本日発売のサンデー毎日に『萩生田光一の野望を暴く!』を寄稿した。今年の永田町のキーパーソンの目で政局を展望しようと思った時に、真っ先に思い浮かんだのが自民党の萩生田光一政調会長だったからである。
萩生田氏は安倍晋三元首相の最側近だった。安倍亡き後の最大派閥・清和会で次の会長候補として森喜朗元首相が名挙げした5人(西村康稔経済産業相、松野博一官房長官、高木剛国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、萩生田光一政調会長)の一人だ。この5人のなかでは最も若く当選回数も一番少ないのだが、安倍氏が急逝した後の立ち回りで一歩リードした感がある。
清和会全体を直撃した旧統一教会問題で萩生田氏も集中砲火を浴びた。なかでも参院選告示前に清和会が東京選挙区に擁立した生稲晃子氏を連れ立って教団関連施設を訪問していたことに批判が集中。清和会の先輩で、都議出身、安倍側近、文科相経験者という共通点の多い下村博文氏が文科相時代に教団の名称変更に関与した疑惑で厳しい批判を浴びたのと並んで、清和会と統一教会の歪んだ関係の象徴的存在となった。
ところが下村氏がマスコミから徹底批判を浴びて失脚したのとは裏腹に、萩生田氏は図太く政調会長に居座り、統一教会問題を棚上げするのに成功してしまったように見える。清和会関係者は「萩生田氏は安倍最側近としてマスコミ各社と濃密な関係を築いており、マスコミからの批判を抑え込むことに成功した」という。
安倍氏が銃撃された時、萩生田氏は経産相だった。そのまま閣内にとどまっていたら、山際大志郎・前経済再生相のように国会審議で吊し上げられて、閣僚辞任ドミノに巻き込まれて失脚していただろう。
だが、今夏の内閣改造・党役員人事で危機一髪で閣内から脱出し、自民党政調会長へ横滑りしたことも奏功した。清和会の実質的オーナーである森元首相が次期会長に萩生田氏を本命視して守ったとの見方もある。
萩生田氏は安倍政権で菅義偉官房長官のもとで官房副長官を務めた。安倍氏と特別な関係にあった加計学園の獣医学部新設問題では、反対に回った麻生太郎氏(当時は副総理兼財務相)を菅氏と連携して抑え込み、菅氏とも気脈を通じるようになった。
清和会のドンとして今なお君臨する森氏と、反主流派のドンである菅氏を後ろ盾にしているところが萩生田氏の最大の強みだ。
年末年始には台湾とインドを相次いで訪問し、安倍氏が構想した「中国包囲網」の外交安保構想の継承者であることをアピールした。さらに安倍氏が防衛費倍増の財源を国債発行で賄うことを主張したことも受け継ぎ、岸田首相や麻生副総裁が主導する「防衛増税」とは一線を画して国債償還ルールの見直しなど増税以外で財源を確保することを検討する自民党特命委員会を新設し、自らトップに立つことを決定。安倍氏の遺志を受け継いで清和会会長の座を射止めることへの意欲を隠さない。
萩生田氏がまず狙うのは幹事長ポストだ。今年後半の防衛増税政局で反対に回って岸田首相を退陣に追い込み、菅氏をポスト岸田に担いで菅政権を樹立すれば、幹事長就任が見えてくる。そこまできたら清和会会長の座は転がり込み、「ポスト菅」の最右翼に躍り出るだろう。そこで「増税撤回」を掲げて解散総選挙を断行すれば統一教会問題は吹っ飛び、自民党も萩生田氏も「蘇生」するーー。
もちろんこのように順調に事が運ぶとは限らない。岸田首相が思いの外粘る可能性もあるし、麻生氏や茂木敏充幹事長も菅ー萩生田ラインへの対抗策を練るだろう。だが、安倍亡き後の政局で最も存在感を増したのは萩生田氏であることは間違いない。
さて、どうなるか。詳しい解説はサンデー毎日でご覧あれ!