総選挙は自民圧勝で幕を閉じた。だが選挙は続く。
高市政権にとって次の審判の舞台は地方だ。その最初の試金石が石川県知事選である。
自民圧勝の余勢を駆り、旋風が本物かどうかを測る選挙。ここで勝てば「高市神話」は完成に近づく。逆に敗れれば、総選挙は新党「中道」の自滅に助けられただけだったという見方が広がるだろう。
与党推薦の現職が苦戦し、新人と横一線の大接戦。そこに野党再編の思惑が絡み、石川は一気に全国政局の焦点となった。
連立与党の候補・馳
知事選は2月19日告示、3月8日投開票。現職の馳氏と、前金沢市長の山野氏による事実上の一騎打ちである。
4年前は保守3分裂で馳氏が僅差で山野氏を破った。その後、能登半島地震への対応をめぐる批判、後ろ盾だった森喜朗元首相の影響力低下が重なり、現職としては異例の逆風選挙となった。
地元メディアの情勢調査によると、昨年11月時点では山野氏がリードしていた。2月の総選挙直後の調査では横一線に並んだ。
馳氏の巻き返しを支えるのは、高市人気だ。若年層・現役世代の高市支持が馳氏を押し上げている。
自民党に加え、日本維新の会も推薦。吉村洋文代表が応援に入り、自民党からは鈴木貴子広報本部長も現地入りした。馳氏はまさに連立与党の象徴的候補となった。
高市首相と馳氏は旧安倍派時代の関係も深い。被災地訪問での連携を強調し、SNSでも高市氏との結びつきを前面に出す。高市人気をにひたすら乗る選挙戦だ。
国民民主が仕掛けた対決
一方、新党「中道」は総選挙惨敗の余波で動けず、事実上の不戦敗。参院議員と地方議員は立憲と公明に残留し、地方選挙では存在感を発揮しにくい。
立憲民主党は自主投票となった。背景にあるのは、馳氏を推薦した連合の存在だ。地方では現職と労働行政を通じて関係が近くなり、野党が対決できない構図が繰り返されてきた。
そこに踏み込んだのが国民民主党である。新人支持を決定し、高市政権と真正面から対峙する構図をつくった。
中道の惨敗で野党第一党の位置に躍り出た。総選挙では中道と競合し、連合とも摩擦を辞さない姿勢を見せた。石川は「野党リーダー争い」の戦場でもある。
政権側では、高市氏が麻生太郎副総裁に衆院議長を打診し「麻生切り」に動いたことが発覚。麻生氏に近い国民民主との距離は広がった。連立拡大論が後退するなか、国民民主は対決軸を鮮明にするしかない。石川での勝利は一気に存在感を高める一撃となる。
勝敗が左右する政権の空気
馳氏が勝てば、「高市首相に逆らえば地方選挙にも勝てない」という空気が広がる。逆に敗れれば、高市圧勝の評価は揺らぐ。強い対抗馬がいれば自民に対抗できるという見方が一気に現実味を帯びる。
高市氏が肩入れした以上、政権にとっても負けられない選挙だ。国会では数で押し切れても、神話が崩れれば野党は遠慮なくスキャンダル追及を強める。支持率に直結するリスクを抱える。
国民民主にとっても同じだ。ここで勝てば「高市旋風を止めた党」として野党再編の主導権を握る。負ければ政権からさらに距離を置かれ、「対決より解決」路線の継続は難しくなる。
地方選が最大の審判
衆院で3分の2超を握る政権にとって、当面国政選挙はない。総裁選も圧勝直後では揺らぎにくい。高市体制は少なくとも数年単位で安定する可能性が高い。
だからこそ意味を持つのが地方選だ。有権者が政権に意思表示できる数少ない場となる。
次の焦点は新潟県知事選である。現職の花角氏が3選を視野に入り、有力対抗馬として浮上するのが前知事の米山氏。私生活スキャンダルで辞任後、作家の室井佑月さんと結婚し、国政に進出したが、今回の総選挙で高市旋風の前に落選した。
新潟は立憲の牙城で、前回総選挙は全勝だった。しかし今回は全敗。知事選でも「高市旋風が続くのか」が最大の争点となる。
石川、そして新潟。地方選の連続が、国会では見えにくい政権の体温を示す。高市旋風は本物か、それとも一過性か。答えは国政ではなく、地方の一票が示していく。