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石破茂首相が政敵の麻生太郎元首相と会談、トランプ次期大統領との会談に向けて助言求める〜本当の狙いは石破おろし封じか

石破茂首相が政敵の麻生太郎元首相とクリスマスイブの日に会談したことが話題を呼んでいる。年明けに予定される米国のトランプ次期大統領との会談に向けて、トランプ氏と面識のある麻生氏に助言を求めたのだ。

石破首相は米国のトランプ次期大統領の就任前の会談を探っていた。石破首相を毛嫌いしていた安倍晋三首相がかつてトランプ氏の就任前会談に成功して蜜月関係の構築に成功したことにならって、自らも就任前会談を打診した。ところが「今回は就任前にはどの国の首脳とも会わない」と断られた。

さらに衝撃的だったのは、トランプ氏がその後、カナダ首相やフランス大統領と相次いで会談したことだ。トランプ氏の石破軽視の姿勢が鮮明になったのである。石破首相のメンツは丸潰れとなった。

しかも安倍氏の妻昭恵夫人もトランプ氏のフロリダにある私邸に夕食会に招待された。石破首相へのあてつけとしかいいようがない。

トランプ氏が大統領選で勝利した直後の電話会談も5分で終了した。石破首相は事前に外務省から「長話はしないで」「議論は吹っかけないで」と助言されていた。国会答弁では回りくどい「石破構文」が批判されているが、トランプ氏はねちねち答弁型の石破首相とはウマが合いそうにない。

石破首相の政権基盤は弱く、来夏の参院選は石破首相では戦えないとの見方が自民党内で広がっている。日本政界の情勢はトランプ氏の耳にも届いているのは間違いなく、「いつ辞めるかわからない石破首相と会ってもあまり意味がない」と判断している可能性は強い。それも石破軽視の姿勢を後押ししたのだろう。国内基盤が弱い首相が外交で他国の首脳に相手にされないのは当たり前だ。

トランプ氏は安倍昭恵氏と夕食会をともにした後、石破首相との就任前会談に一転して前向きな姿勢を示した。石破首相はこれをうけて1月に訪米してトランプ氏との会談を模索し、「もしトラ」に備えて真っ先にトランプ氏と会談していた麻生氏に助言を求めたのである。

しかし政敵だった安倍氏の妻のおかげでトランプ氏との会談に道筋がつき、しかも政敵である麻生氏の助言を仰いでトランプ氏に会いにいくのだから、石破首相の政治基盤の弱さを露呈したというほかない。

それでも石破首相としては麻生氏の力を借りることで、トランプ氏との会談を成功させることだけではなく、麻生氏との距離を縮めて石破おろしの動きを封じる狙いもあるのだろう。

麻生氏も元首相として、自民党重鎮として、石破首相の求めを無下に振り払うわけにはいかない。とはいえ、今回の会談で石破支持に転じるとも思えない。逆に対外的にはトランプ氏、国内的には国民民主党と強化してきた関係を利用して、内外から石破政権を揺さぶり続けるのではないだろうか。

石破首相とトランプ氏の会談が実現しても、いつ退陣するかわからない石破首相が蜜月関係をつくることは相当に難しい。無理やりトランプ氏が得意な首脳同士の直接ディール(取引)の土俵の乗ろうとすれば、逆に利用されて、巨額の防衛費負担など日本の国益を害する約束を取り付けられる恐れもあろう。

まずは国内基盤を固めること。それなしに首脳外交は危険でしかないことを、石破首相は再認識すべきである。

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