政治を斬る!

安倍派5人衆で生き残った萩生田氏、6月解散阻止→9月総裁選で影響力回復に向けて暗躍!6月解散で裏金議員たちを大量落選させない限り、首相の顔が代わっても自民党は何も変わらない

解散したはずの自民党最大派閥・安倍派(清和会)の面々が早くも復活を目指して暗躍を始めた。なかでも意欲的なのが、安倍派5人衆で裏金トップながら事実上お咎めなしで逃げ切った萩生田光一前政調会長だ。萩生田氏の視点から今の政局を分析すると、自民党の腐敗を一掃するには「6月裏金解散」が絶対に必要であることが見えてくる。

🔸清和会再編

安倍派は主に三つのグループに分かれつつあるとみられている。

一つ目は衛藤征士郎氏や下村博文氏らベテラングループだ。大御所の森喜朗元首相に疎んじられ、森氏が引き立てた萩生田氏ら5人衆にも遠ざけられてきた。安倍派解散を機にベテラン勢の復権を目指そうというわけだ。だが彼らについていく中堅若手はほとんどおらず、広がりに欠けるだろう。

次は、5人衆のなかでは裏金額トップながらも比較的軽い処分で逃げ切った萩生田氏だ。世耕弘成元参院幹事長が離党に追い込まれ、最大のライバルである西村康稔前経産相も党員停止1年で9月の総裁選に絡めなくなった。そのなかで萩生田氏は役職停止1年にとどまり、事実上お咎めなしだ。森氏からも最も寵愛され、萩生田氏を中心とする清和会再興を望んでいる。

三つ目は、清和会創始者の福田赳夫元首相の孫で、福田康夫元首相の長男である福田達夫氏だ。派閥本流の福田家御曹司に中堅若手の期待は集まっている。「苦しい時の血統頼み」といえるかもしれない。福田氏自身も5人衆には疎まれてきただけに、派閥リーダーにのしあがる好機とみているに違いない。

🔸6月解散阻止

こうした状況のなかで、萩生田氏が当面重視するのは、岸田首相による6月解散を絶対に阻止することだ。

裏金事件への批判がやまない現時点で解散総選挙を迎えれば、「裏金事件」が最大の争点となり、萩生田氏は自らも東京24区で落選の危機がある。

さらには、萩生田氏を慕う安倍派の中堅若手も、そもそも選挙基盤は弱く、自民党や安倍派というだけで当選を重ねてきた(比例復活を含む)議員も少なくない。6月裏金解散なら落選者が続出し、萩生田勢力は壊滅的打撃を受けることになる。

その後、総裁選が行われても、萩生田氏は自分の子分たちの「票」を高く売りつけることはできない。子分たちの多くは落選し、総裁選での「1票」を失っているからだ。

9月総裁選前の解散総選挙は絶対に阻止し、9月総裁選で萩生田氏の子分たちの「組織票」を総裁候補たちに高く売り、勝ち馬に乗って自らの党内基盤を再び確立させる。これが萩生田氏復権の第一歩だ。その後、解散総選挙が行われて子分たちが落選しても、新政権のなかに自らの居場所さえつくることができれば、さほど痛くはない。

🔸ポスト岸田

萩生田氏は当初、小池百合子都知事と連携を深め、「小池知事が4月の衆院東京15区補選に電撃出馬→国政復帰して自民党へ復党→9月の総裁選に出馬して初の女性首相に」というシナリオを描いていた。ところが小池知事が学歴詐称疑惑の再燃で補選出馬を見送り、国政復帰の芽がほぼ消滅したことで、最強のカードを失った。

萩生田氏は菅義偉前首相、加藤勝信元官房長官、武田良太元総務相と頻繁に会合を重ね、岸田首相や麻生太郎副総裁を牽制している。菅氏とは安倍政権で官房長官・副長官のコンビを務めた仲。加藤氏は菅内閣で官房長官と務めた。茂木派では麻生氏と近い茂木敏充幹事長とライバル関係にある。武田氏は二階派事務総長として裏金事件で矢面に立ったが、萩生田氏と並んで「党の役職停止」という甘い処分で逃げ切った。このメンバーが萩生田氏の頼みの綱だ。

とはいえ、ポスト岸田となると、謹慎中の萩生田氏と武田氏は表に立てず、菅氏は高齢に加えて健康不安も囁かれ、総裁選出馬の気配はない。加藤氏は一部にポスト岸田への期待はあるが、あまりに地味で「選挙の顔」にはなりそうにない。麻生氏と不仲の石破茂元幹事長が有力候補だが、安倍元首相は石破氏とは犬猿の仲だったため萩生田氏周辺を石破擁立でまとめられるかは不透明だ。

とはいえ、萩生田氏にとっては9月総裁選で負け組に回ると、その後の政治人生は極めて厳しいものになる。何としても勝ち馬に乗るつもりだろう。

最大派閥・安倍派は解散に追い込まれたものの、解散総選挙が行われるまでは「元・最大派閥」であり、数の力は無視できない。解散総選挙を行わないまま総裁選に突入した場合、候補者たちは萩生田氏ら安倍派の面々に頭を下げて指示してもらうことが必要となる。石破氏にしても、他の候補にしても、自らに裏金問題の傷がなくても、裏金議員たちの支持を得て勝利した場合、本当に政治改革を断行できるのか、極めて怪しい。

自民党が生まれ変わるとしたら総裁選前の「6月裏金解散」しかなかろう。そこで裏金議員たちを落選という形で退場させ、そのうえで総裁選を実施したほうが、新しい総裁は裏金議員の影響から逃れやすくなる。

総裁選で首相の顔を代えても、裏金議員が暗躍し続ける限り、自民党は何も変わらない。

政治を読むの最新記事8件