参院選で惨敗した自民党の石破茂総理と、立憲民主党の野田佳彦代表。
ともに党内から「敗北責任」を突き付けられ、政権や党首の座を失う瀬戸際に立たされている。
そんな“負け組”同士が手を握り、前代未聞の「大連立」に踏み切るのではないか――永田町でそんな噂が急速に広がっている。
■地下水脈でつながる二人?
夏の短い臨時国会。
野田代表が衆院予算委員会で企業・団体献金見直しやガソリン税減税などを提案すると、石破総理は「その通りにしたい」と即答した。
自民党内では「事前に打ち合わせた出来レースではないか」「裏でつながっているのでは」と警戒が走った。
立憲民主党内でも波紋は広がる。
参院選での敗北を受け、野田代表の進退を問う声が上がり始めている中、石破政権との急接近は「大連立への布石では」と受け止められたからだ。
■財務省も狙う“大連立”
二人に共通するのは、財政規律重視の姿勢だ。
減税に慎重で「財源なき政策は打たない」という立場は、自民党内の森山裕幹事長や、立憲の安住淳衆院予算委員長ら財務省寄りの実力者と重なる。
昨年の衆院選で与党が過半数を割ったことで、財務省には「与野党合意で消費税増税」という野望が芽生えた。
自民と立憲が組めば、財源論を盾に減税を封じ、むしろ増税路線に舵を切ることも可能になる。
通常国会では立憲が予算案の年度内成立に協力し、自民は立憲の年金改革を受け入れるなど、水面下での“握り合い”も進んでいた。
参院選前に連立を組めば立憲が選挙で大敗するため、あえて選挙後まで待つ――そんな暗黙の了解すらあったという。
だが参院選では、石破自民も野田立憲も惨敗。
両党首は党内で進退問題を抱え、崖っぷちに立たされた。
■ジリ貧の立憲、背水の陣
立憲は野党第一党を保ってはいるが、参院選では国民民主党や参政党の勢いに押され、比例票では両党に抜かれた。
維新や国民が自公連立入りを狙う中、立憲は野党の中心的役割を失い、次の総選挙ではさらに後退する可能性がある。
党内外から突き付けられる「野田降ろし」を避けるためには、政局を一変させる奇策が必要だ。
それが石破総理との“大連立”だというわけだ。
ただし、このシナリオが成立するのは石破総理の在任中だけだ。
ポスト石破に高市早苗氏や小泉進次郎氏が就けば、政策の隔たりが大きく連立は不可能。
林芳正官房長官なら可能性は残るが、林氏も参院選惨敗の連帯責任を問われる立場であり、総裁選で勝てる保証はない。
■成功確率は低い「政界クーデター」
仮に石破・野田会談で大連立が合意されたとしても、成功確率は高くない。
2007年、参院選敗北直後の福田康夫総理が小沢一郎民主党代表に大連立を持ち掛け、小沢氏が一度は受け入れたものの、党内反発で潰れた前例がある。
当時、大連立に反対したのがほかならぬ野田佳彦氏ら反小沢派だった。
今回も、自民党内では石破総理の連立路線に猛反発が起こり、総裁リコールの動きが現実化しかねない。
立憲でも「自民党と組めば党の存在意義がなくなる」との声が噴出し、分裂の危機が高まる。
もし成立しても、選挙で惨敗した“負け組”同士の政権が国民から歓迎される可能性は低い。
内閣支持率は急落し、国民民主党や参政党が勢いづく構図になるだろう。
■残された時間はわずか
石破総理が総裁リコール覚悟で大連立に突き進むのか。
野田代表が党分裂のリスクを承知で政権入りを選ぶのか。
その決断次第で、永田町は未曾有の大政局に突入する。
だが一つ確かなのは、この“大博打”の成否を左右する時間は、もうあまり残されていないということだ。