公明党が過半数を占める新党「中道」。その代表選に立候補したのは、立憲民主党出身の小川淳也氏と階猛氏の二人だった。勝敗を分けるポイントはただ一つ。公明党28票がどちらに流れるのか――である。
投票したのは、公明28人、立憲21人、あわせて49人の衆院議員。結果は、階猛22票、小川淳也27票。5票差で小川氏が勝利した。
両者の政策的立場に大差はない。安保法制や原発政策をめぐって決定的な違いがあったわけでもない。では何が勝敗を分けたのか。最大の要因は、立憲代表だった野田佳彦氏との距離である。
小川氏は野田氏に近い「野田シンパ」。一方、階氏は野田路線に批判的な「アンチ野田」と目されてきた。総選挙で壊滅的打撃を受けた立憲民主党の生き残り21人には、野田氏への反発が渦巻いていた。したがって、立憲票の多くは階氏に流れた可能性が高い。
一方、公明党の斉藤鉄夫氏は、野田氏とともに新党を立ち上げた当事者であり、一定の信頼関係がある。公明票は野田氏に近い小川氏へ――これが下馬評だった。
しかし結果を見ると、小川氏は27票。公明票28がすべて流れたわけではない。公明党は事前に「自主投票」を宣言していた。小川氏が28票以上を獲得すれば「公明が勝たせた」という印象が強まり、立憲側の反発を招きかねない。だからこそ、公明は綿密な票読みのもと、28票を巧みに振り分け、小川氏が5票差で勝つシナリオを描いたのではないか。私はそう見る。
いずれにせよ、どちらが勝っても公明支配の構図は変わらない。公明の納得を得なければ党運営は進まない。
そして公明の戦略は、自民党を倒して政権交代を実現することではない。高市政権を倒し、石破茂氏ら「アンチ高市」勢力と連携し、自民党との大連立を構築することにある。政権交代を掲げてきた立憲民主党とは相容れないし、自民党に対抗する小川氏の野党第一党像とも違う。
小川淳也と階猛――似て非なる歩み
小川淳也氏は54歳。東京大学法学部を卒業し自治省に入省、その後政界へ転じた。階猛氏は59歳。二浪で東京大学に合格し、東大野球部では70連敗を経験。就職した銀行は破綻し、10回目の挑戦で司法試験に合格した苦労人だ。弁護士から政界へ転身した。
ともに当選8回。民主党、民進党、希望の党、立憲民主党と、野党再編の荒波を共にくぐってきた。かつては細野豪志氏のグループに属し、民主党政権末期には野田佳彦首相に対抗して細野氏擁立を模索したこともある。
先に頭角を現したのは階氏だった。岩手の大物・小沢一郎氏と対立しながら岩手1区で負けなしの8連続当選。民進党政調会長に抜擢された。一方、小川氏は香川1区で8回当選するも半数は比例復活。知名度を一気に高めたのは、2020年公開のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』だった。
2021年総選挙後、小川氏は代表選に挑むが推薦人集めに苦労する。そこに救いの手を差し伸べたのが野田側近の手塚仁雄氏や大串博志氏だった。野田グループの支援で出馬を果たし、その後は政調会長、そして幹事長へと昇進。今回の総選挙で野田側近が次々落選するなか、野田氏に残された手札は小川氏だけだった。
対する階氏は裏方に回ることが多く、泉健太氏や小川氏の推薦人に名を連ねることもあった。野田路線に批判的な勢力との連携を深めてきた。今回の代表選は、野田シンパかアンチ野田かという対決でもあった。
参院と落選組の「様子見」
今後の焦点は、立憲の参院議員40人が中道に加わるのかどうかだ。衆院の立憲トップを継いだ水岡俊一参院議員は、国会で公明と統一会派を組まない方針を示し、「党内の意見集約を図った上で結論を出す」と述べた。当面は合流しない構えだ。
次の参院選は2年半先。新代表のもとで中道が結束し、支持率を回復できるのかを見極める「様子見」である。
一方、立憲の落選組からは早くも離党の動きが出ている。島根1区の亀井亜紀子氏は離党を表明。兵庫7区の岡田悟氏は新党名や比例名簿を批判し、立憲・公明の旧執行部ばかりか、創価学会にも「説明責任」を求めた。比例上位を公明が独占し、立憲候補が復活できなかったことへの怒りは根深い。
野田佳彦氏は「次回は比例復活を最大限増やす」と語ったが、公明を優遇しないとは明言できなかった。代表選で階氏も小川氏も「平等が原則」「平等が前提」と語ったが、全員一律にするとは約束しなかった。
次の解散総選挙は4年後かもしれない。それまで落選組が耐えられるのか。再び比例で弾かれれば政治生命は絶たれる。離党や他党への移籍が相次ぐ可能性もある。
小川淳也代表のもとで再出発した中道。しかし参院は様子見、落選組は動揺、公明の影は濃い。与党・自民党は圧勝を背景に国会運営を主導する。中道が与党に抑え込まれ、野党をまとめきれなければ、支持率浮上の糸口は見えない。
小川新代表は、公明支配・野田院政を突破し、野党第一党としての存在感を示して政権交代につなげることができるのか。それとも大連立への通過点となるのか。新党「中道」の前途は、なお多難である。