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維新に広がる「与党病」――連立2カ月で見えた甘さと、財務省の影

維新に、早くも「与党病」が広がっている。
定数削減をめぐっては「連立離脱だ」「会期延長だ」と威勢のいい言葉が飛び交った。しかし結果は、定数削減の先送り。自民党にあっけなく手玉に取られた。

背景にあるのは、維新の多くの議員が、はじめての「与党暮らし」に浮かれている現実だ。予算、外交、安全保障―。権力の中枢に触れる高揚感を、いま全身で味わっている。その空気を、自民党と霞が関は見逃さない。

しかも、維新を取り込み、連立協議を通じて自民党内の力学に介入しようとする役所がある。財務省だ。
連立合意からわずか2カ月。維新はすでにトゲを抜かれつつある。

与党と野党、その落差

「仕事が10倍になった」「与党と野党はこんなに違うのか」。
維新の議員たちから、そんな声が聞こえてくる。

衆院34人、参院19人。維新の国会議員の大半は与党経験がない。当選3回以上は14人にすぎず、6割は議員歴4年以下。安倍政権の国会すら知らない世代だ。

吉村代表は50歳。衆院議員歴はわずか10カ月。国政をほとんど知らないまま、連立与党の代表を務めている。藤田共同代表も当選3回だが、議員歴は6年半にすぎない。維新の幹部の多くは、他党であればまだ「中堅以下」のクラスだ。

そんな未熟な政治家集団が、いきなり連立与党に加わり、官僚から丁重に扱われ、自民党のベテランと対等に会議に臨んでいる。
与党の餌を与え、太らせ、トゲを抜く――。自民党と霞が関の常套手段に、維新も引き込まれている。

公明党との決定的な違い

一方、26年ぶりに連立を離脱した公明党は、野党暮らしの厳しさを味わっている。
「電話がまったくかかってこない」。そんな嘆きも聞こえる。

もっとも、公明党は過去に非自民連立政権での与党経験があり、創価学会という巨大な後ろ盾を持っていた。連立入り当初から、浮かれれば世論の反発を招くという緊張感があった。与党病は、長い年月をかけてじわじわと進行した。

自民党にとって、公明党や立憲、国民民主には「バック」となる組織がある。創価学会や連合を通じた裏ルートが存在する。
しかし維新には、それがない。吉村代表は国会議員ですらなく、党全体を掌握していない。こじれた時のチャンネルが見当たらないまま、連立政権は走り出した。

維新と税制、そして財務省

与党と野党の差がもっとも露骨に出るのが、国会閉会後だ。
年末の予算編成や税制改正の局面で、野党は完全に蚊帳の外に置かれる。

維新はこの年末、はじめて与党として予算と税制に関与する。そのため、連立入り直後に税制調査会を新設した。初代会長は当選1回の梅村聡氏。自民党税調という百戦錬磨の集団と、真正面から向き合うことになった。

大型経済対策をめぐり、「維新が電気・ガス代補助の増額を勝ち取った」と報じられたが、これは財務省が連立維持のために描いたシナリオに、維新が乗っただけだ。

財務省は、緊縮財政に協力すれば、花を持たせる。用意されたレールに乗れば、間違いはない。
こうして新米議員たちは、財務省に飼い慣らされていく。

財務省が狙うもの

公明党が去り、維新が加わったことで、安全保障政策にも変化が生じ始めた。
12月15日、自民と維新の実務者協議が初開催され、防衛装備品輸出の規制緩和で合意した。維新では前原誠司氏のような数少ないベテランに、重要ポストが集中する。

しかし、圧倒的な人材と組織力を持つ自民党に、維新が対等に向き合う力はない。
そこに目をつけたのが財務省だ。維新を取り込み、連立協議を使って、自民党内の積極財政派を抑え込む。国民民主党が連立入りするより、維新を抱え込むほうが都合がいい。

まだ若い維新は、このまま財務省の牙城と化していくのか。
連立2カ月で見えたのは、維新の甘さと、それを逃さない霞が関のしたたかさだった。