石破茂総理の「お金のキレイ」イメージが、いよいよ完全瓦解しつつある。週刊文春が報じた“裏金3000万円”疑惑が、政界に大きな衝撃を与えている。
告発したのは、石破氏の地元・鳥取県で長年支援してきた元側近。石破氏が初めて自民党総裁選に挑んだときに随行したこともある人物だ。
証言は実名で、石破氏とのツーショット写真も掲載された。匿名の情報とは一線を画す、信憑性の高い内容といえる。
その元側近によれば、2003年から2014年にかけ、石破氏側から求められて毎年100枚〜300枚のパーティー券を購入。代金は封筒に現金を詰めて手渡し、金額の空欄になった領収書の束を受け取っていたという。
さらに、陣中見舞いとして現金100万円を5回にわたって渡したとの証言もあり、総額は3000万円超。政治資金収支報告書には一切記載がないという。
この「不記載」が事実なら、旧安倍派の裏金事件と構造はまったく同じだ。
現行の政治資金規正法は、献金の受領を禁じてはいないが、収支の透明性を担保するための記載義務を課している。記載していれば問題はなく、記載がなければ「裏金」として違法性が問われる。
石破総理は、この旧安倍派の裏金事件を厳しく批判し、「クリーンな政治」を掲げて昨年の自民党総裁選を制した人物である。さらに、総選挙では旧安倍派の幹部を公認から外し、自民党の信頼回復を誓っていた。
その本人が同じような「裏金」を受け取っていたとなれば、「同じ穴の狢」と言わざるを得ない。
石破事務所は「法令に従い適正に処理している」とコメントを出したが、内容は極めて抽象的だ。元側近が具体的な金額・方法を明かしているのに、総理側は証拠も出さずに形式的な否定コメントを繰り返す――これでは国民の不信感は深まる一方だ。
思い起こされるのは、石破氏のもう一つのスキャンダル、「商品券配布」問題である。総理就任直後、新人議員に10万円相当の百貨店商品券を配ったことが明らかになった。石破氏はこれを認めたうえで「私的な慰労。ポケットマネーであり、政治活動とは関係ない」と釈明したが、永田町には信じる声はほとんどなかった。
「ドケチ」で知られる石破氏が私財を投じて商品券をばらまくとは思えず、その出所が官房機密費だった可能性が濃厚となった。現職総理による現金や物品の配布が常態化していた疑いが持ち上がり、これまで以上に「政治とカネ」への国民の不信を高める結果となった。
この商品券スキャンダルで、石破総理は二重の致命傷を負った。一つは、「お金にキレイ」という自己イメージを喪失したこと。もう一つは、「平気でウソをつく人物」という印象を国民に植えつけてしまったことだ。ポケットマネー発言が真実だと信じる者はほとんどいない。「むしろ正直に“官房機密費”だと認めた方がマシだった」という声すらある。
そして今、文春砲によって、石破氏の信頼は完全に崩壊したといってよい。
だが、ここでさらに問題なのは、野党第一党・立憲民主党の対応である。
商品券スキャンダルの際、立憲の野田佳彦代表らは政治倫理審査会での説明を求めるにとどまり、具体的な追及には動かなかった。その後、トランプ前大統領による日本製品への関税発動を受けた緊急日米交渉が始まると、石破スキャンダルは後景に退いた。
現在も、野田代表は「政治空白をつくるわけにはいかない」として、内閣不信任案提出には極めて慎重な構えを崩していない。
その背景には、自民・公明・国民民主の連立による新政権が成立する懸念や、衆参ダブル選挙で立憲が壊滅的敗北を喫する恐れがある。
野田代表の狙いは、石破政権のまま参院選を迎え、選挙後に「トランプショック」という“国難”を理由に自民党との大連立に持ち込むことだとされる。そうした政治的打算が、商品券スキャンダルや今回の裏金疑惑に対する追及を鈍らせているのだ。
だが、今回の文春砲は、もはや「うやむや」にできる次元ではない。総理大臣自身の裏金疑惑は、まさに「国難」そのものだ。
これに対し、徹底的な国会追及と明快な政治責任の追及ができなければ、立憲民主党は野党第一党の資格を失う。
石破総理の発言や説明を信じる国民は、もはやほとんどいない。今、石破総理以上に問われているのは、立憲民主党だ。
内閣不信任案を提出せず、この疑惑を放置するなら、参院選で国民の審判を受けるのは、自民党と石破政権だけでは済まない。立憲民主党もまた、共に奈落の底へ転落する――そんな危機が、現実味を帯びてきている。