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維新、「副首都」構想で自公連立入りへ前のめり!党勢低迷で「大阪ファースト」色を強める

日本維新の会が参院選後、一転して自公連立入りへ前のめりだ。創始者の橋下徹氏が大阪を「副首都」にする構想を実現するため連立入りを提唱。吉村洋文代表は、参院選で惨敗した石破政権との連立は否定する一方、「副首都」法案をまとめて自公与党に迫る考えを示し、ポスト石破政権との連携に含みをみせている。

石破茂首相と盟友関係にある前原誠司共同代表も石破政権との連立は否定する一方、参院選後の両院議員総会ではポスト石破政権との連立について反対意見はなかったと明かした。

維新は参院選では7議席(比例4、選挙区3)にとどまった。目標の6議席はクリアしたものの、比例は前回から半減し、選挙区は大阪2、京都1という関西圏のみ。首都圏をはじめ、関西以外では当選圏にほど遠く、全国政党化を目指して野党第一党を奪取する勢いはすっかり失せた。大阪の地域政党の性格を色濃くしている。

維新の肝入りだった「大阪万博」が開幕し、これに続く「大阪の活性化策」の目玉として「副首都」構想が浮上したといっていい。なりふり構わぬ「大阪ファースト」だ。

維新は橋下氏と松井一郎氏が旗揚げした後、自民党の安倍晋三元首相や菅義偉元首相と緊密な関係を築き、自公の補完勢力とも言われた。自民党からすれば、野党分断の切り札的な存在だったといえる。しかし、一時は立憲民主党を上回る勢いをみせ、自民党内では警戒心が強まった。安倍氏が他界し、菅氏も健康不安で影響力が低下するなか、自公与党との距離も開き、昨年の総選挙で惨敗して吉村体制に移行した後は、参院選でも自公を過半数割れに追い込むことを目標に掲げ、一部選挙区では立憲と候補者調整にも応じていた。

他方、今年度当初予算案には教育無償化の実現と引き換えに賛成し、少数与党国会で自公に接近する場面もあった。

自公与党が衆参両院で過半数を割る今、立憲か、維新か、国民かを引き入れる「連立拡大」が政局の最大のテーマになった。ここで立憲と国民を出し抜いて「副首都」構想の実現を大義名分に一気に連立入りを果たし、低迷する党勢を立て直す狙いがあるのだろう。

参院選では第三極の国民民主党と参政党が躍進し、自民党と立憲民主党の二大政党の凋落が顕著になった。そのなかで維新も低迷し、公明・共産の老舗政党とともに存在感は薄れるばかりだ。国会は、自民、立憲、国民、参政の4勢力がしのぎを削る構図になりつつある。維新は今後、ますます沈んでいく可能性は高い。

自公与党が衆参両院で過半数を割る今は、連立入りの最後のチャンスかもしれない。ここで立憲との大連立が実現したり、国民を加える自公国連立政権が誕生すれば、維新の出番は当面なくなるだろう。

自公与党の連立相手は、ポスト石破に誰がなるかで決まってくる。財政規律を重視する現主流はの林芳正官房長官なら立憲との大連立、反主流派の麻生太郎元首相が高市早苗氏や岸田文雄氏、茂木敏充氏らを担ぐかたちなら国民民主党との自公国連立(この場合、玉木雄一郎代表を首相に担ぐ構想もある)が有力だ。

菅氏を後ろ盾とする小泉進次郎氏なら、維新との連立も有力視されるが、菅氏は健康不安で影響力低下が否めず、維新としては自公与党とのパイプが細っているのが弱点である。馬場体制下で国対委員長を務めた遠藤敬氏が自民党の森山裕幹事長と会談を重ねているが、吉村体制では非主流派に転じているうえ、森山氏は参院選惨敗を受けて8月中に辞任する意向を示唆しており、このラインがどこまで機能するかもわからない。

関西圏限定の維新は選挙協力の壁が低く、最も手取り早い連立相手といえる。本格的な連立で政権安定を重視するのなら立憲や国民にかなわないものの、その連立交渉が難航した場合、とりあえずの数合わせの相手として維新が選ばれる可能性は十分にある。吉村代表が府知事のまま総務大臣として入閣する案も浮上している。

大阪万博に続いて今度は「副首都」構想で大阪経済を後押しすることと引き換えに、維新を連立入りさせて衆参で過半数を回復させた場合、全国の有権者の支持を得られるのか。内閣支持率という視点では厳しい面が否めないが、過半数回復へ背に腹は変えられないという展開になるかもしれない。維新としても大阪の地域政党の色合いをますます強めることになる。