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岸田首相は震災対応を掲げ3月辞任回避を狙う!3月訪米の延期も画策〜退陣時期をめぐるスケジュール闘争の鍵を握る浜田靖一国対委員長は誰の味方か?

岸田文雄首相は3月の訪米と予算成立を花道に退陣するのか。政権与党内の攻防はスケジュール闘争に入っている。

自民党のキングメーカーである麻生太郎副総裁は、内閣支持率が一桁台に落ち込んだ岸田首相では解散総選挙は戦えず、9月の自民党総裁選で再選も果たせないと判断し、3月の予算成立と同時に退陣表明させ、緊急の総裁選で茂木敏充幹事長を担いで勝利し、麻生派・茂木派・岸田派の主流3派体制を維持する戦略を描く。

4月28日投開票の衆院補選は旧統一教会問題やセクハラ疑惑を追及されるなかで死去した細田博之前衆院議長の島根1区に加え、公選法違反容疑で逮捕された柿沢未途衆院議員が辞職した場合は東京15区でも実施される可能性がある。さらに安倍派の裏金事件で議員辞職に追い込まれる現職がいれば、さらに補選が増えるかもしれない。いずれにしろ自民党には大逆風だ。

仮に新政権に移行したとしても、いきなり衆院補選で惨敗して失速するのは避けたいところ。このため、新政権は発足後ただちに衆院解散を断行し、衆院補選を吹き飛ばしてしまいたい。そのためには4月16日の衆院補選の告示前に衆院を解散する必要がある。

ここから逆算すると、3月22日ごろ予算成立→岸田首相が退陣表明→3月下旬に緊急の自民党総裁選(1週間程度)→4月上旬に新内閣発足→国会で所信表明演説と衆参代表質問→4月12日ごろに衆院解散、という日程で進めなければならない。なかなかタイトなスケジュールだ。

このためには通常国会を1月22日に召集したいというのが、「岸田首相の3月退陣論」を描く麻生氏らの本音である。

これに対し、岸田首相は3月退陣を回避するために、国会召集をできるだけ遅らせたい。そこで1月26日に召集したい考えだ。

岸田首相が通常国会に提出する新年度当初予算案に能登半島地震の支援・復興に備える予備費を積み増すことを表明し、昨年末の閣議決定をやり直すことにしたのは、国会召集をできるだけ先送りする狙いもあるだろう。さらには東京地検特捜部による自民党安倍派などの裏金事件の行方を見極めることも、国会召集を遅らせる一つの口実となる。

さらには3月上旬で調整が進んでいる訪米も、地震対応を理由に5月の大型連休に延期し、退陣時期を出来る限り先送りすることも画策するに違いない。

いずれにせよ、このようなスケジュール闘争で大きな鍵を握るのは、就任したばかりの浜田靖一国対委員長である。

安倍派の裏金事件を受けて、岸田首相は安倍派5人衆を一斉に更迭した。ここで注目を集めたのは、松野博一官房長官と高木毅国対委員長の後任人事だった。

官房長官の後任として最初に浮上したのが、無派閥の浜田氏だった。

派閥の裏金問題に批判が高まるなか、無派閥の浜田氏を推薦したのは、麻生氏だ。岸田首相は最側近の木原誠二幹事長代理を通じて浜田氏に官房長官を打診したが、固辞された。浜田氏はもともと「国対族」であり、国対委員長に落ち着いた。

麻生氏が浜田氏を官房長官に推薦したのは、岸田派ナンバー2の林芳正氏が官房長官になるのを防ぐ狙いがあったからだ。林氏は、麻生氏の宿敵である古賀誠元幹事長と近く、麻生氏はずっと警戒してきた。浜田氏はかつて麻生内閣で防衛相を務めている。浜田氏なら麻生氏の意向に沿って動くと判断したのだろう。

岸田首相は麻生氏の意向を受け入れ、浜田氏に官房長官就任を打診して固辞され、やむを得ず、自派閥の林氏を起用したーーということになっている。

これについて岸田派関係者は「首相はこれを機に官房長官ポストを岸田派が抑えるつもりでいたが、麻生氏の意向をはね返せなかった。そこで、浜田氏に官房長官を固辞してもらったうえで国対委員長に起用する話を内々につけたうえで、当初予定通りに林氏を起用した。すべては麻生対策だった」と解説する。

これが真実だとすると、浜田氏は麻生氏よりも岸田首相や林官房長官に気脈を通じていることになる。浜田氏は林氏と国会議員のバンド「Gi!nz(ギインズ)」の仲間で、とても親しいのだ。岸田派関係者は「麻生氏は林氏と浜田氏の親交の深さを読み違えたのではないか」とみる。

実際、浜田氏は国対委員長に就任する後、同じ国対族として親しい御法川信英氏の国対委員長代理への起用を条件に掲げた。御法川氏はかつて麻生派に所属したが退会し、麻生氏と関係が悪化していた。その御法川氏の起用にこだわり「麻生氏との距離」を示したのである。

この流れからして、浜田氏は今後の国会日程を描くにあたり、麻生氏よりも岸田首相や林官房長官の意向に従う可能性は高い。その結果、3月退陣論の日程が窮屈になり、岸田首相を降ろしても4月28日投開票の解散総選挙が間に合わなくなれば、岸田首相は当面延命することになる。その場合、3月訪米も5月の大型連休に先送りされる可能性が出てくる。

林官房長官と浜田国対委員長の起用は今のところ、岸田首相の3月退陣論を描く麻生氏の影響力を抑え、岸田政権延命の方向に働いているとみていいだろう。

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