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解散より連立拡大――萩生田発言が突きつけた「解散先送り」の本音

「解散するな。その前に、仲間を増やせ」――。
この言葉は、高市総理への助言なのか。それとも、はっきりした牽制なのか。

読売新聞が「高市首相、1月解散を検討」を報じた2日前、注目すべき発言を放ったのが、自民党幹事長代行の萩生田光一氏だ。裏金問題や統一教会問題で一度は失脚しながら、高市政権で中枢に返り咲いた人物である。その萩生田氏が、「解散は来年。今年は連立拡大を優先すべきだ」と明言した。

萩生田氏は、旧安倍派5人衆のなかでも森元総理の寵愛を最も受けた存在だった。官房副長官、文科大臣、政調会長と要職を歴任し、旧安倍派の後継者としての地位を固めてきた。しかし裏金問題で党公認を失い、前回総選挙では無所属での当選を余儀なくされる。その逆風の選挙で支えたのが、当時は総裁選に敗れて「党内野党」を宣言していた高市氏だった。両者の距離はそこで一気に縮まった。

高市氏が世論の反発を承知のうえで萩生田氏を幹事長代行に起用したのは、こうした経緯がある。だが、この人事は公明党の連立離脱の一因にもなった。それでも高市内閣の高支持率の前に、批判は表面化しなかった。

現在の執行部を見渡すと、幹事長の鈴木俊一氏は麻生副総裁の義弟で、調整型の政治家だ。麻生氏自身も85歳となり、表舞台で発言する機会は多くない。政調会長の小林鷹之氏も、主導的に政局を仕掛けるほどの力はまだ持たない。そうしたなかで、自ら発言し、政局を動かそうとするタイプの萩生田氏の存在感は相対的に増している。

その萩生田氏が踏み込んだのが、解散時期の問題だ。党内には「支持率が高いうちに1月解散を」との声もあったが、高市氏は国民民主党や公明党も補正予算に賛成した国会情勢を踏まえ、会期末の6月解散を視野に入れてきた。ところが萩生田氏は、その6月解散すら否定し、「今年ではなく来年に解散すれば、総裁選をやらなくてすむ」と言い切った。

自民党総裁の任期は3年だが、高市氏は前総裁の途中退陣を受け、残り2年の任期しかない。任期満了は来年秋で、総裁選が待っている。歴代総理を振り返れば、解散総選挙以上に高いハードルが、この総裁選だった。岸田氏も菅氏も、総裁選を勝ち抜けないと判断した時点で退陣している。

高市氏は国民人気こそ高いが、党内基盤は脆弱だ。6月解散で勝っても、その後に支持率が下がれば、来年秋の総裁選を乗り切れる保証はない。ならば、来年6月に解散し、その直後に総裁選を迎えた方が、「高市おろし」は仕掛けにくい。萩生田氏の発言は、そうした計算に基づくものだ。

さらに萩生田氏は、解散よりも先に連立拡大を優先すべきだと主張した。現在の自民・維新の関係は閣外協力にすぎず、不安定だ。衆院は辛うじて過半数、参院では過半数に届かない。国会運営は決して盤石ではない。

昨年の臨時国会では国民民主党と公明党が補正予算に賛成し、通常国会も乗り切れる見通しは立った。しかし、解散が視野に入れば、野党側は連立に踏み込みにくい。萩生田氏は「年収の壁は国民民主の手柄だ」と持ち上げつつ、政権内で責任を共有するよう促した。解散は先送りするから、連立に入れ、というメッセージである。公明党にも「与党の中にいた方がストッパーになれる」と復帰を呼びかけた。

萩生田プランを整理すれば、解散は来年に先送りし、まずは今年中に国民民主を連立に加えるという構図だ。自民と国民だけで参院過半数に達し、衆院でも維新の影響力は低下する。公明が戻れば、政権はさらに安定する。

だが高市氏にとって、これは本当に得策なのか。政権運営は安定するが、多党連立になれば高市カラーは薄まる。支持率がじわじわ下がる可能性もある。総理が自ら解散を断行し、勝って初めて政権を掌握する――小泉純一郎や安倍晋三が示したのは、その現実だ。

高市総理も、萩生田氏に助言を受け入れず、6月解散どころか、さらに先手必勝の1月解散に舵を切りつつある。国民民主党は選挙前の連立入りに慎重だ。早く解散総選挙を終わらせ、その後に連立を組むーー高市首相の描く政局シナリオは、萩生田氏とは真反対にむかっている。