石破茂首相にとって、まさに「トドメの一撃」となるかもしれない。自民党内で「石破おろし」の声が高まる中、今度は首相自身の「政治とカネ」の問題が浮上した。
なんと、石破首相が自民党の新人議員15人に“お土産”として10万円分の商品券を配っていたのだ。
これは、政治家個人への寄付を禁じた法律に抵触する可能性が高い。石破首相自身は「違法ではない」と強弁しているが、自民党内からも「これはもう持たない」との声が広がり始めた。
果たして石破首相は、この嵐を乗り切れるのか?
「違法ではない」とする石破首相の主張
石破首相は3月3日夜、昨年の総選挙で初当選した自民党議員15人を首相公邸に招いて懇親会を開いた。それに先立ち、ひとりあたり10万円の商品券を「お土産」として配布していたことが、3月13日のマスコミ報道で明るみに出た。
石破首相は、「会食のお土産代わりに家族へのねぎらいとして渡した」「ポケットマネーから出した」「政治活動に関する寄付ではなく、政治資金規正法の問題はない」と釈明した。しかし、同時に「多くの皆様にご心配をおかけし、申し訳ない」と謝罪もしている。
この説明には大きな問題がある。
政治資金規正法は、政治家個人への寄付を禁じている。これは、政治家が収支報告書を提出する義務を負わないため、資金の流れが不透明になり、「裏金」となる可能性があるからだ。
石破首相の理屈がまかり通るなら、「これは家族へのねぎらいだ」「これは生活費の足しだ」と言い張れば、いくらでも「裏金」を渡すことができてしまう。
しかも、自民党総裁である首相が、自民党の新人議員を首相公邸に招いて会食をする行為は、誰が見ても「政治活動」だ。石破首相の主張は、まったく説得力がない。
仮に石破首相の言うように「政治活動ではない」としても、「お土産」として高額な商品券を配る行為は、社会常識の範囲を超えている。しかも、国会では自民党の裏金事件の審議が続く最中だ。政治不信を高めた政治責任は免れない。
「クリーン」が唯一の売りだったはずが…
国会では、自民党の裏金問題が追及され、企業・団体献金の全面禁止をめぐる議論が進んでいる。その最中に、首相自身が「政治とカネ」の問題を引き起こしてしまったのは痛打だ。
しかも、石破首相にとって「クリーンな政治」は最大の売りだったはず。それが、一瞬にして崩れ去った。内閣支持率の下落は避けられないだろう。
特に注目すべきは、石破首相の盟友であり、高校無償化と引き換えに予算案に賛成した維新の前原誠司共同代表でさえ「一種の買収だ」と厳しく批判したことだ。前原氏は「最もそういうことをしないタイプの人だと思って付き合ってきたので、正直驚いている」と突き放した。これは、前原氏も石破政権の終焉が迫っていることを見越して距離を取ろうとしている証拠ではないか。
これは「石破おろし」の一環なのか?
今回の商品券問題が報道されたタイミングにも注目したい。これは単なるスクープではなく、明らかに「石破おろし」の一環と考えられる。
自民党の国会議員15人に商品券を配れば、そのうちの誰かは「反石破」の実力者とつながっているのは当然だ。旧安倍派の萩生田光一、反石破のドン・麻生太郎、総裁選リベンジを狙う高市早苗──彼らが情報をリークした可能性は大いにある。
さらに、石破総理の最大の危機は、党内主流派にも敵がいることだ。森山幹事長は立憲民主党の安住淳と手を握り、参院選後の「増税大連立」を画策している。岸田文雄前総理も、総理再登板を狙って水面下で動いている。このように、石破総理の退陣を望む勢力は自民党内に溢れている。
事実、3月12日には旧安倍派の西田昌司参院議員が「石破では参院選を戦えない」と公然と退陣を要求したばかりだった。その翌日に、商品券問題がリークされた。まるで示し合わせたかのようなタイミングだ。
これは政局の典型的なパターンであり、総理を追い込む「総理おろし」の手法そのものである。
石破政権の未来は?
石破首相は、ただでさえ党内基盤が弱く、参院選を前に孤立していた。そこへ今回のスキャンダルが直撃し、「石破では選挙が戦えない」との声が高まるのは避けられない。
すでに「ポスト石破」をめぐる動きが活発化している。反主流派の高市早苗氏や小林鷹之氏は、ちょうど石破批判を始めたところだった。主流派では林芳正官房長官を推す声が高まっている。さらに、岸田文雄前首相が麻生太郎元首相や茂木敏充前幹事長と会食して関係修復を図るなど、次の政権をにらんだ動きも加速している。
このままでは、3月末の予算成立に向けて「石破おろし」が本格化する可能性が高い。
スキャンダルは往々にして「第一弾」で終わらない。第二弾、第三弾と新たな疑惑が浮上し、追い込まれるのが常だ。
すでに政局は動き始めた。自民党内では、石破退陣後の政権構想が着々と練られている。商品券問題が石破政権の命取りとなる日は、そう遠くないかもしれない。