政治を斬る!

自民党と統一教会「何が問題かわからない」という福田達夫発言に潜む、この国の政治の恐るべき問題点

自民党の福田達夫総務会長が自民党と統一教会の関係を追及する報道の数々に反発し「何が問題かよくわからない」と発言したことに批判が噴出している。

福田赳夫、康夫両元首相を受け継ぎ、安倍晋三元首相が率いてきた清和会(安倍派)の若手ホープにしてこのような発言をするのだから、いかに自民党内(とりわけ清和会内)で統一教会との関係が当たり前のようになっていたかがうかがえる。

一方で、この福田発言の何が問題なのかを論理的に示した記事が少ないのも気になる。

単に「いまや悪名高き統一教会との関係を正当化するなんておかしい」という感情論ではなく、自民党と統一教会の関係の何が問題なのかを論理的に示し、福田発言の問題点を徹底追及することがマスコミ報道の役割なのだが、どうも日本のマスコミが世論の反応をみながら「受けるか否か」という判断基準のみで政治家を批判しているとしか思えない。

私は自民党と統一教会の関係には大きく整理していくつかの重大な問題があると考えている。

ひとつ目はマスコミでも指摘されていることだが、詐欺的な霊感商法や強引な勧誘などに伴う財産的・精神的被害が社会問題化してきた統一教会のPRに、政権与党の政治家がイベントに駆けつけたり講演したりするかたちで協力することで、さらに被害を拡大させる恐れがあるという点だ。現に自民党の政治家が親しくしているので統一教会を信用したという証言も多数報じられている。

これまでも詐欺的ビジネスの広告塔に政治家が使われて批判を浴びることはあった。詐欺的ビジネスの実態を知らずに講演したりすることはただちに違法行為とはいえないとしても、そのようなビジネスの実態が発覚した際には政治家たちは謝罪してきたものだ。

統一教会についていえば、1990年代まではテレビなどで霊感商法などの被害が大きく報道され、いまの政治家たちがそれを知らないはずはない。それでも「知らなかった」という政治家たちは「嘘つき」という疑念を免れないだろう。「知らなかった」は少なくとも統一教会に関して言えば通用しない論理である。なぜマスコミはそこをもっと強く批判しないのだろうか。

さらにいえば、仮に「知らなかった」としても、結果として社会的に問題が指摘されてきた統一教会の活動に加担した政治責任は免れない。統一教会に関係した政治家は過去の行動を謝罪したうえで二度と関係を持たないと宣言すべきであろう。

ところが、そう明言している政治家は多くはない。やはり選挙で支援を受けている以上、関係を断ち切れないのだろう。そこにこそ、この問題の根深さがある。福田氏が「何が問題かわからない」と開き直ったのも、統一教会との関係を断ち切ることができないという自民党(特に清和会)の実態の裏返しであり、やはり事態は深刻なのだ。

もうひとつの重要な問題は、自民党の多くの議員が選挙で統一教会の支援を受けた結果、統一教会の歪んだジェンダー意識の影響を強く受け、それが自民党の政策を大きく歪めてきたことである。

国政選挙のたびに選択的夫婦別姓への賛否を各党党首が問われ、自民党総裁のみが反対するという光景を私たちは見せつけられてきたが、その背後に統一教会から選挙支援を受けてきたという事実があったのだ。

自民党と統一教会に共通する「超家父長主義」については鮫島タイムスの筆者同盟に参画している「ゆっくり考える」さんの記事がわかりやすいので参照いただきたい。

ウルトラ・パトリアーキズム(超家父長主義)による「資源」収奪の危機――統一教会の組織内秩序と自民党政治の共通項〜ゆっくり考える

マスコミ各社の政治部記者は自民党の政治家たちへ「あなたは政治家として統一教会のジェンダー感覚を共有しているのか。容認しているのか」と追及すべきである。統一教会からの選挙支援に依存していて、彼らのジェンダー的主張に逆らえずに「YES」と答えた場合、国会議員として憲法の定めた平等主義に抵触する恐れがあるし、何よりも政治家としての人権意識の欠如が厳しく問われることになろう。この点もマスコミの追及は甘くて見ていられない。

さいごに福田発言について。「何が問題なのかわからない」と彼がいうとき、彼の頭にはおそらく「違法=問題」という図式があるのだろう。逆にいえば「違法でなければ問題ではない」と開き直っているのだ。

統一教会が詐欺的ビジネスをしているのなら、それは個別の刑事事件として立件されるべきだが、だからといって宗教団体そのものから選挙支援を受けることは違法とはいえないだろうーー

統一教会のジェンダー意識はたしかに強烈ではあるが、自民党が選択的夫婦別姓に反対するのはまた別の理由である。それらはあくまでも政治的問題であって、違法性の問題ではないーー

福田氏はおそらくそのように言いたいのだ。

私はここにこそ彼の発言の最大の問題があると思っている。政治家が問われるのは違法性だけではない。むしろ違法かどうかよりも重要なのは、政治的に公正かどうかという価値基準なのだ。

近年の政治家やマスコミはこの点を履き違えてきた。安倍政権下のモリカケサクラなど権力私物化をめぐる議論も「違法かどうか」ということに関心が集中し、「違法でなければセーフ」という間違った価値観を社会全体に広めてしまった。

これは間違っていると声を大にして言いたい。違法かどうかという司法上の価値判断とは別に(あるいはそれ以上に重要な判断として)政治的に不公正なことは許されないという政治上の価値判断があることを忘れてはならない。安倍政権下で政治家やマスコミが失ったのは、違法性にかかわらず政治的公正さを重視する感覚だ。

野党もマスコミもそこを厳しく追及しないから、政治家は検察や警察に圧力をかけ、立件さえ免れれば問題はないと開き直る歪んだ政治文化がこの国に根付いてしまった。福田氏の「何が問題かわからない」発言は、「違法でなければセーフ」という、近年の政治モラル崩壊を象徴する発言だと私は思う。

以上、自民党と統一教会の関係の何が問題か、そして「何が問題かわからない」という福田発言の何が問題かを論理的に示したつもりだ。マスコミは単に「世論受け」をみながら批判をするのではなく、どこが問題なのかを論理で示す政治報道をしてもらいたい。

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