政治を斬る!

コロナを「ただの風邪」として受け入れる方向にこっそり舵を切った菅政権〜「感染拡大防止の放棄」をごまかすな!

菅政権が打ち出した「重症以外は自宅療養」は、コロナ感染者を早期発見・早期隔離して「感染拡大防止」をめざすこれまでの政策目標の放棄である。感染者が急増して医療崩壊が起きた現状を追認し、コロナをインフルエンザと同じような「ただの風邪」として受け入れる方向へ舵を切ったものだ。感染拡大を甘受し経済社会活動の回復を優先する英国型に大きく踏み出したといっていい。

この一日、菅首相の「重症以外は自宅療養」表明を伝えるテレビ新聞報道をみていて、これは「感染防止拡大政策の放棄」であり「コロナをただの風邪として受け入れる政策転換」であるとクリアに解説する記事を見つけることができなかった。日本マスコミの報道力・解説力の劣化は甚だしい。これでは権力者は楽勝だ。

この政策転換の意味するところは昨日の当欄で詳しく解説したので参考にしてほしい。

菅首相「重症以外は自宅療養」は医療崩壊を公式に認めた国家による「入院拒否」宣言である〜「失政」の政治責任を迫り内閣総辞職を求めよう!

その是非はともかく、菅政権が掲げてきたコロナ対策の大転換であるのは間違いない。最大の問題は、国民の生命に直結する重大な政策転換のリスクを、菅首相が国民にはっきり説明することなく、なし崩し的に進めていることである。

新聞記者たちは「重症以外は自宅療養というのは、感染拡大防止を最優先にして感染者をできる限り隔離する従来のコロナ対策からの大転換ですよね」と質問しなければならないのに何も聞かない。英国のボリス・ジョンソン首相が、感染再拡大の可能性が高いことを国民に明確に説明したうえでコロナ規制の全面的解除に踏み切ったのとは大違いだ。

そもそも安倍・菅政権が早期発見・早期隔離による「感染拡大防止」を真剣に追求してきたのかは疑わしい。患者が医療機関に殺到して医療崩壊が起きることを何よりも恐れ、PCR検査を一貫として抑制してきたのは象徴的だ。コロナ感染者を次々に受け入れる「コロナ専用の巨大臨時病院」を開設して病床数自体を大幅に増やすことは具体的に検討した痕跡さえない。

本当の感染者数を隠し、感染拡大の実態をごまかすことで、日本経済への悪影響を極力減らし、国民の不安を抑えることが、安倍・菅政権が最優先してきた「ウラの政策目標」であったとしか思えない。

東京五輪の強行開催を契機に感染爆発が発生し、患者の受け入れ先が圧倒的に不足するという医療崩壊が現実となってはじめて、国民の批判をかわすために掲げてきた「感染拡大防止」の看板を降ろすことにしたのが、今回の「重症以外は自宅療養」である。

いや、重症化リスクが高い高齢者へのワクチン接種が進み、東京五輪の金メダルラッシュにマスコミ報道が過熱するこの時期に、「感染拡大防止」の政策目標をこっそり転換して政治責任の追及をかわすのは、当初から極秘に仕込まれたシナリオだったのではないかとさえ思えてくる。ウソとゴマカシにまみれた安倍・菅政権らしい国民をバカにした政策転換であると私はみている。

今後のコロナ対策について、①あくまでも「感染拡大防止」を政策目標として追求し、緊急事態宣言による行動変容を強化する、②ワクチン接種と医療体制拡充による「重症化抑制」に政策目的を変更し、通常の経済社会活動を回復していくーーのどちらに向かうかは国民の選択であり、世論の合意形成を進めるためにも菅政権は情報公開を徹底したうえ説明を尽くし、国民的議論を喚起する必要があると私は主張してきた。

何を目指しているのかわからない菅首相へ〜感染拡大防止か、重症化抑制か、「政策目標」を明確にして合意形成を進めよ!

だが、菅政権がいま進めているのは、国民に対する明確な説明はなく、これまで掲げてきた感染拡大防止に失敗した政治責任も棚上げしたまま、東京五輪のどさくさに紛れてなし崩し的に「感染拡大防止」から「重症化抑制」へ政策目標を変更し、政治責任をうやむやにする醜悪な政治だ。「政治モラル崩壊の極み」である。マスコミはそこを追及しない。

結局、この国のコロナ対策とは何だったのか。電通やパソナが政府発注の事業を「中抜き」し、金融緩和による株高騰で大企業と富裕層は巨額の富を手に入れ、不公平感満載のバラマキ補償で一部の人だけが大きく潤い、医師業界には「ワクチンバブル」が生じている。「国民の不安」を食い物にして政権に近い人々だけが税金ビジネスで潤うという、いかにも歪んだ社会になってしまったのだ。

コロナ危機は日本の「医療崩壊」だけでなく「政治崩壊」を浮き彫りにした。この国のシステムはいたるところで壊れている。戦後日本の遺産を、私たちはほぼ食い尽くしてしまったようだ。ポスト東京五輪とアフターコロナの日本再建は困難を極めるだろう。まずは安倍・菅政権の政治をリセットし、いちから再建していくしか道はない。

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