内閣支持率は70%台。永田町では「高市人気は無敵だ」という声が広がっている。だが、政治の世界で本当に怖いのは、世論調査の数字がそのまま「票」になると錯覚することだ。
高市ブームが現実なのか、それとも幻想なのか。その答えは、リアルな選挙でしか出ない。
その試金石となるのが、1月8日に告示された福井県知事選、そして来月告示の石川県知事選である。
どちらも、まさかの保守分裂。しかも福井は、高市早苗総理の夫の地元だ。ここでつまずけば、「高市神話」は早くも揺らぎかねない。
福井知事選――負けられない初戦
福井県知事の杉本氏が昨年11月、セクハラ問題で突然辞任し、年明け早々の知事選となった。保守王国・福井は騒然とし、短期間で候補者選びが進んだ。
名乗りを上げたのは二人。県庁の生え抜きで副知事を務め、越前市長を2期務めた山田氏(67)。もう一人は、外務省を退職したばかりの元官僚、石田氏(35)だ。
自民党県連は判断を先送りし、当初は自主投票で保守分裂の構えだった。
ところが告示2日前、自民党本部が急転直下で動く。高市総理も出席した役員会で、山田氏の「支持」を決定した。推薦ではないが、落選すれば「高市自民党の敗北」と受け止められる。事実上の推薦である。
高市総理は山田氏に「必勝」と書かれた色紙を手渡し、笑顔で握手を交わした。ここまで踏み込んだ以上、この知事選は高市政権の初戦であり、負けられない戦いとなった。
保守王国・福井の地殻変動
福井と石川は、かつて旧森派・旧安倍派の牙城だった。しかし森喜朗元総理は高齢となり、裏金事件で旧安倍派は解散。かつての影響力は急速にしぼんでいる。
福井でも、旧安倍派の重鎮で元参院議長の山崎氏は県連会長を務めるものの、県連をまとめ切れない。旧安倍派の弱体化が、今回の保守分裂を招いた一因だ。
福井1区では旧安倍派の稲田朋美元防衛相が安倍元総理に寵愛され、長く存在感を示してきたが、選択的夫婦別姓に賛成する立場を示すなどリベラル色を強めたため、安倍氏に遠ざけられた。安倍氏がかわって引き上げたのが高市氏である。稲田氏は高市政権下で影は薄い。
福井2区・3区は統合され、前回総選挙では旧安倍派5人衆のひとりである高木氏(旧3区)と、高市氏の夫・山本氏(旧2区)が激突する保守分裂選挙になり、共倒れした。立憲民主党に漁夫の利で議席を奪われたのだ。
福井は、参政党・神谷代表の出身地でもある。昨夏の参院選で吹いた「日本人ファースト」の風がなければ、高市政権の誕生もなかったかもしれない。
そんな因縁の地での保守分裂選挙が、高市政権の初陣となる。偶然とは思えない政治的必然が重なっている。
石川知事選――もう一つの試練
石川県知事選は2月19日告示。森氏にスカウトされ、プロレス界から政界入りした馳浩知事が再選を目指す。自民党本部は現職優先で推薦を決め、高市総理が推薦状を手渡した。
しかし、4年前に大接戦を演じた前金沢市長・山野氏が再び出馬。地元メディアの世論調査では、山野氏が馳知事を上回る結果も出ている。
能登半島地震対応への不満、そして森氏の影響力低下が、背景にある。
この選挙は、単なる保守分裂ではない。維新と国民民主の代理戦争という側面を持つ。
馳知事は維新と近く、顧問も務めている。国民民主は山野氏を支持。高市政権を裏で動かす麻生副総裁が、維新を切り、国民民主を取り込もうとしている構図も透けて見える。
高市人気は票になるのか
高市内閣は、歴代屈指の高支持率で船出した。しかし自民党支持率は回復していない。
「内閣支持率は高いが、選挙は別」――その現実を突きつけられる可能性が、福井と石川にはある。
連敗すれば、解散権の威力は一気に落ち、6月解散は遠のく。
連勝すれば、「高市推し」は本物だと証明され、解散への追い風となる。
保守分裂の北陸2連戦。
高市ブームが幻想なのか、現実なのか。
真冬の北陸で、その答えが初めて可視化される。