郎氏が本命に浮上し、第一回投票で1位になることが有力視されるなか、麻生氏は候補者を乱立させて第一回投票で小泉氏の過半数獲得を阻止する作戦に出た。第二派閥の麻生派からは河野太郎氏、第三派閥の茂木派からは茂木敏充氏、第四派閥の岸田派からは林芳正氏の出馬を容認。さらには若手代表として小林鷹之氏、女性代表として上川陽子氏の出馬も後押しし、決選投票ではこれら候補が連携して、1位の小泉氏を逆転するシナリオを描いたのである。
菅氏はこれを受けて、小泉氏が第一回投票で過半数を獲得することは難しいと判断し、作戦を変更。麻生氏と不仲の石破茂氏と連携を深めるうえ、菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信氏(茂木派所属、茂木氏とはライバル)や斎藤健氏(小泉氏と当選同期で親密)の出馬を後押しし、候補者乱立を加速させて票を分散させ、党員投票で優勢な石破茂氏を2位に捻じ込み、菅陣営が1位と2位を独占する戦略に転じたのである。
麻生氏は困った。小泉氏が1位になるのは織り込み済みだが、石破氏に2位を取られれば、決選投票にもつれ込んだとしても、どちらにも与することができない。キングメーカー争いでは、菅氏に完敗である。小泉政権が誕生しても石破政権が誕生しても、麻生氏の居場所はなく、そればかりか10月解散総選挙で引退を迫られる恐れもある(麻生氏は9月に84歳になる。政界最高齢の二階俊博元幹事長は裏金事件を受けて次期総選挙に不出馬を表明している)。

麻生氏の至上命題は、石破氏に2位を阻止することになった。そのためには、麻生陣営の河野氏、茂木氏、林氏、小林氏、上川氏のなかから誰かを2位に押し上げなければならない。

当初は小泉氏と同じ40代の小林氏に勢いがあったが、ここにきて、旧統一教会との関係が再燃。さらに裏金問題で処分された安倍派議員らの処遇を見直す考えを示したことで世論の反発を浴び、失速してきた。上川氏は女性初の首相候補として一時は注目を集めたが、その後は自らの失言もあって、これまた失速気味だ。林氏はもともと麻生氏の天敵である古賀誠元幹事長(宏池会の前会長)と親しく、麻生氏とは折り合いが悪い。

麻生氏が2位に押し上げるとすれば、河野氏か茂木氏しかないのが実情だ。このまま候補者乱立を進めれば河野氏や茂木氏の票も伸び悩み、党員投票で優勢が見込まれる石破氏に2位を奪われてしまう。

小林氏は麻生派重鎮の甘利明氏に加えて、安倍派中堅・若手のリーダー格である福田達夫氏の支持も得て、推薦人20人を確保し出馬表明した。林氏は宏池会(岸田派)ナンバー2で、麻生氏に力を借りなくても推薦人20人を集められる。どちらも今から出馬を断念することはない。出馬を諦めさせるとすれば、上川氏しかない。

上川氏は岸田派に所属している。もともと麻生氏が上川氏をポスト岸田として持ち上げたのは、岸田首相や林氏を牽制する狙いがあった。今回の総裁選では、小泉氏が第一回投票で過半数を獲得するのを防ぐため、大量擁立作戦を進める一環で、上川氏にも麻生派女性議員らを推薦人候補として貸し出していた。だが、最新情勢を踏まえれば、上川氏には出馬を見送ってもらったほうがいい。そこで貸し出していた推薦人候補を引きあげることにしたのだ。

上川氏は困った。一時は「20人をはるかに超える支持を得ている」として推薦人確保に自信をみせていたが、麻生氏に撤収されると20人確保のメドが立たなくなった。今さら引き下がることもできず、あとは自力で推薦人を集めるしかないが、一転して出馬困難な情勢に追い込まれたのだ。

上川氏が出馬できなくなったとしても、河野氏や茂木氏が2位に食い込む保証はない。

河野氏はもともと国会議員に人気がなく、頼みの国民人気でも石破氏や小泉氏に水をあけられ、高市早苗氏にも追い抜かれている。茂木氏に至っては、世論調査の人気は1%しかない。麻生氏が今から国会議員票を河野氏か茂木氏に集中させても、石破氏の2位を阻止できる見込みはない。高市氏にも先を越される恐れもある。

仮に河野氏か茂木氏が2位に浮上したとしても、決選投票でアンチ小泉・アンチ菅を結集させて逆転できるかどうかは不透明だ。石破氏は小泉氏支援に回る可能性が高く、高市氏がどっちにつくかはわからない。林氏でさえ菅陣営に「寝返る」可能性は十分にある。

麻生氏が菅氏とのキングメーカー争いを制する展望はかなり険しくなってきた。このまま小泉政権の誕生を許せば、いよいよ麻生氏の10月引退説が強まってくるだろう。それが現時点での情勢である。

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