政治を斬る!

カタログ政局――高市政権を揺らす「3万円」の衝撃

高市早苗総理に突然、スキャンダルが浮上した。総選挙で当選した自民党議員の全員に、1人3万円のカタログギフトを贈っていたという問題である。違法性は低いとみられるが、政権にとってより深刻なのは「世論の印象」だ。

前の石破政権では商品券問題が政権失速の契機となった。今回は「商品券」ではなく「カタログ」だが、構図は似ている。厳しい選挙をねぎらうため――その説明もまた既視感が強い。裏金問題を事実上終わらせ、316議席という圧勝を手にした高市政権は、思わぬ形で足元をすくわれた。

文春報道が火をつけた

発端は文春オンラインのスクープだった。再選議員の関係者が、高市氏の弟である政策秘書が議員会館に近鉄百貨店のカタログギフトを届けたと証言。のしには「衆院議員 高市早苗」と記されていたという。

記事配信直後、高市氏はすぐにXで釈明した。自らが支部長を務める自民党奈良県第二支部からの寄付であり、厳しい選挙を乗り越えた労いの気持ちだと説明。夕食会開催の要望もあったが、公務多忙のため品物にしたとした。

翌日の国会答弁では、自身を除く315人全員に贈ったこと、1人3万円であることを認め、「法令上問題はない」と強調した。だが問題は法律ではない。政治的インパクトである。

違法性より金銭感覚

政治資金規正法上、個人から政治家個人への寄付は禁じられるが、政党支部からの支出として処理すれば違法とは限らない。カタログギフトが有価証券に当たるかも解釈が分かれる。

つまり捜査に発展する可能性はほとんどない。にもかかわらず政局化する理由は単純だ。315人に一斉配布すれば総額は約945万円。物価高に苦しむ社会の中で、この金銭感覚がどう映るかという問題である。

裏金問題を区切った直後、旧安倍派幹部の西村康稔氏や松野博一氏を党執行部に復帰させたばかりのタイミングでもある。「政治とカネ」が再燃する火種になりかねない。

石破政権との重なり

今回の痛手はイメージの問題に尽きる。高市氏は就任後、夜の会食を抑え、従来型の宴会政治から距離を置いてきた。その姿勢は「古い政治との決別」と評価され、支持率上昇の要因となっていた。

しかし金銭を伴う当選祝いは、その象徴性を弱める。若年層や現役世代が抱いた期待が揺らげば、支持率は一気に動く。

前総理の石破茂氏も商品券問題で打撃を受けた。クリーンを掲げた首相が古い慣行に関わっていたこと、さらに原資説明への疑念が広がったことが致命傷となった。

今回も同様に、資金の出どころへの疑念は避けられない。政党支部からの支出という説明が事実でも、官房機密費ではないかという疑いは政治的に残り続ける。

予算審議と政権の曲がり角

高市氏が本来警戒していたのは別の問題だった。韓国の捜査当局が押収した旧統一教会の内部文書に名前が32回も登場したことが報じられ、予算審議での追及が予想されていた。支持率が高いうちに解散へ踏み切った背景には、その計算もあったとみられる。

カタログギフト問題は刑事リスクは小さいが、分かりやすい。世論は複雑な政策論争より象徴的な話題に反応しやすい。結果として別の疑惑から視線を逸らす可能性すらある一方、政権の印象を傷つけるリスクも抱える。

さらに「竹島の日」式典への閣僚派遣見送りなど、保守層の一部から不満が出始めたタイミングと重なった。圧勝後の高揚感の中で進めた人事や政権運営が、初めて逆風にさらされた形だ。

キングメーカーの麻生太郎副総裁を衆院議長に棚上げする人事を打診していたことも発覚。その麻生氏を含む全議員へのカタログギフト配布が表面化したのは皮肉としかいいようがない。

違法かどうかで政権は倒れない。イメージが崩れたときに揺らぐ。小さな話に見える出来事が、大きな転機になるのは政権の常である。

サナエ旋風は続くのか、それとも減速するのか。答えは次の世論調査、すなわち内閣支持率が示すことになる。