政治を斬る!

原油高騰と株価急落――イラン攻撃が揺るがす高市政権

中東情勢の激変が、日本の政治と経済に暗い影を落としている。

発端は、アメリカとイスラエルによるイランへの軍事攻撃だ。遠い中東の戦争が、日本の生活を直撃し始めた。原油価格は急騰し、ガソリン価格は1か月以内に1リットル200円を突破、最悪の場合300円近くまで上昇する可能性も指摘されている。株式市場も動揺し、日経平均株価は5万円を割り込むとの観測が広がっている。

つい最近まで、日本の政治は安定しているように見えた。自民党は総選挙で圧勝し、高市早苗首相の一強体制が盤石と見られていたからだ。

しかし中東情勢の急変は、その安定を一瞬で揺るがした。ガソリン価格は高騰し、株価は急落。それでもなお内閣支持率だけは高止まりしているという奇妙な状況が続いている。

19日にはワシントンで日米首脳会談が予定されている。高市首相はトランプ大統領と向き合うことになるが、この激震は高市政権を揺るがすことになるのだろうか。


ガソリン200円時代の現実

野村総合研究所の試算によると、今後のガソリン価格は、最も実現性が高いシナリオでもレギュラー1リットル204円に達する見通しだ。中東全域に軍事衝突が拡大する最悪のケースでは、328円に達する恐れもある。

高市政権は昨年末、野党とガソリン税の暫定税率廃止に合意した。1リットルあたり25円10銭の税負担がなくなり、ガソリン価格は一時的に下がった。しかし、その効果は原油高騰によって一瞬で吹き飛び、再び急速な値上げ局面に入るのは避けられない情勢だ。輸送コストが上がれば、あらゆる商品価格が押し上げられ、物価高はさらに加速する。

問題は、いま国会で審議されている新年度当初予算案に、この原油高騰への対策が含まれていないことだ。衆院予算委員会では、中道の後藤祐一議員が「暫定予算に入れてしまえばいい」と提案した。高市首相が1月解散を断行した影響で予算審議は例年より1か月遅れ、年度内成立は難しくなっている。野党は暫定予算の編成を求めており、後藤氏はそこにガソリン対策を盛り込むべきだと迫ったのである。

しかし高市首相は「当初予算にないものは暫定予算に入れられない」として慎重姿勢を崩さない。「原油価格の上昇を見ながら対策を考える」と答弁したが、後藤氏は「3〜4週間で200円を超える。これは第三次オイルショックだ」と批判した。

仮に補正予算が組まれるとしても成立は数か月先になる。急激な物価上昇のなかで、日本の家計はそれまで持ちこたえられるのだろうか。


消費税減税は間に合うのか

高市首相は超党派の「国民会議」を立ち上げ、給付付き税額控除、つまり所得税減税の議論を始めようとしている。しかし制度実現は早くても2年後と見られている。

それまでのつなぎとして掲げているのが、総選挙公約でもある「食料品の消費税率ゼロ」だ。だがこれも実施は早くても来年からであり、自民党内からは反対論も強い。そもそも食料品だけ税率をゼロにしても、本当に価格が下がるかは不透明で、事業者の事務負担も増える。

さらに、今回の原油高騰による物価上昇は食料品だけにとどまらない。エネルギー価格の上昇は経済全体に波及する。食料品減税だけでは、とても対策とは言えない状況だ。

緊急対応として考えられるのは財政出動だ。しかし巨額の財政支出は円安を加速させ、輸入価格をさらに押し上げる恐れもある。日本の経済政策は完全に手詰まりの様相を呈している。


株価バブルの終わり

もう一つの衝撃は株式市場だ。

イラン攻撃の前日、日経平均株価は5万9000円近くに達し、史上最高値を3日連続で更新していた。高市政権の積極財政への期待が市場を押し上げていたのである。

しかし市場の状況はどこか歪んでいた。円安が加速しているのに株価だけが上がるという奇妙な現象が続いていたからだ。金融関係者に尋ねても「株価が上がっている以上、円安は問題視されていない」という答えが返ってくるばかりだった。

株式市場は明らかにバブル的な熱気に包まれていた。高市政権への期待が、株価を押し上げ続けていたのである。

だがイラン攻撃で空気は一変した。3月9日、日経平均株価は史上3番目の下げ幅を記録。円も債券も下落する「トリプル安」の様相を呈した。トランプ大統領が翌日「戦争はほぼ終了した」と発信すると株価はやや持ち直したが、戦闘長期化への不安が再燃すれば再び下落するのは確実だ。

日本経済は賃金も設備投資も伸びない中で、株価だけが上がってきた。株を持つ人と持たない人の格差は拡大し、株価上昇が経済の弱さを覆い隠してきた面もある。その株価がついに崩れ始めたのである。


試される日米同盟

政治的な最大の焦点は、3月19日に予定される日米首脳会談だ。

アメリカとイスラエルによる先制攻撃は、国際法違反の可能性が極めて高いと指摘されている。イギリスをはじめEU主要国も距離を置いている。一方、高市首相はイランの反撃は強く批判するものの、米国の攻撃については「法的評価は困難」との立場にとどめている。

日本外交はこれまで「日米同盟」と「国際法遵守」を二本柱としてきた。しかし今回、この二つが真っ向から衝突している。

会談では、トランプ大統領がイラン攻撃への明確な支持を求める可能性がある。さらに、ホルムズ海峡のタンカー護衛のため、自衛隊の後方支援を要請される可能性もある。その場合、安全保障関連法が定める「重要影響事態」や「存立危機事態」の認定が必要になる。

しかし、その前提となるのは、アメリカの軍事行動が国際法に違反していないと認めることだ。

総選挙で圧勝し、高市一強体制が完成したはずの日本政治。だが中東情勢の激変は、経済と外交の両面で、その基盤を揺さぶり始めている。ワシントンでの首脳会談は、高市政権の真価が問われる場となりそうだ。