石破茂首相が自民党の新人議員15人に商品券10万円を配布していた問題が発覚し、自民党内で「石破おろし」が本格的に始動した。
しかし、意外なことに立憲民主党を支持するリベラル層の間で、石破首相を擁護する動きがじわじわと広がっている。
この奇妙な現象の背後には、複雑な政局の構図が潜んでいる。
立憲支持層が石破総理を擁護する3つの理由
1. アンチ安倍感情の延長線上
立憲支持層が最も忌み嫌うのは安倍晋三元首相である。安倍政権下でリベラル勢力は敗北を重ね、そのトラウマはいまだに色濃く残っている。安倍氏亡き後も、旧安倍派の影響力が政界に残ることを警戒し続けている。
一方、石破氏は安倍政権時代に冷遇され、党内野党として安倍政治を批判し続けた人物である。安倍派の裏金事件が発覚し、派閥が壊滅した際、立憲支持層と石破氏はともにこれを歓迎した。
立憲支持層には石破首相に対し「安倍政権と戦ってきた政治家」というシンパシーを感じているのだ。
2. 財政政策の一致
旧安倍派は減税や積極財政を主張していたが、石破首相は財務省と歩調を合わせる緊縮財政派である。これは、立憲民主党の財政政策と一致する点だ。
立憲を率いる野田佳彦代表や安住淳衆院予算委員長は、いずれも増税路線を進めてきた緊縮派だ。彼らは「財政再建」を重視し、財務省と強い関係を持つ。
これに対して国民民主党やれいわ新選組は、減税や積極財政を掲げて昨年の総選挙で躍進したが、立憲支持層の多くは彼らを敵視している。
この対立構造が、立憲支持層が「石破政権を守るべきだ」と考える理由の一つになっている。
3. クリーンなイメージ(だった)
石破首相は、かつて「クリーンな政治家」として評価されていた。安倍派の裏金問題が発覚した際、石破氏が党内野党の立場からこれを厳しく批判し、立憲支持層の間で評価を高めた。
しかし、自民党の新人議員15人に商品券10万円相当を配ったスキャンダルが発覚して、そのイメージは崩壊しつつある。
それでも立憲支持層の間で擁護論が出るのは、「石破政権が倒れれば、旧安倍派や減税派が台頭し、社会保障削減につながる」という危機感があるからだ。結果として「まだ石破の方がマシだ」という論理が成立する。
自民党内の勢力図と今後の政局シナリオ
現在の自民党内には、大きく3つの勢力が存在する。
1. 主流派(財務省シンパ)
- 石破茂(総理)
- 森山裕(幹事長)
- 林芳正(官房長官)
森山幹事長は立憲民主党の安住氏と連携し、「参院選後の増税大連立」を模索しているとされる。林芳正官房長官はもともと旧岸田派のナンバー2であり、ポスト石破を狙っている。いずれも自民党税調のインナーであり、財務省と密接だ。
2. 非主流派(麻生・茂木・旧安倍派)
- 麻生太郎(元副総理)
- 茂木敏充(前幹事長)
- 旧安倍派(高市早苗、小林鷹之など)
麻生氏はもともと石破氏を嫌っており、石破政権ではキングメーカーから陥落した。同じく無役に転じた茂木氏と組んで「石破おろし」を画策している。国民民主党とはガソリン税減税を協議した間柄だ。国民民主党が所得税減税をめぐって石破政権と決別したことで、麻生・茂木ラインに接近する可能性がある。
3. 中間派(旧岸田派)
- 岸田文雄(前総理)
石破政権では旧岸田派が要職を占めている(林官房長官、小野寺政調会長、木原選対委員長ら)。しかし、岸田氏自身は首相再登板を狙っており、麻生氏との関係修復も進めている。
今後のシナリオ
主流派の戦略
- 石破政権を維持し、参院選に突入(本命は林芳正氏だが、国民的不人気で、参院選の顔にならず)
- 参院選敗北で石破退陣
- 総裁選で林政権へ移行(参院選後の総裁選なら林氏に勝利の可能性。森山幹事長ら主流派体制を維持)
- 立憲と増税大連立へ(野田佳彦代表を首相に担ぐ可能性も)
非主流派の戦略
- 参院選前に石破おろしを決行
- ポスト石破に高市、小林、茂木の誰かを擁立
- 「玉木首相」で自公国連立・減税政策を掲げる可能性も
- 内閣支持率が上がれば衆参ダブル選挙の可能性も
カギを握るのは…
- 岸田文雄の動向
- 立憲民主党内の減税派の動向(党を割るかどうか?)
- 日本維新の会の出方
結論:政界再編の引き金となるか?
石破首相の商品券スキャンダルは、単なる政治資金問題ではなく、与野党を巻き込んだ大政局の幕開けを意味している。立憲支持層の「石破擁護論」は、参院選後の増税大連立を予兆する動きともいえる。
果たして、石破政権は持ちこたえるのか?それとも、減税・積極財政派が政権を奪還するのか?
政局の行方に注目が集まる。