政治を斬る!

税収は6年連続で過去最高を更新しているのに「税収増分を国民にお返しできる状況にはない」と断言する「経済オンチ」の総理大臣〜我が国最大のリスクがここにある

石破茂首相が衆院予算委員会で「国民のみなさまに税収増分をお返しできるような状況にはない」と発言した。石破首相が「財政の収支は均衡させなければならない」という財務省いいなりの緊縮財政派であることはこれまでも繰り返し指摘してきたが、ここまで経済オンチなのかとびっくりする発言の内容だ。

石破発言を詳細に分析してみよう。

①「国民のみなさまに税収増分をお返しできるような状況にはない」
2025年度の当初予算案で税収は78兆円。6年連続で過去最高を更新している。

しかも財務省の税収見積もりは上振れが続いている。21年度は+9.6兆円、22年度は+5.9兆円、23年度は +2.5兆円、24年度は+3.8兆円。財務省が想定したよりもはるかに多くの税収があるのだ。税金を取りすぎているというほかない。
それなのに「税収増分をお返しできる状況ではない」としたら、どんな状況なら「お返しできる」のか?

②「国民の皆様に還元したいと我々も思っている」

税収が6年連続で過去最高なのに、還元できる状況にないといいながら、「還元したいと思っている」というのは、もはや口先ばかりとのそしりを免れない。これでは首相の言葉を信用できない。

しかも「我々」とは誰か? 財務省のことだろうか。

「私は」というのならまだわかるが、「我々」というように主語をぼかして責任の所在をあいまいにする人は信用しないほうがよい。


③「高額所得者の方の所得税は確かに増えているが、税金を納められない方もたくさんおられる」

これは失言といっていい。
税金の役割は「財源確保」ではない。①世の中に出回っているお金を課税で回収してお金の量を調整し、通貨の暴落を防ぐ、②豊かな者に課税して富を再分配し、貧富の格差を是正する、③社会に悪影響を与える行為(酒やタバコ、二酸化炭素排出など)に課税して抑制するーーの3点だ。
石破発言は「富の再分配」を否定するものである。高額所得者に課税して低所得者に分配することこそ、財政のいちばん大切な役割だ。

ところがそれを「税収増分を還元できない」理由に掲げるのは、税金の役割を「財源確保」と勘違いしているからだ。まさに財務省のいいなり(先日亡くなった森永卓郎氏がいう「ザイム真理教」)である。

ちなみに立憲民主党の野田佳彦代表も同じ財政観を持っている。二大政党の党首がどちらも「ザイム真理教」なのは、日本社会にとって大損失だ。


④「国の財政状況、不測の事態に備えて、さらに安定させていくことも必要なのではないかと考えている」
不測の事態とは何か?

東日本大震災では復興増税で、コロナ禍は国債発行それぞれ対処してきた。

いま国民は物価高に苦しんでいる。他方、税収は過去最高を6年連続で更新している。

それでもなお不測の事態に備えるとはどういうことだろう。それなら復興増税は何だったのか?


⑤「国民のみなさま方にお返しできるほどの税収増があるのか」「できるものならお返ししたいが、今の状況はなかなかそれを許すような状態ではない」
どれほど税収が増えたら、お返しできるのか?

やはり立憲の野田代表との間で消費税増税を旗印にした大連立を進めることを念頭に置いているとしか思えない発言である。

政治を読むの最新記事8件