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「維新切り」は最初から決まっていたのか〜暴露された高市発言が示す政局の行方

自民党の「維新切り」が、いよいよ隠しきれなくなってきた。その決定的な証拠とも言える発言が、関西ローカル番組で暴露されたからだ。

衝撃の場面は、12月20日放送のABCテレビ「正義のミカタ」。日本保守党の島田政調会長が、維新の吉村代表を目の前にして、驚くべき内幕を明かした。

島田氏によれば、高市総理は、維新と「議員定数削減」を柱とする連立合意を結んだその当日、国会で総理に指名される前日に電話をかけてきたという。
そこで島田氏が、「定数削減は年内にできるはずもないのに、本気でやるのか」と問うと、高市氏はあっさりこう答えたとされる。

「いやいや、『目指す』というだけです。あの法案がかかる委員会の委員長は野党ですから、今年中に通るはずがありません」
さらに「自民党で、今年中に通ると思っている議員は一人もいませんよ」とまで言い切ったというのだ。


もしこれが事実なら、衝撃は計り知れない。
なぜなら、高市氏はその日、まさに定数削減を看板に掲げて維新と連立合意を結んでいたからである。

当然、吉村代表は猛反発した。
「本当にそんなことを言ったのか。公共の電波で言っていい話なのか。高市さんの名誉にも関わる」
そう強く詰め寄ったのも無理はない。

吉村氏は12月16日、高市氏との会談後、定数削減法案の先送りを受け入れ、「高市総理は自民党をまとめてくれた」と感謝の言葉まで口にしていた。
それが裏では「通るはずがない」と言われていたとすれば、完全に面目丸潰れである。

しかし島田氏は一歩も引かなかった。
「撤回はしない」と言い切り、さらにこう続けた。
「来年、新たな国政選挙の結果が出る。それを踏まえて、秋くらいに議論が出るかもしれない、と高市さんは言っていました」

この発言は、定数削減をめぐる自民党の本音を鮮明に映し出している。これまでの経緯を見れば、自民党に臨時国会で法案を成立させる意思がなかったことは明らかだ。島田氏の暴露は、その現実と完全に重なる。

高市氏は保守層から強い支持を受けており、同じく保守層に支持基盤を持つ日本保守党を無視できない立場にある。維新が当初掲げていた「比例50削減」が実現すれば、日本保守党は大打撃を受ける。その反発を抑えるため、法案は簡単には通らないと、強い言葉で伝えた可能性は否定できない。


だが、それでもなお問題は残る。
維新と連立合意を結んだその日に、「成立させる気はない」と野党側に伝えていたとすれば、維新が最初から軽く扱われていたことになるからだ。

高市氏にとって、維新との連立は首班指名を勝ち抜くための手段だった。総理になった時点で、その目的は達成されている。しかも、維新と組んでも参院では過半数に届かない。
一方、国民民主党と組めば、維新抜きでも過半数に届く。だからこそ、高市政権は玉木代表が求める「年収の壁178万円」を受け入れた。
本命は維新ではなく、国民民主党――。
島田氏の暴露は、こうした見方を一気に現実味のあるものにした。

さらに注目すべきは、解散総選挙をめぐる発言である。
「来年、新たな国政選挙の結果が出る」
この言葉は、来年秋までに衆院選が行われることを前提にしている。

参院選は該当しない。
つまり、高市氏は、定数削減や選挙制度改革を先送りしたまま、今の制度で解散総選挙に打って出る構想を描いていることになる。

年明け早々の解散か。
それとも、通常国会会期末の6月か。
いずれにせよ、定数削減はその後の話というわけだ。


このシナリオに沿うかのような発言も、自民党内から出ている。
古屋選対委員長は、定数削減法案が成立しても新区割りは2028年秋になると述べ、次の衆院選は現行制度で行われると明言した。
さらに「高市総理の思い入れの強い政策を通常国会でやる。ひとつひとつ成果を出した上で、最も良いタイミングで解散に打って出る」と語り、通常国会会期末の6月解散をにおわせている。

こうした流れの中で、維新の立場は急速に弱まっている。
定数削減が成立しないまま解散となれば、普通なら連立離脱だ。
しかし吉村代表は、成立しなくても連立離脱はしないと早々に明言してしまった。

これでは自民党に足元を見られる。事実上、維新の「離脱カード」は無力化した。
維新が最重視課題として通常国会での成立で連立合意した「副首都構想」にも、自民党内から反対論が出始めている。

副首都構想が成立して円満離婚となるのか。
それとも、何も得られないまま決裂するのか。

いずれにしても、自民と維新は連立を解消し、解散総選挙へ。
選挙後、新たな連立相手として国民民主党を迎え入れ、定数削減や制度改革はそこから仕切り直す。

政局は、着実に「維新切り」へ向かっている。