自民党が8月8日に開催した両院議員総会で石破退陣への流れが見えてきた。
自民党内で噴出する首相退陣要求を受けて、総裁選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)が総裁選の前倒し実施を求めるか否か、8月末に国会議員と都道府県連代表に意思を確認し、過半数が要求した場合は9月に総裁選を行うというものだ(これほど退陣要求が相次いでいるのだから、過半数が総裁選の前倒し実施を求めるのはほぼ間違いない)。事実上、ポスト石破レースが始まる。
石破首相は総裁選実施が決まった時点(8月末から9月上旬)で不出馬を表明し、事実上の退陣表明となるのだろう。その後、総裁選が始まり、新総裁が選出され、国民、維新、立憲との連立協議を経て臨時国会を召集し、石破内閣が総辞職して新内閣が発足するのは、9月下旬〜10月上旬になりそうだ。
石破退陣への流れを、自民党則の規定をもとに整理してみよう。
自民党総裁の任期は3年だ。党則6条は「総裁は、別に定める総裁公選規程により公選する」と定めている。総裁公選規程には、国会議員と党員が投票する総裁選ルールが記されている。3年に一度の「フルスペック」(完全実施型)の総裁選だ。
党則6条2と3は「総裁が任期中に欠けた場合」の対応を定めている。①原則として、フルスペックの総裁選を実施するものの、②「特に緊急を要するとき」は、党大会に代わる両院議員総会を開催し、衆参国会議員と各都道府県連代表3人による投票で総裁選を実施することもできると定めている。
「総裁が任期中に欠けた場合」とは、死亡した場合に加え、退陣を表明した場合も含まれる。過去のほとんどのケースは退陣表明を受けた「緊急の総裁選」である。
フルスペックの場合は選挙期間は2〜3週間。地方で候補者討論会なども行われ、党員票が勝敗を左右する。
一方、両院議員総会で実施する「緊急の総裁選」は1週間程度の短期決戦となり、派閥の数の力がモノを言う。
このどちらを選ぶかは、現執行部に権限がある。勝敗を大きく左右するポイントだ。
今回の場合、石破首相は退陣表明をしていない。首相辞任は続投を表明し、党内から退陣要求が相次いでいるケースだ。
そこで重要になるのは、党則6条4と5である。「総裁任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県連代表各1名の総数の過半数の要求」が総裁選挙管理員会にあった場合、総裁が任期中に欠けた場合のルールにのっとって総裁選を行うという内容である。
これは「総裁リコール規程」と呼ばれている。ただし、形式的には「リコール」ではなく「総裁選の前倒し」である。つまり、石破総裁の退陣を表明して総裁選を行うのではなく、国会議員と都道府県連代表の過半数の要求を受けて、総裁選挙管理委員会が総裁選を実施するというものだ。
もちろん、石破総裁は再選を目指して出馬することはできるが、国会議員と都道府県連代表の過半数が総裁選の前倒し実施を要求しているのだから、勝ち目はほとんどなく、不出馬に追い込まれるのがふつうだ。つまり、事実上の総裁リコールといっていい。
自民党内から石破首相の退陣要求が噴出する事態を受け、この規定にのっとり、総裁選挙管理委員会が国会議員と都道府県連代表の意思を確認し、過半数から要求があった場合は総裁選を前倒しして実施するということを、8月8日の両院議員総会で確認したというわけだ。
いまの状況なら、過半数が総裁選前倒しを要求するのは、ほぼ間違いない。つまり、フルスペックか、緊急型かはともかく、近く総裁選が行われることが、ほぼ確定したといえるだろう。
総裁選挙管理委員会の逢沢委員長は、意思確認の時期について、森山幹事長が8月末にとりまとめる「参院選の敗北総括」の日程を考慮するとしている。意思確認は8月末以降にはじまるとみられ、総裁選実施は9月になりそうだ。
石破首相は総裁選実施の決定を受けて不出馬を表明し、退陣する公算だ。総裁選の期間中に政治空白をつくるわけにはいかないとして、日米交渉などに専念すると言うつもりだろう。
内閣総辞職まで2ヶ月、石破首相の在任期間を少しでも長引かせ、そのうちに戦後80年談話や日米首脳会談をできれば実現させて「花道」としてもらおうという、森山裕幹事長の苦肉の策といえよう。
裏を返せば、駄々をこねる石破首相の延命のために、この2ヶ月、国政は停滞する。 政治空白をつくってはならないという石破首相自身が、2ヶ月間の政治空白を生む元凶となっている。
自民党の統治能力の欠如が甚だしい。 このような内輪の論理を優先した政権運営はあまりに見苦しく、国益を大きく損なっていることを自覚すべきだ。
自民党はいったん、下野したほうがいい。 ユーチューブ解説『自民党、下野のススメ』をぜひご覧いただきたい。