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〈右の維新〉vs〈左のれいわ〉が日本政界の新しい対立軸だ! 自民vs立憲の二大政党時代の終焉を告げた衆院選 

自公逃げ切り、維新躍進、野党惨敗。10月31日投開票の衆院選を端的に言うとそうなる。

自民党に勢いはなかった。それでも単独過半数(233議席)を大幅に上回る261議席に達したのは、ひとえに野党第一党である立憲民主党の「自滅」による。

前回の衆院選は、希望の党を旗揚げした小池百合子氏が枝野幸男氏を「排除」して失速し、野党は自滅した。今回は立憲民主党の枝野氏が共産党やれいわ新選組に一方的に譲歩を迫る「身勝手な野党共闘」で自滅した。

この国の野党第一党は「政権選択の選挙」で二回続けて自滅し、自民党政権を延命させたことになる。

枝野氏は最大の支持組織である連合と共産党の間で揺れ続けた。最後まで「野党共闘」という言葉を使わず、「単独政権を目指す」という非現実的な目標を掲げ続けた。

野党候補は7割以上の選挙区で一本化されたが、その多くは共産党やれいわが一方的に譲歩したもので、野党第一党の立憲に都合のよい内容だった。表面的に「一本化」を進めるだけで、そこに共通の理念や目標は込められていなかったのである。

政権交代の機運はまったく高まらず、「枝野氏は野党共闘で政権交代を実現させる気はさらさらない。立憲の議席を増やして自らが代表の座にとどまりたいだけだ」という不信感が野党共闘内部でくすぶり続けた。

枝野氏の「口先の政権交代」に国民もそっぽを向いた。腐り切った自公政権に批判的な人々は立憲の議席増を望んで投票所に足を運ぶわけではなかった。彼らは政権交代を待望していた。ところが、枝野氏は「政権交代の可否」を勝敗ラインに掲げず、「立憲の議席増」を優先させる姿勢を示し、野党支持層を落胆させた。

結局、政権交代の機運は最後まで盛り上がらず、戦後三番目に低い55%の低投票率につながり、組織票を固めた自公与党に逃げ切りを許した。安倍政権が6連勝した国政選挙と同じ過ちを繰り返したのである。

枝野氏は無為無策だった。枝野氏ひとりが登場する動画を拡散させ、「枝野一本足打法」で戦ったが、朝日新聞が選挙中に実施した「岸田氏と枝野氏のどちらが首相にふさわしいか」を問う世論調査では岸田氏の54%に対して枝野氏は14%にとどまり、水を開けられた。枝野氏の不人気は明白だった。

若手注目株の小川淳也氏を要職に起用するとか、れいわの山本太郎氏を野党共闘の目玉候補に擁立するとか、「次の内閣」を作って女性を大量登用するとか、野党版コロナ専門家会議を設置するとか、世論喚起策はいくらでもあった。しかし、枝野氏は野党の人材を有効活用せず「主役」を独り占めした。最側近の福山哲郎幹事長だけを重用し、党運営を思いのままにしてきたのである。

枝野氏の立ち振る舞いは「野党共闘の首相候補」にはほど遠かった。引責辞任は免れない。

枝野氏は民主党政権の中枢を占めた政治家である。今回の立憲民主党の惨敗は、民主党政権を担った中核メンバーに表舞台からの退場を宣告したといえるのではないか。

枝野氏が引責辞任すれば、後任を選ぶ代表選は、原口一博氏、馬淵澄夫氏、泉健太氏、小川淳也氏らを軸に進むとみられる。枝野ー福山体制を一新し、野党共闘をいちから再構築して来年夏の参院選で巻き返しを図るほかない。

立憲民主党の惨敗を横目に大躍進したのは、維新である。公明党を抜いて第三党となり、存在感は大きく増しそうだ。

安倍晋三政権は、竹中平蔵氏が小泉政権以降に主導してきた規制緩和を軸とする「新自由主義」と麻生太郎氏に代表される「自民党の旧来型バラマキ」が混在した政権だった。

菅義偉政権は新自由主義に軸足を置き、その路線を受け継いで9月の自民党総裁選に出馬したのが河野太郎氏だった。これに対し、麻生氏を後ろ盾に「新自由主義からの転換」を掲げて出馬したのが岸田文雄氏だった。

岸田政権が誕生したことで、新自由主義の牙城は維新へ移った。維新の躍進は、「東京に対する大阪の対抗心」という地域政党固有の強みに加え、「新自由主義」に対する期待感を引き寄せたといえる。

岸田自民党は新自由主義的な「成長」と宏池会の伝統的な「分配」のどちらに軸足をおくのかで迷走し、立ち位置がはっきりしない。そのなかで「新自由主義」を鮮明にした維新はこれからますます台頭していく可能性がある。

政界には維新が自公与党の補完勢力という見方が強いが、私はやや見解を異にしている。これまではそうだったかもしれないが、今回の大躍進を踏まえ、維新は立憲民主党に代わって「野党第一党」の座を取りに行くだろう。

そのためには政策的には自公政権に是々非々で対応しつつ、連立政権には決して加わらず、選挙では「自民党とも立憲民主党とも戦う第三極」のポジションを取り続け、まずは立憲民主党を衰退させて解党に追い込み、野党第一党に躍り出ることを基本戦略とするのではないか。かつて野党第一党の新進党が衆院選敗北で求心力を失って解党し、第三党だった民主党にその座を譲ったのと同じパターンだ。

維新の戦略が的中すれば、数年後には日本の政界は「自民vs維新」という「保守二大政党」時代に突入する可能性は捨てきれない。

与党第一党の自民党同様、幅広い支持を獲得しようとするあまり立ち位置がぼやけている野党第一党の立憲民主党は、今後ますます埋没していくのではないか。連合と共産党の間で迷走を繰り返していることは、この党の「あいまいさ」を象徴しているといえるだろう。

このままでは立憲民主党が維新の台頭に太刀打ちできるとはとても思えない。

立憲民主党に代わってリベラル勢力の中核に発展する可能性を秘めているのが、れいわ新選組である。「強きを支え弱きをくじく」維新の新自由主義に対抗し、山本太郎代表が「弱者救済」「格差是正」の政治理念を鮮明にしている点が圧倒的に強い。

山本氏は2019年参院選での結党以来、枝野氏に警戒され、嫉妬され、さんざんいじめられてきた。今回の衆院選での東京8区出馬問題でも枝野氏に梯子を外され、比例単独出馬に追い込まれる危機に立った。今回の衆院選で議席を得られなければ「政界引退」を考えていると周辺に漏らしていた。

それをはねのけ、枝野批判を封印しつつ立憲や共産の候補の応援にも駆けつけ、最終的には自らを含む3議席をれいわにもたらした行動力・実行力は現在の野党政治家で群を抜いている。山本氏を「排除」しつづけた枝野氏の狭量とは比べものにならない。枝野氏に山本氏を抱き込む度量があれば、衆院選の結果も違ったことだろう。

れいわは衆参合わせて5議席となった。「得票率2%」と「衆参合わせて5議席」と政党要件のどちらも満たしたこととなり、今後はNHKも討論番組かられいわを締め出すことはできない。

注目すべきは、山本氏は今回の衆院選で「自民党より危ないのは維新」と公言し、維新を「最大の敵」に掲げたことだ。これは政界の先行きを見通す慧眼だと私は思う。「維新の新自由主義」vs「れいわの弱者救済」は、対立軸があいまいだった従来の「自民党vs立憲民主党」の構図よりもはるかにインパクトがあり、今後の政界の対立軸の中心となるだろう。

維新を率いる吉村洋文・大阪府知事とれいわを率いる山本太郎氏が「左右のリーダー」として存在感を高めていくのではないか。維新の台頭に対抗できる力を秘めているのは、立憲ではなく、れいわであろう。いずれ立憲が分裂し、れいわを軸とした野党再編に発展する展開もありうる。

山本氏がひとりで立ち上げた政党がわずか2年で本格的な国政政党としてスタートを切る。山本氏のカリスマ性と逆境を乗り越えるパワー、そして明確な社会像や政策によって、来夏の参院選でれいわは今回の衆院選の維新のように躍進するのではないか。

主張があいまいで埋没していく二大政党の自民・立憲、老舗の組織政党である公明・共産、左右の新興勢力である維新・れいわ。この6党による選挙協力や政党間協議を通じて政権の枠組みや主要政策が決まっていく「新たな多党制時代」の幕開けが今回の衆院選だったーーというのが私の総括である。

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