政治を斬る!

高市旋風の陰で起きた「1100万票移動」――比例データが示す歴史的再編

「高市旋風」が吹き荒れた今回の総選挙。結果は自民党の一人勝ち――。だが本当に注目すべきは勝敗ではない。有権者の投票先が、地殻変動のように動いたことである。

自民党は比例で2100万票。昨年の参院選から実に820万票増やした。その一方で、新党「中道改革連合」は220万票減、国民民主党は210万票減、参政党は320万票減、れいわ新選組は220万票減、日本保守党は150万票減。合計1100万票以上が既存野党・保守新党から消えた計算になる。

単なる「自民圧勝」と片付けるのは早計だ。比例データを丹念に追うと、支持基盤の総入れ替えが起きている。


保守票はどこへ戻ったのか

全国の有権者は1億350万人。前回より66万人減り、投票率は56.3%と2.4ポイント上昇した。ただ昨年の参院選よりは2.2ポイント低く、投票総数は240万人減っている。母数が減る中で自民党だけが1.6倍の得票を記録した。

昨年の参院選では、石破政権への不満から保守層が国民民主党、参政党、日本保守党へ大量に流出した。しかし今回、高市早苗首相の誕生で潮目は変わる。

国民民主党は560万票(210万票減)、参政党は430万票(320万票減)、日本保守党は150万票(150万票減)。三党合計で680万票の減少だ。ほぼ丸ごと自民に戻ったと見るのが自然だろう。

それでも自民増加分820万票には140万票足りない。この差をどう読むか。私は、公明党の「与党票」が自民へ還流したと考える。公明党は連立解消後も比例基盤を維持してきたが、創価学会票以外に、自民候補とのバーター票や国土交通大臣ポストを背景にした業界票があった。与党であるがゆえの100万票規模の上乗せが、自民へ戻った可能性は高い。


「中道改革連合」1+1=1.6の誤算

立憲民主党は昨年740万票、公明党は521万票。合計1260万票だった。だが両党が合流した新党「中道改革連合」は今回1040万票にとどまる。220万票減。期待値としては「1+1=2」以上を狙うべきところが、1.6に縮んだ。

そもそも立憲も公明も支持層の高齢化が進み、若年・現役世代への浸透力を欠いていた。言わば「弱体化同士の連合」である。立憲が安全保障や原発再稼働で公明に歩み寄り、消費税減税まで掲げたことは、従来支持層の一部に違和感を与えた。

では失われた220万票はどこへ向かったのか。共産党は250万票で30万票減、れいわ新選組も大幅減で、受け皿にはなっていない。立憲票はむしろ国民民主党、そして新勢力「チームみらい」へ流れた。


「チームみらい」躍進の意味

総選挙初登場のチームみらいは380万票。昨年比230万票増、2.5倍の伸長である。共産、れいわ、日本保守党を追い抜き、参政党に150万票差まで迫った。

象徴的なのは、全政党で唯一「消費税減税」を掲げなかった点だ。財政規律を重視する層、とりわけ高齢世代の一部が、立憲からみらいへ移動したとみられる。立憲の減税路線転換への失望が背景にある。

また「民主党」と書かれた無効回避票の按分も、今回は国民民主党が多くを吸収した可能性が高い。ただし国民民主党自身も210万票減らしている。立憲からの流入以上に、保守層が自民へ戻った。

支持基盤は大きく塗り替えられた。


れいわ・参政の明暗

れいわ新選組は390万票から170万票へ、220万票減。山本太郎代表の病気辞職後、大石あきこ共同代表が前面に立ったが、従来の「格差是正」期待層の一部が離反した。残った170万票は、よりイデオロギー色の強いコア支持層とみられる。

参政党も320万票減らしたが、430万票を確保した。神谷宗幣代表が高市政権との対決姿勢を打ち出し、保守層の一部は自民へ戻ったが、草の根組織票は残った。国民民主党の560万票、維新の490万票に次ぐ存在感を維持している。


歴史的転換点

今回の総選挙は、自民党の圧勝以上に「支持基盤の再配列」が核心だ。

国民民主・参政・保守の票は自民へ。公明の一部も自民へ。立憲票は国民民主とチームみらいへ。れいわ票は分散。

1100万票規模の移動は、単なる選挙結果ではなく、政党体系の再構築を意味する。新しい支持基盤の上に、各党はどの立ち位置を取るのか。自民は保守回帰路線を維持するのか。国民民主は連立か再編か。中道改革連合は立て直せるのか。

比例データが示したのは、静かな革命だった。日本政治は、確実に次の局面へ入ったのである。